東京都小笠原諸島中の聟島(むこじま)、父島、母島各列島などの自然を公園域とする国立公園。1972年(昭和47)指定、25番目の国立公園となった。1975年南硫黄(いおう)島を削除。面積66.29平方キロメートル、海域公園域7.80平方キロメートル。小笠原諸島全域中、安全性の確保されない硫黄島と、南硫黄島、各島のうち集落、農業地域は除外されている。各島とも海食地形が発達し、父島の千尋(ちひろ)岩、母島の大崩(おおくずれ)湾、北硫黄島の岩壁などは比高が大でとくに優れた海食崖(がい)である。また、岬の突端や小島嶼(とうしょ)群は、岩石の侵食度によってそれぞれ特異な形態をみせ、とくに聟島の針之岩(はりのいわ)、北之島、母島の鬼岩などは奇観で知られる。カルスト地形では日本唯一の海中ドリーネの多い父島列島の南島や、隆起サンゴ石灰岩のみられる母島の石門(せきもん)山などの奇勝がある。亜熱帯性の気候と海洋による隔絶性のため、自生する樹木128種のうち86種もの固有種が認められ、動物もまた小笠原の固有種が多い。
熱帯海水魚類の群をなしている兄島瀬戸、瓢箪(ひょうたん)島、人丸(ひとまる)島、母島御幸之浜、平島の周辺など、海中景観としてとくに優れた所である。近年、観光施設とともに旅館や民宿も整備され、小笠原海運による片道約26時間の東京―父島二見港間の定期船が就航しており、荒らされぬ大自然と独特の南方的風物を求めて年間2万7179人(1995年度、小笠原村調べ)の観光客が訪れる。
[菊池万雄]
『『南海の楽園 小笠原国立公園』(1974・小笠原旅行センター)』
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