船主(読み)せんしゅ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ふなぬし。船の持ち主。商船、漁船を問わず船舶所有者をさすが、船会社や海運企業の通称でもあり、海運取引における運航業者に対する貸渡(かしわたし)業者(船舶所有者、オーナーowner)の別称としても使われている。船主はおおむね船員を雇用する。同一所有者でありながら、所有隻数ごとに所有者名義を分ける場合が多い。大企業はきわめて少なく、零細企業が圧倒的に多い。所有船舶が1隻で、家族船員とともに自らも乗り組む船主を、船主船長、または一杯(いっぱい)船主という。
 日本の船主は外航船主(近海船主を含む)と内航船主に分かれる。外航船主は、国際海運の無国籍化のもとで、日本船を名目的に所有するだけになり、その所有船舶のほとんどをパナマやリベリアなどの外国船、すなわち便宜置籍船(べんぎちせきせん)として所有している。この便宜置籍船はもとより、日本船においてもフィリピン人をはじめとした外国人船員が雇用されており、日本人船員は船長、機関長など管理職員が配置されるにとどまっている。ただ、内航船主は日本人船員が乗り組む日本船を所有している。
 外航船主にあっては、1990年代、企業合併が大規模に進み、日本郵船(株)、商船三井(株)、川崎汽船(株)という、ごく少数の大手運航業者が業界を支配する体制となった。これらの業者は国内外の船主を貸渡業者として傘下に収め、日本全体の運賃収入の3分の2以上を受け取っており、ほかの船主との格差はきわめて大きい。内航船主はその数が非常に多く、しかもそのほとんどが主として中国、四国、九州地方に居住する一杯船主であり、また貸渡業者として、かなりの数の荷主系列や外航船主系列の運航業者の傘下に入っている。いずれにおいても、運航業者が、荷主と取引して、輸送サービスを行っている。
 こうした外航船主の便宜置籍船化や外国人船員雇用、そして海上輸送における多重構造は、長年にわたる海運政策に基づいて築かれたものである。
 なお、有力な外航や内航船主は(社)日本船主協会に所属している。[篠原陽一]
『篠原陽一・雨宮洋司編著『現代海運論』(1991・税務経理協会) ▽武城正長編著『国際交通論』(1998・税務経理協会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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