指宿(市)(読み)いぶすき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「指宿(市)」の意味・わかりやすい解説

指宿(市)
いぶすき

鹿児島県薩摩半島(さつまはんとう)の南東部にある温泉観光都市。1954年(昭和29)指宿町と今和泉(いまいずみ)村が合併して市制施行。2006年(平成18)揖宿(いぶすき)郡山川町(やまがわちょう)、開聞町(かいもんちょう)を合併。地名の由来は「湯豊宿(ゆほすき)」という説もあるが明らかではない。指宿カルデラ(阿多カルデラ(あたかるでら))内部にあり、中央にカルデラ湖池田湖がある。南東部、鹿児島湾口の山川港は天然の良港、南西部には開聞岳(924メートル)がそびえる。JR指宿枕崎線(いぶすきまくらざきせん)、国道226号が通じる。縄文弥生(やよい)時代の土器が層位的に出土した指宿橋牟礼川遺跡(はしむれがわいせき)が十二町下里(くだり)にある(国指定史跡)。中世『薩摩国図田帳』(1197)には揖宿(いぶすき)郡と記されている。近世薩摩藩の外城(とじょう)制では宮ヶ浜と今和泉に麓(ふもと)(外城)が置かれた。幕末には全国屈指の海商、浜崎太平次(1814―1863)が密貿易で活躍。明治以降、中心地が宮ヶ浜から十二町に移り、第二次世界大戦後、観光地化が進展、摺(すり)ヶ浜をはじめ海浜地区にはホテル、旅館が林立し、一大温泉都市となった。温暖な気候と温泉熱を利用した園芸や、観葉植物の栽培、ウナギ養殖のほか、かつお節の製造、肉牛ブタ畜産が盛んである。市域大部分が霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園に属し、池田湖をはじめ、開聞岳、魚見岳、知林(ちりん)ヶ島などの景勝地に恵まれる。面積148.84平方キロメートル、人口3万9011(2020)。

[平岡昭利]

『『指宿市誌』(1979・指宿市)』


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