デジタル大辞泉
「士」の意味・読み・例文・類語
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し【士】
- 〘 名詞 〙
- ① 官位、俸祿を有し、人民の上に位する男。
- [初出の実例]「士有二百行一、孝敬為レ先」(出典:続日本紀‐養老四年(720)六月己酉)
- 「士出二寒閨一忠順成、樵夫不レ歎負レ薪行」(出典:菅家文草(900頃)二・相国東廊、講孝経畢)
- [その他の文献]〔国語‐斉語一〕
- ② 男性をいう。男子。おとこ。おのこ。「同好の士」 〔史記‐刺客伝〕
- ③ 学問、道徳を身につけたりっぱな人。また、人徳の備わった尊敬に値する人物。
- [初出の実例]「狂暴之人難レ指レ我、文章之士定為レ誰」(出典:菅家文草(900頃)二・有所思)
- 「博学の士も計るべからず」(出典:徒然草(1331頃)一四三)
- [その他の文献]〔史記‐周本紀〕
- ④ 武道をもって主君に仕える者。武士。さむらい。士族。
- [初出の実例]「互に賢才の臣、勇猛の士を具して才を挍べ」(出典:太平記(14C後)二六)
- 「士農工商の四民と云て、人に四種の品があるぞ。士は、日本にさぶらいと云ほどの者ぞ」(出典:史記抄(1477)一九)
- ⑤ 古く中国で、天子や諸侯の家臣で大夫の下に位する者。
じ【士】
- 〘 名詞 〙 =し(士)
- [初出の実例]「Ii(ジ)。ツワモノ〈訳〉兵士。例、ユミャウノ jiuo(ジヲ) メシグス」(出典:日葡辞書(1603‐04))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
普及版 字通
「士」の読み・字形・画数・意味
士
常用漢字 3画
[字音] シ
[字訓] おとこ・つわもの
[説文解字]
[金文]
[その他]
[字形] 象形
鉞(まさかり)の刃部を下にしておく形。その大なるものは王。王・士ともにその身分を示す儀器。〔説文〕一上に「事(じ)なり」と畳韻を以て解し、「數は一に始まり、十にる。一と十とに從ふ。孔子曰く、十を推して一に合するを士と爲す」と孔子説を引くが、当時の俗説であろう。士は戦士階級。は廷礼の執行者。大夫は農夫の管理者。この三者が古代の治者階級を構成した。
[訓義]
1. おとこ、つわもの、戦士、兵士。
2. 朝廷に出仕するもの、士、官吏、役人。
3. 獄官、裁判官。
4. 陪臣、公大夫に仕えるもの。
5. 学徳の立派な人。
6. 下級の官吏、子弟、庶士。
7. 男子の通称、女子の美称。
8. 仕と通じ、つかえる。
9. 事と通じ、こととする。
[古辞書の訓]
〔名義抄〕士 ヲノコ・ヲトコ・コト・ヒト・ツカフ/壯士 タケキヒト
[部首]
〔説文〕〔玉〕ともに壻・壯(壮)・の三字をこの部に属する。他に、在も士に従い、才(さい)声の字である。
[語系]
士・仕・事dzhiは同声。(史)shiも声が近い。士・仕は同系。・事も同系。は内祭、他に使して事(まつ)るを事という。
[熟語]
士員▶・士官▶・士気▶・士規▶・士議▶・士郷▶・士伍▶・士行▶・士子▶・士史▶・士儒▶・士衆▶・士庶▶・士女▶・士臣▶・士紳▶・士人▶・士姓▶・士籍▶・士節▶・士操▶・士則▶・士族▶・士卒▶・士田▶・士徒▶・士馬▶・士品▶・士夫▶・士風▶・士兵▶・士望▶・士民▶・士名▶・士友▶・士流▶・士力▶・士林▶・士倫▶・士類▶・士列▶・士論▶
[下接語]
遺士・隠士・韻士・英士・鋭士・衛士・下士・佳士・家士・雅士・魁士・学士・寒士・奇士・騎士・義士・吉士・窮士・狂士・士・恭士・僑士・驕士・曲士・軍士・士・傑士・健士・賢士・顕士・元士・彦士・孤士・居士・巧士・甲士・恒士・貢士・高士・豪士・国士・才士・材士・策士・死士・志士・儒士・秀士・術士・俊士・処士・庶士・女士・将士・上士・信士・紳士・進士・人士・正士・清士・説士・碩士・節士・戦士・善士・壮士・造士・俗士・多士・大士・達士・談士・中士・朝士・直士・通士・闘士・同士・道士・能士・博士・美士・貧士・武士・伏士・文士・兵士・弁士・方士・髦士・名士・猛士・士・門士・勇士・吏士・力士・良士・烈士・廉士・浪士
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
士
し
周代の天子諸侯に仕え,治者階級の一員として卿 (けい) ・大夫 (たいふ) の下に位置した身分
のち官吏を中心とする読書人・知識人をさした。
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の士の言及
【軍制】より
… 7世紀中葉の大化改新以後,中央集権国家建設の事業が進められ,8世紀初めには中国にならった日本の律令国家の体制が完成する。律令制のもとでは全人民が戸籍を通じて国家に掌握され,役務の一つとして成年男子のなかから徴発された[兵士](ひようじ)が[軍団]に勤務した。これは当時の東アジア情勢の緊迫に対処して,国家的な常備軍の編成をめざしたものと考えられる。…
【士農工商】より
…江戸時代の社会を構成した主要な身分である武士,百姓,職人,商人を指す言葉。四民ともいう。…
【春秋戦国時代】より
…この間上記の春秋の大国のうち曹が前487年宋に,陳が前478年楚に併合された。一方諸国内では大夫が諸侯を抑え,さらに士が大夫を制するといった下剋上の気風が強まり,魯では孟孫・叔孫・季孫の三大夫の家が国政を左右し,一時は季孫氏の臣であった陽虎が政権を握った。北方の大国晋でも,韓,魏,趙,知,范,中行の6氏が強大となり,晋侯の力は失われ,前453年に,韓,魏,趙の3氏が晋を分割し,前403年に周王より正式に諸侯と承認され,また斉では陳からの亡命大夫田氏が斉侯を凌駕し,前386年には完全に国を奪い,斉侯として周王に認められた。…
【戦争】より
…これは北の世界での〈平和〉と南の世界での〈戦争〉を併存させるという奇妙な時代を画し,戦争の性格をこれまでになく本質的に変容させた。
[革命の戦争]
17~18世紀までの君主間の戦争は,王に対して直接的な関係をもつ貴族からなる〈将校〉と,ヨーロッパ全土から強制徴募か懸賞金で召集された〈下士卒〉とに厳格に分かれた,階層的構造をもつ専門家の軍隊によって,一地方の併合や保持といった王朝的利益のために,一定の対決の規則にもとづいて行われる限定的なゲームでしかなかった。それは形式を重視し,殺戮(さつりく)の少ない,どちらかといえば遊戯的機能をもつ戦争であった。…
【中国】より
…しかしながら,多少とも儒教というものに知識をもつ人であれば,この感懐もまた不思議以外の何物でもあるまい。乃木将軍の死は武士道の精華とこそいうべきであろうが,どう考えても儒教的ということはできないように思われる。君父に対するいかに深い哀痛であろうとも,それを礼によって抑制して〈性を滅せしめない〉のこそ儒教の教えであった。…
※「士」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」