(読み)とく

精選版 日本国語大辞典 「疾」の意味・読み・例文・類語

とく【疾】

[1] (形容詞「とし」の連用形)
① 時間的経過が早いさま。速やかに。急いで。早速。即刻。とっく。とう。
※土左(935頃)承平五年二月五日「船とく漕げ。日のよきに、ともよほせば」
蘭東事始(1815)上「其翌朝、とく支度整ひ、彼所に至りしに」
② 時間的にさかのぼった時点であるさま。以前に。早期に。すでに。とっくに。とう。
源氏(1001‐14頃)夕顔「ただ冷えに冷え入て、息はとく絶え果てにけり」
曾我物語(南北朝頃)一「おのれは、果報すくなき者かな。今すこしとくむまれて、などや父をも見ざりける」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉一「諸君は夙(トク)御承知であらふ」
[2] ((一)②の体言化した用法) ずっと以前。また、早い時期。早い時間。とっく。とう。

とっく【疾】

(「とく(疾)」の変化した語)
[1] 〘副〙
① 時間的経過が早いさまを表わす語。速やかに。急いで。早速。即刻。とう。
史記抄(1477)一二「与期旦日、日の出とは明日とっく日の出る時分にこひと云心ぞ」
② 時間的にさかのぼった時点であるさまを表わす語。以前に。早期に。とっくに。とう。
※浄瑠璃・平家女護島(1719)二「丹左衛門懐中の一通出し、とっく申聞せんずれ共」
[2] 〘名〙 ((一)②の体言化した用法) ずっと以前。とう。

とう【疾】

[1] (形容詞「とし」の連用形「とく」の変化したものから)
① =とく(疾)(一)①
※竹取(9C末‐10C初)「あゆみとうする馬をもちてはしらせん」
② =とく(疾)(一)②
蜻蛉(974頃)下「われも、とういぶかしさによびいでたり」
[2] 〘名〙 =とく(疾)(二)

し【疾】

〘形シク〙 速い。勢いがよい。とし。
万葉(8C後)一二・三〇二五「石ばしる垂水の水の早敷(はしき)やし君に恋ふらく吾が情(こころ)から」

しつ【疾】

〘名〙 やまい急病病気
続日本紀‐大宝三年(703)閏四月辛酉「寡君不幸、自去秋疾、以今春薨」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「疾」の意味・読み・例文・類語

しつ【疾】[漢字項目]

常用漢字] [音]シツ(漢) [訓]やまい とし はやい
やまい。病気。「疾患疾病しっぺい悪疾眼疾痼疾こしつ痔疾じしつ肺疾廃疾
速度がはやい。「疾走疾風しっぷう
なやむ。「疾苦
憎む。「疾視
難読疾風はやて

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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