補償(読み)ほしょう(英語表記)compensation

翻訳|compensation

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

補償(心理学)
ほしょう
compensation

一般的には、全体としてのシステムが欠如した部分を補い、全体としてよりよい機能を維持しようとする傾向のことをいう。アドラーの個人心理学では、身体的諸器官、たとえば感覚器官の欠陥や弱さは心理的に補償されると考えられる。デモステネスは言語障害であったが雄弁家に、フランクリン・ルーズベルトは小児麻痺(まひ)を克服して大統領になったという。身体的器官に限らず、なんらかの欠点、弱さからおきてくる劣等感は、補償され優越感を求めようとする。劣等感が強すぎると過補償がおこり、かえって問題が生じることになる。ユングの分析心理学では、補償は心的構造の内部に働く無意識的な調整機能であり、夢の最大の機能は意識に対する補償作用である。補償の概念は、基本的には生物を全体として統一のとれた組織とみなし、部分が全体に規定されていることを前提にする。ピアジェの発生的認識論では、保存の概念の獲得にとって肝要な心的操作で、補償によって全体が均衡化するものと考えられる。補償が生じなければ全体としての同一性は失われ異質のものとなってしまう。[外林大作・川幡政道]
『アルフレッド・アドラー著、安田一郎訳『器官劣等性の研究』(1984・金剛出版) ▽C・G・ユング著、林道義訳『タイプ論』(1987・みすず書房) ▽ジャン・ピアジェ著、滝沢武久訳『発生的認識論』(白水社・文庫クセジュ)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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