日本大百科全書(ニッポニカ) 「羅生門(能)」の意味・わかりやすい解説
羅生門(能)
らしょうもん
能の曲目。五番目物。五流現行曲。観世信光(かんぜのぶみつ)作。春雨の夜、源頼光(よりみつ)(ワキツレ)の館(やかた)では酒宴が開かれている。羅生門に鬼が出るという噂(うわさ)の実否について、平井保昌(やすまさ)(ワキツレ)と渡辺綱(わたなべのつな)(ワキ)は激しく論争する。豪雨の中に実地検証に向かった渡辺綱(後ワキ)の兜(かぶと)を鬼神(シテ)がつかむが、渡辺綱は鬼神の腕を斬(き)り、鬼神は空に逃れ去る。シテが後半だけに登場し、しかも謡(うたい)がまったくないという異色の能であるが、前後の緊迫した対話、後段の闘争の対比が優れている。ワキ方で重く扱われ、上演はまれである。
[増田正造]
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