精選版 日本国語大辞典 「男」の意味・読み・例文・類語
おと‐こ をと‥【男】
(イ) 青年の男。成年に達した男性。
※古事記(712)上「麗(うるは)しき壮夫(ヲトコ)に成りて出で遊行(あそ)びき〈壮夫を訓みて袁等古(ヲトコ)と云ふ〉」
※土左(935頃)発端「をとこもすなる日記といふものを、女(をむな)もしてみんとてするなり」
③ 夫婦関係、男女関係での男性。
(イ) 夫。良人。妻に対する配偶者。
(ロ) 情人。情夫。
※続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉冬「妓は皆舸夫を情夫(ヲトコ)や小夜千鳥〈六花〉」
④ 出家していない男性。在俗の男性。
※成尋母集(1073頃)「法師なるも、おとこなるも、おとづれつとして」
※源氏(1001‐14頃)若紫「おとこどもぞ御簾(みす)のとにありける」
※浮世草子・傾城歌三味線(1732)二「是非なく男になりまして、此東後屋(とうごや)へ料理人にありつき」
⑥ 男性としての特質。また、その特質を持った男性。
(イ) 男らしい男子。雄々しい男子。りっぱな男子。
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「あいつもおとこ磨くやつ、をれが難儀(なんぎ)も知ってゐる」
(ハ) 男ぶり。男前。男子の容貌。
※浮世草子・好色一代男(1682)四「あたまつき、人に替り、男(オトコ)も勝れて、女のすくべき風(ふう)也」
⑦ 雄性のもの。おす。「男犬」「男柱」等の熟語形で用いることが多い。
⑧ 対になったもののうち、大きい、けわしいなどの性質をそなえている方。「男坂」「男山」など。
[語誌](1)「ひこ(彦)」「ひめ(姫)」などと同様、「こ」「め」を男女の対立を示す形態素として、「をとめ」に対する語として成立した。「をと」は、「をち(復)」「をつ(復)」と同語源とみられ、若、未熟を意味する。
(2)本来、若い青年男子(とりもなおさず結婚適齢期にあることを意味する)を指したが、上代からすでに「をみな(をむな・をんな)」と対の関係が成立して、年代・世代を問わず男性(一般)を指す語となった。
(2)本来、若い青年男子(とりもなおさず結婚適齢期にあることを意味する)を指したが、上代からすでに「をみな(をむな・をんな)」と対の関係が成立して、年代・世代を問わず男性(一般)を指す語となった。
だん【男】
〘名〙
① おとこ。男子。男性。〔易経‐繋辞上〕
② むすこ。せがれ。子息。〔易経‐説卦〕
③ わかもの。元気さかんな者。壮丁。
④ 五等爵の第五位。旧華族制度でいう。ヨーロッパの貴族の階級についても用いる。男爵。
※号外(1906)〈国木田独歩〉「『加ト男(ダン)』とは『加藤男爵』の略称」 〔礼記‐王制〕
なん【男】
〘名〙
① おとこ。おのこ。男性。だん。
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)五「また、これ男(ナン)(〈注〉ヲトコ)、これ女(にょ)と分別せされ」
② 息子。せがれ。だん。
※太平記(14C後)一二「君は何の処の人、誰が家の男(ナン)にて御坐(おはします)ぞ」
おとこ‐
し をとこ‥【男】
〘形シク〙 いかにも男という感じである。男らしい。⇔女し。
※浮世草子・古今堪忍記(1708)三「いまより男しきふるまひなせそ、いづかたにも似つかはしき方に縁もこそあれ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報