嘯く(読み)ウソブク

デジタル大辞泉 「嘯く」の意味・読み・例文・類語

うそ‐ぶ・く【×嘯く】

[動カ五(四)]《「うそ吹く」が原義
とぼけて知らないふりをする。「そんなことがあったかね、と平気な顔で―・く」
偉そうに大きなことを言う。豪語する。「絶対に優勝してみせる、と―・く」
猛獣などがほえる。鳥などが鳴き声をあげる。「虎―・けば風騒ぐ」
口をすぼめて息や声を出す。口笛を吹く。うそむく。
「この蛍をさし寄せて、包みながら―・き給へば」〈宇津保・内侍督〉
詩歌小声で吟じる。うそむく。
「月のあかき夜、大納言の―・きながめありき給ふついでに」〈夜の寝覚・二〉
[類語](2言う話すしゃべる語る述べる発言する口を利く口に出す口にする吐く漏らす口走る抜かすほざく言い出すしゃべくる物言う伝える告げる物語る打ち明ける明かす説明する述懐する告白する口外こうがいする他言たごんする言い掛ける言い始める言い話し込む話しかける口に上る口の端に掛かる口を開く口を切る申し述べる(尊敬)おっしゃる仰せられるのたま謙譲申し上げる申す言上ごんじょうする/(3鳴くさえずすだえるいなな咆哮ほうこうする遠吠えする時をつくる・喉を鳴らす・吠え立てる・唸るたけ鳴き頻る鳴き立てる歌う地鳴き笹鳴き蝉時雨虫時雨

うそ‐む・く【×嘯く】

[動カ四]うそぶく」に同じ。〈新撰字鏡

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「嘯く」の意味・読み・例文・類語

うそ‐ぶ・く【嘯】

  1. 〘 自動詞 カ行五(四) 〙 ( 古くは「うそふく」とも )
  2. 口をすぼめて息を強く吐き、また、音を立てる。ふうふうと息を吐き出す。うそむく。
    1. [初出の実例]「弟(おとのみこと)(うみべた)にましまして嘯(ウソフキ)たまふ。時に迅風(はやち)忽に起る」(出典:日本書紀(720)神代下(水戸本訓))
  3. 詩歌などを低い声で口ずさむ。吟詠する。また、ふしを付けていう。うそむく。目的語をとって他動詞のようにも用いる。
    1. [初出の実例]「あるいは笛を吹き〈略〉あるひはうそふき、扇を鳴らしなどするに」(出典:武藤本竹取(9C末‐10C初))
  4. 口笛を吹く。また、ある物を見て感嘆のあまり、ため息をつく。
    1. [初出の実例]「Vsobuqi, qu, buita(ウソブク)〈訳〉月や花をながめて息をつき、口笛を吹く」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  5. 虎などがほえる。鳥などが鳴き声をあげる。
    1. [初出の実例]「虎粛(ウソフケ)ば風生こる」(出典:彌勒上生経賛平安初期点(850頃))
  6. てれかくしにそらとぼける。また、開き直ったり得意になったりして相手を無視するような態度をとる。そらうそぶく。
    1. [初出の実例]「舟のかぢとりたる男ども、舟を待つ人の数も知らぬに心おごりしたる気色にて、〈略〉とみに舟も寄せず、うそふいて見まはし」(出典:更級日記(1059頃))
  7. 強がりをいう。大きなことをいう。

嘯くの語誌

→「うそむく(嘯)」の語誌


うそ‐む・く【嘯】

  1. 〘 自動詞 カ行四段活用 〙うそぶく(嘯)
    1. [初出の実例]「嘯 宇曾牟久」(出典:享和本新撰字鏡(898‐901頃))
    2. 「ころものせきや。つぼのいしぶみ。そとのはま風。ふけ行月にうそむく」(出典:雲形本狂言・鳴子(室町末‐近世初))

嘯くの語誌

「うそぶく」の子音交替形。「うそぶく」「うそむく」は、文献的には「うそぶ」「うそむ」より遅れて出現する。「ぶ」から「む」への変化時期については平安中期以降であると言われる。中世近世を通して使用されたが、近世の仮名遣い書に見られるように、当時、「うそふく」と書いて「うそむく」と読むということもあったらしい。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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