今日では身だしなみのよい上品な人を広くさすが,本来,搢(縉)紳(しんしん)という中国語からきており,搢紳の士を略したもの。搢(縉)は挿,紳は帯を意味し,官位にある者の象徴である笏を帯に挿していた官吏の代称であったが,近代日本ではジェントルマンgentlemanの訳語として,1879年ころから使われはじめ,やがて定着した。明治初年にはこの言葉はヨーロッパでも特定の身分層をさす概念から,粗野な振舞いのない穏やかで洗練されたマナーの,比較的上層の士を意味する概念になっていたが,日本でも,たとえ官尊民卑の風潮があるとはいえ,四民平等の時代に対応して,上流の官員と商人の双方を一括して呼ぶ適当な言葉として登場,とくに商人については〈紳商〉と呼ばれた。紳士の条件は内面的な品位の高さにあるが,外面から識別できる標識として,立派な身なりが求められる。文明開化を象徴して,シルクハットないし山高帽にフロックコート,モーニングが典型的な紳士の図で,その戯画的表現が鹿鳴館の夜会に集う紳士淑女である。これに対し徳富蘇峰のように,イギリスの地方郷紳を模して〈田舎紳士〉を主張する試みもみられたが,その担い手である豪農層が寄生地主化し,進取性を失うにつれてその存在意義も失われていった。
→ジェントルマン
執筆者:寺尾 方孝
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
性質や品行が正しく、礼儀に厚く、学徳の高い貴人の称。「縉紳(しんしん)の士」の略で、「縉」は差し挟むこと、「紳」は衣冠束帯の大帯(おおおび)の意で、官位の高い身分ある人は、礼装の際に笏(しゃく)を大帯に差し挟んだところから、貴人の称となった。転じて、英語のジェントルマンgentlemanの訳語として、淑女(レディーlady)の対語となり、上流社会や地位、財産のある男性をいい、さらには、知性や教養が豊かで、礼節や信義をわきまえた男性一般の称となった。
[宇田敏彦]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… 清代には,国家財政の補充のため,従来に比べて金銭で任官資格を購入する門戸が拡大されたため,任官資格取得者の数が増大し,彼らを含めて地方に定着する読書人の層はいっそう厚くなった。清末に入ると,郷紳と衿士とをあわせた紳士という呼称がしばしば用いられ,任官の有無や取得学位・資格のいかんにかかわらず,事実上の互選によって現実の地方政治への参画権をもつに至った一群の人々が〈某某県の紳士〉と呼ばれるようになった。20世紀初頭,光緒末年から中央の資政院,地方の諮議局などの議会が新設されると,地方の郷紳・紳士は議員となって進出し,辛亥革命に際しては,彼らが,清朝打倒を志向する広範な民衆のエネルギーを利用し,各地で立憲派としての政治活動を推進した。…
※「紳士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...
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