噴火で火口から噴き出した高温の火山ガスや空気、火山灰、溶岩の破片などが一体となって高速で斜面を流れる現象。中心部の温度は600~700度に達することもあり、進路上にある森林や住宅が燃えて破壊される被害が生じる。火砕サージという熱風を伴う。1991年の長崎県雲仙・普賢岳の噴火や、2014年の御嶽山噴火で発生した。
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火山の噴火の際に,大量の軽石や火山灰が,一団となって山腹を高速度で流下する現象。かつては火山砕屑流とも呼ばれた。ふつうは,高温の固形物質(火山砕屑物)とガス(空気または水蒸気)の混相流(粉体流)を指し,重力によって駆動される。構成物質の大部分が軽石の場合は軽石流,火山灰の場合は火山灰流,スコリアの場合はスコリア流と呼ばれる。小規模の火砕流は熱雲とも呼ばれる。火砕流の規模は大小広い範囲にわたるが,その規模により三つに分類する。小規模のものは噴出物量が10⁻4km3(10万t)以下で,ブルカノ式噴火に伴って発生することが少なくない。中間型のものは数km3以下で,日本の成層火山の大噴火(例えば大規模プリニー式噴火)にしばしば伴って発生する。大規模火砕流は10km3以上の火砕物を噴出するもので,発生頻度は大きくないが,数百km2以上の広い地域を覆うので,大災害をもたらす。また噴出口周辺は陥没してカルデラを生じる。小型火砕流の例としては,1902年西インド諸島プレー火山の爆発の際発生したものが有名で,時速100km以上で火口から8km離れたサン・ピエール市を襲い,2万8000人が全滅した。また1783年(天明3)浅間火山で発生した鎌原(かんばら)火砕流は死者約1200人の被害を与えた。これら小型の火砕流はしばしば発生するが,その予知は難しく,火口から10km以上の距離を高速度で流走するので大きな被害をもたらす場合がある。中間型の火砕流の出現頻度は少ないが,浅間火山1783年の吾妻火砕流(0.1km3),1108年の追分火砕流(1.0km3)や駒ヶ岳(北海道)1929年の軽石流(0.3km3)などの例がある。いずれもマグマから直接由来した岩塊(本質岩塊)は中程度の発泡を示し,数m~20mの厚さの堆積物を生じた。大型の火砕流はすべて発泡度の高い軽石やスコリアを本質岩塊として含み,厚さ数十m以上の堆積物を生じる。約2万2000年前,鹿児島湾の北部で大噴火が起こり,約100km3の火山灰や軽石が噴出した。その大部分は大型の火砕流として鹿児島県と宮崎県全域にひろがり,最大厚さ200mの白っぽい色の火山灰質堆積物を生じた。現在その一部がシラス台地として残存している。この噴火の際上空に噴き上げられた細粒の火山灰は1000km以上離れた地域にまで降下した(AT火山灰)。この噴火の結果鹿児島湾北部は陥没して,直径20kmの姶良(あいら)カルデラを生じた。このような大規模火砕流堆積物は,その自重と高温のため中心部が固く溶結して,一見溶岩のようにみえる岩石(溶結凝灰岩)となる。日本列島にはこのような大規模火砕流とそれに伴うカルデラが20例以上ある。高速で流れる火砕流のエネルギーは,火口からいったん空中高く放出された火砕物が落下してくる位置のエネルギーによるものと考えられる。流走中の火砕流では,含まれる大量の火山灰が流動化しているため,内部摩擦が小さくなり,見かけの粘性が著しく低下し長距離を高速で流走すると解釈される。
執筆者:荒牧 重雄
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火山灰、火山ガス、溶岩片などが一団となり、高速で山の斜面を流れ下る現象のこと。一般に高温で、最高時速150キロメートルを越えることがある。火砕流は、安山岩、デイサイト、流紋岩など粘り気の高いマグマの噴火によってできた火山で発生することが多いが、玄武岩の火山においても発生することがある。1902年の西インド諸島のフランス領マルティニーク島プレー火山で発生した火砕流は、サン・ピエール市街地を襲い、約2万8000人の市民が一瞬にして火砕流の犠牲となった。火砕流は、爆発的噴火の際に火口から四方八方に流れ下ることや、火口付近の溶岩円頂丘(溶岩ドーム)や溶岩流が崩れて発生することがある。後者は比較的規模が小さく熱雲ともよばれており、サン・ピエールを襲ったものは、これである。カルデラをつくるような規模の大きな噴火に伴う火砕流は、軽石流や火山灰流ともよばれている。阿蘇(あそ)山では約32万年前から9万年前にかけて4回の大きな火砕流噴火がおこり、その結果、山頂部が陥没して、現在のカルデラができた。
火砕流は谷など地形的に低いところを流れるが、火山灰と火山ガスからなる希薄な部分(火砕サージ)は火砕流の本体から分離し斜面をはいあがったり横方向に広がる性質がある。プレー火山の1902年の噴火や長崎県雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)の1991年(平成3)の噴火のように、火砕流による犠牲者は火砕流の本体より火砕サージに巻き込まれた場合が多い。
雲仙普賢岳では1990年から1995年にかけて、成長を続ける溶岩ドームが繰り返して崩壊したために、合計で9000を超える回数の火砕流が発生した。1991年6月3日に発生した火砕流では43名の報道関係者や防災関係者が犠牲になった。三宅(みやけ)島で2000年8月末におきた水蒸気爆発では、低温で勢いのない火砕サージが発生し住宅街を飲み込んだが、幸い犠牲者はでなかった。
[中田節也]
『砂防学会編『火砕流・土石流の実態と対策』(1993・鹿島出版会)』▽『千木良雅弘著『群発する崩壊――花崗岩と火砕流』(2002・近未来社)』
pyroclastic flow
高温の本質火砕物質とガスの混合物が,おもに重力によって駆動され高速で地表を流下する現象。粉体流の一種で,固体相は種々の大きさの火山砕屑物であり,流体相は空気や火山ガス。火山砕屑流とも。火砕流の本体は比較的密度の大きな流れで,地表に沿い,流動化現象により見かけ粘性の著しく低い流体として運動する。火砕流の上部は,本体から供給された比較的低密度の固気混合体で,急激に膨張する。この部分は火砕サージ(pyroclastic surge)とも呼ばれる。火砕流の堆積物は細粒物質を多く含み,分級の程度が悪いのが特徴。火山灰流・軽石流・スコリア流・熱雲などを含み,非常に小規模なものから100km3以上のものまである。その堆積物は大部分が本質岩塊(軽石・スコリアなど)と細粒物質(火山灰)からなり,地形の低い部分を流下した分布を示し,上面は平坦で傾斜はきわめて緩いのが特徴。火砕流堆積物は溶結の程度あるいは結晶化の状態の相違により分帯が可能。溶結度では非溶結(no welding),弱溶結(partial welding),強溶結(dense welding)の3帯が基本となる。強溶結帯がある場合,岩体の内方にあり,外側に向かい弱・非溶結帯の順に囲まれる。結晶化には脱ガラス化,気相晶出,微文象組織化(granophyric crystallization),噴気変質(fumarolic alteration)などと非変化のガラス帯(vitric zone)とが区別できる。溶結度と結晶化の状態を組み合わせた分帯も可能。火砕サージと同様,重要な火山災害要因の一つで高温高速で流下し,破壊力が大きいため建物・人命の損失の危険性が極めて高い。参考文献:R.L.Smith(1960) Prof. Pap., US Geol. Surv., Vol.354-F
執筆者:荒牧 重雄・小野 晃司・内山 高
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