打上げる(読み)ウチアゲル

デジタル大辞泉 「打上げる」の意味・読み・例文・類語

うち‐あ・げる【打(ち)上げる/打(ち)揚げる】

[動ガ下一][文]うちあ・ぐ[ガ下二]
空高く上げる。「外野フライを―・げる」「ロケットを―・げる」
波が物を岸辺に運び上げる。また、波が打ち寄せて岸に上がる。「浜に―・げられた海藻」「次々と大波が―・げてくる」
太鼓を打ち終える意から》芝居相撲などの興行を終える。「当地の興行は明日で―・げる」
《手を打ち、歌をうたうところから》宴会をする。
七日七夜なぬかななよとよのあかりして―・げ遊ぶ」〈宇津保藤原の君〉

㋐上げる。また、勢いよく上げる。
「若き人のある、まづおりてすだれ―・ぐめり」〈・宿木〉
㋑射ようとして、弓を高く差し上げる。
「弓―・げて、引かんとする所に」〈曽我・八〉
㋒声を張り上げる。
「我も声を―・げて」〈堤・虫めづる姫君
[類語]上げる持ち上げる引き上げる押し上げる突き上げる差し上げる振り上げる吊り上げる放り上げる吹き上げる吸い上げる巻き上げる揺り上げるもたげる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「打上げる」の意味・読み・例文・類語

うち‐あ・げる【打上・打揚】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]うちあ・ぐ 〘 他動詞 ガ下二段活用 〙
    1. [ 一 ] 手や楽器をたたいて音を出す。特に、酒宴を催して歌い騒ぐ。
      1. [初出の実例]「手掌(たなそこ)も摎亮(やらら)に〈略〉拍上(ウチアケ)(たま)ひ」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓))
      2. 「鬼どもがうちあげたる拍子の」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
    2. [ 二 ] ( 「うち」は接頭語 )
      1. 声を出す。声を張り上げる。
        1. [初出の実例]「うちあげたる伴僧(ばんそう)の声々」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年秋)
      2. 下から上へ勢いよく動かす。
        1. [初出の実例]「すだれうちあぐめり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)宿木)
      3. 射ようとして、矢をつがえた弓を高く持ち上げる。
        1. [初出の実例]「只一矢に射落さんと打上(うちあげ)けるが」(出典:保元物語(1220頃か)中)
      4. 乗っている馬を上の方にさっと上がらせる。
        1. [初出の実例]「其の岳の北面に馬を打上て」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
    3. [ 三 ] 打って、上の方に動かす。
      1. 波が岸にうち寄せて、物を陸に運びあげる。
        1. [初出の実例]「海に落入て浪に打上られたる也」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
        2. 「いと物すごく屹立せる牙かとぞ見る巨巖へ、幾たびとなく打(ウチ)あぐれば」(出典:内地雑居未来之夢(1886)〈坪内逍遙〉一三)
      2. 打って高く飛ばす。上に放つ。また、花火、ロケットなどを上空めがけて発射させる。
        1. [初出の実例]「ツブテヲ vchiaguru(ウチアグル)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
        2. 「花火、仕掛花火など打揚(ウチア)げるといふことでした」(出典:小公子(1890‐92)〈若松賤子訳〉一五)
    4. [ 四 ] ( 「あげる」は、終える、しあげる、すっかり…するの意 )
      1. すっかり使う。全部与える。
        1. [初出の実例]「金銀財宝、くら一ケ所を打あげん」(出典:浄瑠璃・源氏冷泉節(1710頃)下)
      2. 材料を鍛えて作りあげる。
        1. [初出の実例]「二振りの剣を打(ウ)ち上(ア)げぬ内は、生けて国へは帰さないワ」(出典:歌舞伎・四天王楓江戸粧(1804)三立)
      3. 鳴り物の演奏を終える。特に能楽、歌舞伎の囃子(はやし)方で、太鼓入りの鳴り物を一段と高く打ち終えてくぎりをつける。また、幕切れせり上げなどで効果音のつけを早打ちする。
        1. [初出の実例]「勤の始るには、打はじめの鈴と云、はつるには打あくる鈴なんどと云やうに」(出典:百丈清規抄(1462)三)
        2. 「鳴物打上げ、直ぐに浄瑠璃に成る」(出典:歌舞伎・矢の根(1729))
      4. ( 太鼓を打ち終える意から ) 芝居、相撲などの興行を終える。転じて長くかかった集会や仕事などを終える。
        1. [初出の実例]「金沢を打揚(ウチアゲ)次第、二箇月間三百円にて雇はむ」(出典:義血侠血(1894)〈泉鏡花〉一七)
      5. 囲碁で、相手の石のダメをすべて詰め、盤上から取り除く。また、勝負の決着がつくまで打ってしまう。
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ガ下一段活用 〙
    [ 文語形 ]うちあ・ぐ 〘 自動詞 ガ下二段活用 〙 ( 波が自分自身を陸へあげる意から ) 波がおし寄せて陸にあがる。
    1. [初出の実例]「ナミガ イソエ vchiageta(ウチアゲタ)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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