(読み)イ

デジタル大辞泉 「囲」の意味・読み・例文・類語

い【囲〔圍〕】[漢字項目]

[音](ヰ)(呉)(漢) [訓]かこむ かこう
学習漢字]5年
周りを取りまく。「囲碁囲繞いじょう・いにょう包囲雰囲気
まわり。「外囲胸囲四囲周囲範囲
[名のり]もり

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「囲」の意味・読み・例文・類語

かこい かこひ【囲】

〘名〙 (動詞「かこう(囲)」の連用形名詞化)
① 中にとりこめて周囲をふさぐこと。回りをとり囲むこと。また、そのもの。
※玄玉(1191‐92頃)天地上「しめはへてしづのあらまく小山田の春のかこひは霞成りけり〈俊恵〉」
② 屋敷などを囲う塀(へい)、垣根などの造作。
※堀河百首(1105‐06頃)雑「かこひなき柴の庵はかりそめのいなばぞ秋のまがきなりける〈源国信〉」
③ 寒さを防ぐなどのために植物に覆いをすること。また、そのもの。
※甲陽軍鑑(17C初)品五「喩ば牡丹芍薬を庭にうへて見るに、冬のかこひを能くして春養いをすれば」
④ 茶室の一種。元来は広い部屋の一部分を囲って茶席としたものだが、のちには、独立した家屋の茶室をも意味するようになった。茶道の開祖珠光(しゅこう)が、足利義政の時代に、京都東山慈照寺の四畳半座敷を方丈になぞらえ、屏障(へいしょう)でかこいをしたところから起こったともいう。
※咄本・醒睡笑(1628)跋「又かこひにて茶をたてて給うたるしほらしさ」
⑤ 野菜・果物などをその出回りの時期の過ぎたあとまで貯えておくこと。また、そのところ。
※精進献立集二篇(1824)二三番「水物〈略〉かこひのびわ、あらひて」
品物を使ったり売ったりしないでとどめておくこと。買い置きをすること。
※俳諧・大坂檀林桜千句(1678)第五「あがりまたるる物は買置〈如昔〉 囲ひよりつつけてはなしはなしては〈本秋〉」
賭博の一種「きんご」で一四になって札を伏せておくこと。転じて一四の数。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
⑧ (初め揚げ代が銀一四匁だったので、⑦から転じた称という) 江戸時代、京都島原、大坂新町の遊郭で、太夫、天神に次ぐ第三級の遊女。のちに銀一五匁になって、「きんご」の最高点が一五なので、「きんご」ともいうようになり、銀一六匁になって、九九(くく)で四四(しし)が一六になるから鹿(しし)の字をあて、「鹿恋」「鹿子位」などと書くようになった。鹿職(かしょく)。鹿子位(ろくじい)鹿州。もみじ。
※評判記・難波物語(1655)「此ほどのはらゐせに、わきへちらして、かこひをはなしたるものは天神をはなし」
※浮世草子・好色訓蒙図彙(1686)上「鹿恋(カコヒ)は十六匁、四々の十六といふ九々より、鹿恋といひそめしとかや」
※雑俳・柳多留‐七(1772)「囲(かこイ)とはいへど大きなばれおんな」
⑩ 歌舞伎で舞台を広く使うため、大臣柱の外側の部分(上手は揚げ幕の部分、下手は黒簾(くろみす)の前)を囲う張り物。
将棋で、法則に従って金将、銀将で王将を固めること。また、その形。矢倉囲い美濃囲いなど。
[補注]⑧の由来については「むかしかこひとつけしいはれは、太夫天神にくらべ見るに、万貧なる事のみ、〈略〉万わびたるさまにて、お茶たてらるるというゑんによりて、かこひといふとかや」〔好色由来揃〕、また「鹿恋」の字については「閑(しづか)な処より深山の鹿のことにかかり、小男鹿の恋るといふこころより鹿恋とかきやす」〔街能噂〕などの説もある。

