デジタル大辞泉 「免」の意味・読み・例文・類語
めん【免】[漢字項目]
1 見逃してやる。まぬかれさせる。まぬかれる。「免疫・免罪・免除・免税・免責/減免・赦免・放免・
2 許可する。「免許・免状/天下御免」
3 職を解く。仕事をやめさせる。「免職/任免・罷免」
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
江戸時代の貢租率ないしは貢租額の意。〈免相(合)(めんあい)〉ともいう。納租額を記して領主から村方に交付する文書を〈免定(状)(めんじよう)〉と呼び,また各百姓への割付けを〈免割(めんわり)〉と称した。《田法雑話》には〈田畠の高壱石に付て取米何程と云あたりを免と云〉とあり,《地方凡例録(じかたはんれいろく)》も〈仮令ば下田高弐百石,免三つにて此取米六拾石〉としている。この免を基礎に,ならし免,土免(つちめん),定免(じようめん),段免などの用語も生まれた。免は農民にとって死活の問題であったから,減免要求は江戸時代を通じて一揆や訴願の主要テーマであった。近世前期の例を一,二掲げれば,1617年(元和3)出羽国檜山郡藤琴村百姓は,従来の免六ッ成が六ッ五分に上がったことを訴え減免に成功,また信濃国諏訪郡瀬沢村百姓も,23年〈免合高き〉ことを訴えて八分の減額を得ている。
このように〈免〉は近世においては領主取分(年貢)を指して用いられたが,これは免じるという本来的意味からすれば逆転した用法である。現在までの報告によれば,こうした逆転的用法はおおむね慶長・元和期(1596-1624)に始まるとされており,それ以前にあっては,免は本来の意味で用いられていた。中世荘園文書に見える給免田(きゆうめんでん),雑事免(ぞうじめん),浮免(うきめん)などはいうまでもなく,たとえば〈惣国免相少もおろし申まじ〉(加藤秀好・山上長秀連署折紙,1569(永禄12))とか,〈代官にみせずかりとる田は,めんの儀つかはし申ましき事〉(石田三成村掟条々,1596(慶長1))などにも,その用法を見ることができる。地方においても,和泉国日根郡佐野浦人は1603年分の〈公儀之物成〉を村高マイナス免の数式で算出しており,16年の同郡熊取谷村〈算用状〉も同様の方法をとっている。ちなみに,03年刊行の《日葡辞書》には,〈Menuo cô(免を請ふ).農民が主君に対して,すでにほかの人によって評価決定した土地の年貢の幾分かを免除してくれるようにと頼む〉〈Menuo yaru(免をやる).たとえば,十納めなければならなかったとすれば,その二を免じて八を納めさせるというように,免除してやる〉とある。なぜ慶長・元和期に免の意が逆転したのかということについてはいまだ不明確であって,研究上では,むしろ近世初頭における免の本来的用法に着目して,太閤検地の石高を標準収穫高とする通説批判が行われている段階にある。つまり〈めんの儀つかはし申ましき事〉などの用法は,石高=標準年貢高を暗示しているというのである。なおこの説によれば,太閤検地が予想した標準収穫高は二公一民制から考えて,石高×3/2ということになる。〈其村畠方(中略)百弐拾壱石七斗,然者物成六十石ニ相定候〉(中嶋政次折紙,1585(天正13))など,この説にふつごうな事例もあるが,17世紀前半を通じて石高=年貢高とする地方史料もあり,上の理解はかなり事実に近いと思われる。しかし,かりにこうした前提に立つとしても,先に見た免の意味逆転については,なおいくつかの説明が要請される。上の説に即していえば,おそらく現実の収穫高<石高(年貢高)×3/2の状態が続き,したがって,石高>現実の年貢高,が恒常的であったこと,それにともなって石高≒収穫高の観念が醸成されたこと,などが,関係していると考えられるのであるが,ともあれこの点の説得的把握は,なお今後に残された課題といわねばならない。
執筆者:水本 邦彦
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中世においては、干害・風害などによって年貢(ねんぐ)を免除または減免することを意味したが、江戸時代においては、検地による生産高の把握が行われたことから、その意味も年貢を賦課するときの租率の意に変わった。免は「幾ツ何分何厘何毛」で表すが、「免五ツ三分」とは年貢率5割3分のことである。石高(こくだか)100石に対して免が「五ツ三分」であれば、石高に5割3分の免を乗じて年貢高は53石となる。関東地方などにおいては、一反につき「何斗何升何合取り」という反取(たんどり)が実施されていたため、この免によって年貢が賦課されていた所は少ない。また、免という文字がつく用語例に、一定額の年貢率を賦課する定免(じょうめん)や、凶作などで例年のように年貢を賦課することができない破免(はめん)などがある。
[川鍋定男]
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免合(めんあい)・免相とも。免は免除の免で,元来は収穫物のある程度を租税として徴収し,その残りを農民に許し与えるという意味をもっていたが,江戸時代には田畑からの収穫のうちの領主の取分,さらには全収穫に対する領主取分の割合すなわち年貢率を示す語となった。これは取(とり)とほぼ同義である。免いくつ,あるいは免いくつ何分何厘などのように用い,たとえば高100石の場合,免四つならば年貢高が40石,免四つ2分5厘ならば年貢高が42石5斗となる。免率は所領ごとに異なったが,一般に近世初期に比較的高く,幕領では六公四民すなわち免六つ,六ツ取がふつうで,のち四公六民免四つ,四ツ取へと下がる傾向にあった。
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…まず代官所において,検地により確定された石高(こくだか)(または面積)を基準とし,その年の作柄を検見(けみ)した結果にもとづいて年貢納入高を決定する。これを小物成,浮役などと一緒に年貢割付状(可納割付(かのうわつぷ),免状ともいう)に記し,村請(むらうけ)の原則に従って村の名主,惣百姓中あてに下付すると,村では農家の所持石高に比例した高割りによって各戸の賦課高を決定する。この内,村の年貢高を決める方法は,時代によって変化している。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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