白丁(読み)ハクテイ

デジタル大辞泉 「白丁」の意味・読み・例文・類語

はく‐てい【白丁】

律令制で、無位無官良民口分田を支給されて租を納め課役を負担する者。

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精選版 日本国語大辞典 「白丁」の意味・読み・例文・類語

はく‐てい【白丁】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 令制で、良民のこと。官途についた入色者(にゅうしきしゃ)や賤民ではなく、口分田を班給されて租を納め、庸・調・雑徭などの課役を負担する公民。
    1. [初出の実例]「里長。坊長。並取白丁清正強幹者充」(出典令義解(718)戸)
  3. 訓練を終えていない兵丁。また、まだ物事に慣れていない者。〔漢書注‐鄒陽伝〕

はく‐ちょう‥チャウ【白丁】

  1. 〘 名詞 〙 植物はくちょうげ(白丁花)」の異名。〔物品識名拾遺(1825)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「白丁」の意味・わかりやすい解説

白丁 (はくてい)

朝鮮の被差別民。朝鮮語ではペクチョン。白丁という語は高麗時代には国家の職役についていない一般庶民を指したが,1423年に政府が非農耕民である禾尺(かしやく)(楊水尺)・才人を〈新白丁〉として戸籍に編入したことからしだいに差別語化した。早く分離して軽業などの大道芸人となった才人とともに,白丁は賤民の代表として厳しい迫害をうけた。結婚は白丁間のみに限定され,奴婢(ぬひ)などと異なって身分上昇の機会は閉ざされていた。職業の制限は厳しく,農業以外に主として柳細工の製造販売や畜獣の屠殺などに従事し,それがまた差別観念を再生産した。一般集落に居住することも許されず,町の郊外に彼らのみの集落を形成し,冠や衣服にいたるまで制限されて一般民衆から賤視された。1894年の甲午改革で身分解放が行われたが,5万~十数万人といわれる白丁に対する差別はその後も厳存した。1923年,日本の水平社に刺激されて彼らは衡平社を結成し,解放運動を開始した。現在は南北朝鮮ともに身分としての白丁は消滅した。
衡平運動 →賤民[朝鮮]
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白丁 (はくてい)

日本古代の律令制のもとで,庸(よう)・調(ちよう)を負担する無位の成年男子。〈はくちょう〉ともいう。また律令官僚の出身法,つまり律令官僚に参加するときの階層的な資格身分についての一概念。その出身法では,蔭子孫(おんしそん),位子(いし),白丁という概念系列があり,蔭子孫・位子に対して,それ以外のものを白丁とよぶ。具体的には,内六位から内八位までの本格的な下級官僚の庶子,および内・外初位(そい)の者の嫡・庶子,外六位から外八位の官僚たちの嫡・庶子,ならびに庶人の子たちを指す。白丁のうち,外六位以下を帯びる郡司の大領・少領の子は,兵衛として貢進される資格があり,また内六位から内八位までの庶子は位子が不足した場合に兵衛に採用され,ほかは,親王の公的従者である帳内(ちようない),貴族官僚の公的従者である資人に任用されることができた。また特殊な技能をもつものは,その技能を職能とする下級職員に採用されたのである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「白丁」の意味・わかりやすい解説

白丁(はくてい 朝鮮)
はくてい

朝鮮の身分呼称。本来、中国律令(りつれい)制の用語で、朝鮮では高麗(こうらい)時代(918~1392)から記録に現れる。高麗の白丁は、国家の支配下の民衆のうち、軍役や駅の役などの特定職役を負担せず、したがって、その代償としての土地の支給も受けない人々で、自己の保有地(民田)を耕作し、国家に対して田税、貢物、各種の一般的徭役(ようえき)などを負担していた。ただ、身分的には、良人(りょうじん)に限定されえない面をもっていた。しかし、高麗中期以後、王朝が良人自営農民を支配の基礎とするようになると、白丁もそれを意味するに至った。1424年の李朝(りちょう)世宗による、才人、禾尺(かしゃく)(従来、定住せず、狩猟、と畜、柳器製造などに従事していた)の白丁への改称も、本来彼らの良人自営農民化を意味した。ところが、この政策は成功せず、逆に、新たに白丁となった彼らに対する官民の賤視(せんし)、差別を増幅させた。こうして、これ以後しだいに、白丁は特定の被賤視・被差別民(才人、禾尺)の呼称に転化し定着していった。1894年の甲午(こうご)改革で身分解放されたが、差別はなくならず1923年に衡平社を結成し解放運動を開始した。

[北村秀人]


白丁(はくてい 日本)
はくてい

無位無官の公民をいう。律令(りつりょう)制の諸官司などに配されて雑務についている場合に史料上、白丁と記される。官途につく場合は、多く舎人(とねり)に採用され、無位から始まってしだいに昇進することもあったが、五位にまで到達することはほとんどありえなかった。また官職のほうも四等官の最下級である主典(さかん)どまりであった。白丁である間は官司の雑務に配されていても、租庸調(そようちょう)などの租税は免除されることがなかった。

[鬼頭清明]


白丁(はくちょう 日本)
はくちょう

白丁

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白丁」の意味・わかりやすい解説

白丁
はくちょう

下級武士の着用する狩衣 (かりぎぬ) の一種。白の布子張であったので「白張」とも書いた。また,律令制の諸官司,神社,駅 (うまや) などに配属されて雑務を行う無位無官の人や,諸家の傘持,沓持,口取など仕丁がこれを着たところから,彼らを白丁 (「はくてい」ともいう) ともいった。白丁から官途についても主典 (さかん) にまでしか進めなかった。

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旺文社日本史事典 三訂版 「白丁」の解説

白丁
はくてい

律令制下,諸官庁・国衙 (こくが) ・神社・駅などに配属されて雑務にあたった無位無官の者
「はくちょう」とも読む。白丁から舎人 (とねり) になり下級官人になる場合があった。

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普及版 字通 「白丁」の読み・字形・画数・意味

【白丁】はくてい

平民。

字通「白」の項目を見る

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動植物名よみかた辞典 普及版 「白丁」の解説

白丁 (ハクチョウ)

植物。アカネ科の常緑小低木,園芸植物。ハクチョウゲの別称

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世界大百科事典(旧版)内の白丁の言及

【白張】より

…宮廷の小舎人(こどねり),公家や武家の供人の車副(くるまぞい)や松明(たいまつ)持ちなどが着た。また,そういう人々をも白丁(白張)という。この装束は烏帽子(えぼし)に白張,草鞋(そうかい)をはく。…

【白丁】より

…また律令官僚の出身法,つまり律令官僚に参加するときの階層的な資格身分についての一概念。その出身法では,蔭子孫(おんしそん),位子(いし),白丁という概念系列があり,蔭子孫・位子に対して,それ以外のものを白丁とよぶ。具体的には,内六位から内八位までの本格的な下級官僚の庶子,および内・外初位(そい)の者の嫡・庶子,外六位から外八位の官僚たちの嫡・庶子,ならびに庶人の子たちを指す。…

【賤民】より

…しかし法的規定と社会通念には多くのずれがあり,社会通念にも幅があって一律な賤民規定は難しいが,おおむね次の7種が賤民と認められる。(1)白丁 賤民の代名詞であり,屠殺や柳器匠などに従事する被差別民。(2)才人 白丁から分化し,軽業などを業とする大道旅芸人。…

※「白丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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