かこ・う かこふ【囲】

〘他ワ五(ハ四)〙
① 中にとりこめて周囲をふさぐ。回りをとりかこむ。とりまく。
※霊異記(810‐824)上「親属東人を繋(つな)ぎ、閉ぢ居(お)き構樔(カコフ)〈興福寺本訓釈 二合加己不〉」
※にごりえ(1895)〈樋口一葉〉四「草ぼうぼうの空地面、それが端を少し囲(カコ)って」
② 害から守ってやる。たすけまもる。かばう。
※信長公記(1598)一二「足弱をかこはせ退き候はんに」
※洒落本・魂胆惣勘定(1754)上「目立ぬやうに其衣類をかこうべし」
③ 他人に知られないように隠しておく。かくまう。
※男五人(1908)〈真山青果〉一「内々小銭を貯(カコ)って」
④ 妾(めかけ)別宅などに人に知られないように住まわせる。妾を置いて養う。
※浮世草子・傾城禁短気(1711)一「有徳なる人にかこはれながら貧なる男を忍びて」
⑤ 果実、野菜などを覆いをして保存する。貯えておく。貯蔵する。
※交隣須知(18C中か)一「氷ガアルニヨリ、ヨウカコフタモノデ」
⑥ 捕獲した魚介類を一時的に活簀(いけす)などに飼っておく。
⑦ 船が使用されないで年を越す。→囲船(かこいぶね)②。
⑧ 家などを整備したり修理したりする(日葡辞書(1603‐04))。
⑨ カルタばくちの一種「きんご」で一四点となった時、札を伏せることをいい、転じて、そっと伏せておく、見のがすの意にいう。
浄瑠璃御所桜堀川夜討(1737)二「汗水流して取った物を、又物せうとはそりゃ胴慾、今夜の所は囲うて貰ほ」

かこ・む【囲】

[1] 〘他マ五(四)〙 (古く「かごむ」とも)
① 物の周囲をとりまく。中にとりこめてまわりをふさぐ。かくむ。かこう。
※漢書楊雄伝天暦二年点(948)「営み合ひ囲(カコミ)会ひ」
※落窪(10C後)三「にげんとするに、〈略〉をかしういひて、かこみてにぐべくもあらず」
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生の散歩「夕飯の茶ぶ台を囲んだ時」
② (盤や卓を囲むところから) 碁を打つ。将棋をさす。マージャンをする。
※台記‐天養二年(1145)六月一五日「与公春碁、余勝、公春献馬」
[2] 〘他マ下二〙 (一)①に同じ。
※古今著聞集(1254)一七「此僧ども立かこめて、その中に一人かづら縄をもちて」
[語誌](1)奈良時代には「かくむ」が一般的で「かこむ」との交替は平安中期以後と考えられ、「色葉字類抄」では両形を併記する。「かこむ」への変化には、類語「かこふ(囲)」の影響があったか。アクセントは両者とも高起式。
(2)「史記抄」などに京都の儒者は「かごむ」と濁音に読んだとあり、他の資料にも散見するところから、異形として相当広く用いられていたと見られる。

かこみ【囲】

〘名〙 (動詞「かこむ(囲)」の連用形の名詞化。古く「かごみ」とも)
① 物の周囲をとりまくこと。また、そのとりまいているもの。特に敵などをとりまくこと。包囲、および、その軍勢。
※尾張家本増鏡(1368‐76頃)一七「正成が城の囲みに、そこらの武士どもかしこにつどひをるに」
※太平記(14C後)一六「二十八騎を以て百万騎の囲(カコミ)を出」
② 周囲。まわり。また、その長さ。
※山家集(12C後)中「しほぢ行かこみのともろ心せよまたうづはやきせとわたる程」
※如何なる星の下に(1939‐40)〈高見順〉七「A新聞のカコミ評論を書く」

かくみ【囲】

〘名〙 (動詞「かくむ(囲)」の連用形の名詞化) まわりをとりかこむこと。また、そのもの。周囲。かこみ。
※書紀(720)皇極二年一一月(図書寮本訓)「灰(はひ)の中に骨を見て、誤りて王(きみ)(うせま)しぬと謂(おも)ひて囲(カクミ)を解きて退き出づ」

かく・む【囲】

〘他マ四〙 まわりを取り巻く。かこむ。
※万葉(8C後)二〇・四四〇八「若草の 妻も子供も をちこちに さはに可久美(カクミ)居」
※水鏡(12C後)下「十月九日太上天皇つはものをおこして、内裏をかくみたまひしかば」

【囲】

〘接尾〙 両手をひろげて抱える大きさ。約一・五メートル。太さを計るのに用いる語。ひとかかえ。
※令義解(833)廐牧「日給〈略〉木葉二囲」 〔荘子‐人間世〕

かこわれ かこはれ【囲】

〘名〙 別宅などに囲われている女。めかけ。かこわれめ。
※雑俳・類字折句集(1762)「何所にねましょと囲れの母」

かく・う かくふ【囲】

〘他ハ四〙 =かこう(囲)〔十巻本和名抄(934頃)〕

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