歌う(読み)ウタウ

デジタル大辞泉 「歌う」の意味・読み・例文・類語

うた・う〔うたふ〕【歌う/謡う/唄う/×謳う】

[動ワ五(ハ四)]
音楽的な高低・調子などをつけて発声する。「歌を―・う」「ピアノに合わせて―・う」
(「詠う」とも書く)詩歌を作る。また、詩歌に節をつけて朗読する。「望郷の心を―・った詩」
鳥などがさえずる。鳴く。「花咲き鳥―・う」
(謳う)
多くの人々が褒めたたえる。謳歌する。「太平の世を―・う」
㋑ある事を盛んに言いたてる。また、明記して主張する。「国民主権を―・った憲法」→うたわれる
[補説]1で、謡曲をうたう場合は多く「謡う」と書く。
[可能]うたえる
[類語](2口ずさむ詠む/(3鳴くさえずすだえるいなな咆哮ほうこうする遠吠えする時をつくる・喉を鳴らす・吠え立てる・唸るたけうそぶ鳴き頻る鳴き立てる地鳴き笹鳴き蝉時雨虫時雨

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精選版 日本国語大辞典 「歌う」の意味・読み・例文・類語

うた・ううたふ【歌・謡・唄・謳】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. 声に節を付けて歌詞を唱える。
      1. (イ) ことばを引き延ばしたりして節を付けて声を出す。楽器に合わせるのを正式とする。
        1. [初出の実例]「この御酒(みき)を 醸(か)みけむ人は その鼓(つづみ)(うす)に立てて 宇多比(ウタヒ)つつ 醸みけれかも」(出典古事記(712)中・歌謡)
        2. 「弁の君〈略〉『豊浦の寺の西なるや』とうたふ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
      2. (ロ) 詩歌を作って吟じる。また、詩歌を作る。詠じる。
        1. [初出の実例]「男は〈略〉かくうたふ。いたづらに行きはてきぬる物ゆゑに見まくほしさにいざなはれつつ」(出典:伊勢物語(10C前)六五)
    2. 盛んに言いたてる。
      1. (イ) 多くの人がほめたたえる。楽しんで声を出す。謳歌(おうか)する。
        1. [初出の実例]「都鄙遠近隣民親疎、堯舜無為の化をうたひ」(出典:平家物語(13C前)五)
      2. (ロ) 評判をたてる。うわさする。→謳(うた)われる
      3. (ハ) 目だつように主張する。書類などにはっきり書き記す。
        1. [初出の実例]「卑屈な儒者に唱(ウタ)はせたる、一時便宜の道徳論なり」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九)
    3. 物を言う。話す。
      1. [初出の実例]「うたふ 語話するを云ふ、古意なり」(出典:新編常陸国誌(1818‐30頃か)方言)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙
    1. ( 比喩的な用法として ) 高い声を出す。調子のついた音を出す。
      1. (イ) 鳥、虫などが鳴く。特に、鶏が時を告げる。
        1. [初出の実例]「天の戸をおし明け方にうたふなりこや鶯の朝倉の声」(出典:清輔集(1177頃))
      2. (ロ) 悲鳴をあげる。泣く。
        1. [初出の実例]「もし金がなけりゃ引摺(ひきず)って行てうたはすのぢゃ」(出典:歌舞伎・花雪恋手鑑(1833)下)
      3. (ハ) 川などが小さな音を立てる。
        1. [初出の実例]「川の瀬にうたふさざ浪露かけて木陰涼しき蝉の諸ごゑ」(出典:草根集(1473頃)四)
    2. 悪くなることをいう、文政期(一八一八‐三〇)の大工仲間の隠語
      1. [初出の実例]「わるなるを、うとう」(出典:新ぱん普請方おどけ替詞(1818‐30頃か))
    3. 死ぬ。また、倒産する。
      1. [初出の実例]「うたふた 人の死たるを云、又身上しまうたことをも云」(出典:浜荻(久留米)(1840‐52頃))
    4. 白状することをいう、てきや、盗人仲間の隠語。〔日本隠語集(1892)〕
      1. [初出の実例]「正直にウタって(白状して)おこう」(出典:いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二)

歌うの語誌

( 1 )歌は「うたふ」だけでなく「かたる」ことにも通じていたことは「以歌語白(歌を以ちて語りて白さく)」という「古事記‐仁徳記」からうかがえる。また「万葉集」でも、歌を「うたふ」とするものは少なく、「作歌(歌を作る)」とするのが最も多い。ただ「作」をツクルと訓むかヨムと訓むかという問題もあり、一概に歌はうたわれたものだとはいえないようである。
( 2 )平安時代になると、すでに作られた歌を「うたふ」ことはあっても、歌を作ることを「うたふ」とは言わない。むしろ「うたふ」は、歌よりも歌謡について用いられるようになり、歌は「よむ」ものとなっていった。

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