阿蘇くじゅう国立公園に属し、山域は
「豊後国風土記」にみえる「球覃峯」、「万葉集」に詠じられた「朽網山」は当山のこととされる。「豊後国風土記」は
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
大分県西部、阿蘇(あそ)カルデラの北東方にあり、白山火山帯に属する安山岩質の第四紀火山群。九重連山ともよぶ。中岳(1791メートル)、久住山(くじゅうさん)(1787メートル)、星生(ほっしょう)山(1762メートル)、三俣(みまた)山(1744メートル)などからなるくじゅう火山群、大船山(たいせんざん)(1786メートル)、黒岳(1587メートル)などの大船火山群、黒岩山(くろいわやま)(1503メートル)、猟師(りょうし)山(1423メートル)、泉水(せんすい)山(1296メートル)などの黒岩火山群に分かれる。これらは溶岩円頂丘であるが、大船山上部には成層火山がのる。星生山の北東側山腹、大船山の南東側山麓(さんろく)には硫気孔があり、とくに前者では活発な硫気活動や水蒸気爆発が記録されている。温泉も多く、大岳(おおたけ)(出力1.1万キロワット)、八丁原(はっちょうばる)(5万キロワット)の両地熱発電所もある。久住山を中心に三俣山など1500メートル以上の地域に分布するコケモモの群落、大船山を中心に900メートル以上の地域に分布し6月の開花期に美観を呈するミヤマキリシマの群落は、ともに国指定天然記念物。北麓の飯田(はんだ)高原や南麓の久住高原とともに阿蘇くじゅう国立公園域の一部。法華院(ほっけいん)、長者原(ちょうじゃばる)、筋湯(すじゆ)などの温泉群が登山基地である。くじゅう、大船両火山群と黒岩火山群との間をやまなみハイウェイが走る。
九重山はこれら火山群の総称であるが、九重(ここのえ)町と竹田(たけた)市都野(みやこの)地区では、「久住山」の表記をめぐって、議論がかわされている(前者は「九重山」を、後者は「久住山」を主張)。一般的には、火山群全体をさす場合に「九重山」「九重連山」「くじゅう連山」を用い、その主峰である単独の山をさす場合に「久住山」が用いられている。混乱を避けるため、観光宣伝では平仮名の「くじゅう」が用いられることが多く、国立公園名は「阿蘇くじゅう国立公園」とされている。
[兼子俊一・諏訪 彰]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
大分県西部にある火山群。峰を境に北側が九重(ここのえ)町,南側が竹田市北西部に含まれ,南西山麓は熊本県に属する。西部は久住(くじゆう)山(1787m)を中心として,最高峰である中岳(1791m),稲星山(1774m),三俣山(1745m),また東部は大船(たいせん)山(1786m)を中心として平治岳(1643m),黒岳(1587m)などの火山が群立し,これらの山間盆地としてミヤマキリシマで有名な坊ガツルがある。一方,これら火山群の西方には阿蘇と別府を結ぶ九州横断道路をはさんで黒岩山(1503m),猟師山(1423m),さらには湧蓋(わいた)山(1500m)がそびえている。火山活動の開始は約26万年前と古く,かつては激しい火砕流噴火をしたが,すでに最盛期をすぎた火山である。噴火記録は17~18世紀に3度あるのみであるが,現在でも硫黄岳を中心に激しい噴気活動を続けている。火山群の大半は角セン石安山岩からなる溶岩円頂丘であるが,大船山の米窪火口と平治岳のみは輝石安山岩ないし玄武岩質マグマを噴出し,火山形態も他とは異なって前者がスコリア丘,後者が成層火山である。北麓の飯田(はんだ)高原,南麓の久住高原は火砕流堆積物がつくる緩斜面であり,牧場として利用されている。阿蘇国立公園の一角をなし,美しい自然とともに,筋湯,寒ノ地獄,牧ノ戸,法華院,七里田などの温泉にも恵まれている。また八丁原(はつちようばる)と大岳(ともに九重町)には豊富な地熱を利用した発電所がある。
執筆者:小林 哲夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
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