立券荘号(読み)リッケンショウゴウ

デジタル大辞泉 「立券荘号」の意味・読み・例文・類語

りっけん‐しょうごう〔‐シヤウガウ〕【立券荘号】

荘園不輸租(田租の免除)の特権を与える手続き。領主の申請に基づき政府が現地に使者を派遣し、券文(証明書)を作成して成立。太政官符・民部省符により成立した荘園を官省符荘国司の許可によるものを国免荘という。

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精選版 日本国語大辞典 「立券荘号」の意味・読み・例文・類語

りっけん‐しょうごう‥シャウガウ【立券荘号】

  1. 〘 名詞 〙 平安時代以降、荘園であることを公称しはじめること。荘園として公認されること。国衙とともに四至・坪付を確定して立券文を作製した時点で荘園の成立。
    1. [初出の実例]「為件五仏燈油仏聖等、堀河院御宇嘉承二年正月、打牓示堺四至、所立券庄号也」(出典高野山文書‐仁治二年(1241)七月日・金剛峯寺衆徒陳状案)

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改訂新版 世界大百科事典 「立券荘号」の意味・わかりやすい解説

立券荘号 (りっけんしょうごう)

立券とは官に届け出て正式の証明書が作られることをいう。律令制下でも田地や家地などを売買したとき券文を立てたが,律令制下では田地の所有者を確定する場合には班田図が最も重視され,10世紀に入って班田図が作成されなくなってから,券文を立てた名儀者が土地所有者とされた。10世紀ごろまで,たとえば橘貞子の名の荘として四至を限って立券した事例がみられるが,これは〈荘〉といっても土地の所有権の公認にすぎず,荘園としての特権は別に官省符が下されて付与された(官省符荘)。11世紀には,荘園とは公験(くげん)を相伝し数代にわたる国司から賦課免除が与えられた実績をもつものとされたが,いうまでもなく太政官が公認した荘園が正統のものであった。土地所有を公認する立券手続が行われ,荘園として賦課免除の特権が付与されることを立券荘号というが,正式には太政官から官使が派遣され国使とともに牓示(ぼうじ)を打つ手続がとられた。たとえば1153年(仁平3)に立券荘号された稲荷社領伊予国山崎荘は,それまで山崎保とよばれて稲荷社が保田から地利を収めていたが,ここに官使が下って牓示を打ち荘園となった。
荘園
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「立券荘号」の意味・わかりやすい解説

立券荘号
りっけんしょうごう

荘園に不輸租の特権を与える手続。未墾地を開墾し領有することは、墾田永年私財法以来認められた合法的行為であるが、特権を与えられた寺田以外は輸租田であった。そこで墾田主が権門の場合、政府に申請して不輸租化を実現し、地方豪族はその所領墾田を権門に寄進付託することで不輸租化を図った。ただし農民の小規模墾田はそのまま国衙(こくが)に把握されて国衙領となり、不輸租化される可能性はまずなかった。さて、申請を認めた場合、政府は太政官使(だいじょうかんし)を派遣し、国司・郡司や領主側の使者とともに現地に臨み、立会いの下に、墾田の四至(しいし)(四境)、坪付(つぼつけ)(場所、田畑の種類、面積)を注して券文を立て(つくり)、四至に牓示(ぼうじ)を打ち、また図使に絵図荘園図)をつくらせた。これを立券荘号といい、券文と絵図は、領主、国衙、民部省にそれぞれ一通ずつ保存され、後証に備えた。これが官省符荘である。しかし官使の派遣は遠隔地の場合不可能で、国衙の判断にゆだねられたこと、また四至内新開田の不輸租化は国司の免判を必要としたこと、などから、平安後期に入ると国符による立荘が増えた。これを国免荘(こくめんのしょう)という。また院政期になると、官使にかわって院使が下り、院庁下文(いんのちょうくだしぶみ)で不輸が認められた場合もあり、白河(しらかわ)・鳥羽(とば)・後白河(ごしらかわ)3上皇の院庁下文を得たものを、三代起請(きしょう)の地と称する。

[村井康彦]

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百科事典マイペディア 「立券荘号」の意味・わかりやすい解説

立券荘号【りっけんしょうごう】

立券とは官に届を出して土地の所有権を認定する正式の証明書が作成されることを意味する。11世紀末頃までは荘園は官省符(かんしょうふ)によって賦課免除の特権が与えられ,成立を公認(立荘)されていた。だが12世紀初め頃から,中央から派遣された官使,国使らの立会いのもと現地で検注が行われて【ぼう】示が打たれ,さらに立券の手続きが行われて土地の所有が公認されるようになり,これを立券荘号と称した。また従来各国の郡司・刀禰(とね)により行われていた立券業務は,中央から派遣された官使,国使らの手に移った。
→関連項目質侶牧名田荘

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「立券荘号」の意味・わかりやすい解説

立券荘号
りっけんしょうごう

荘園を不輸租 (国家権力の発動を排除する特権) の地として国が公認する手続。正式の券文 (書類) をつくって荘園の名前を確認するという意。荘園領主の申請により,太政官から官吏が派遣され,国衙 (こくが) の役人と荘園側との立会いのもとに現地を調査して,位置,境界,面積などを確定し,書類と絵図をつくる。これに基づいて太政官符,民部省符が発行され,その荘園の不輸租であることが確定する。なお,このような荘園を太政官と民部省の符を得たという意味で官省符荘という。 (→不輸・不入 )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「立券荘号」の解説

立券荘号
りっけんしょうごう

荘園の立荘手続き。平安後期以降の荘園の立荘にあたっては,国司免判(こくしめんぱん)による公田官物や雑役(ぞうやく)の免除の事実認定と,国免荘(こくめんのしょう)としての立券が重視されたが,最終的な手続きとしては太政官による立券,すなわち官省符(かんしょうふ)が必要とされた。太政官の官使と国衙(こくが)の国使が荘園の境界線上の四隅に牓示(ぼうじ)を打ち,領域を確定したうえで,立券文を作成した。

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旺文社日本史事典 三訂版 「立券荘号」の解説

立券荘号
りっけんしょうごう

荘園が不輸租や雑役免除の特権を得るための手続き
荘園領主から租税免除の申請をうけた中央政府は,国司に命じて国衙 (こくが) の役人と荘園の責任者とを現地に立ち合わせ,荘園の面積を調査し,これに基づいて太政官符や民部省符を発して租などを免除した。この手続きを立券荘号といい,その荘園を官省符荘という。

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