出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
人に損害が生じたとき,だれかが金銭でその損害を埋め合わせることを広く補償と称しており,不法行為による損害賠償を含めていう場合もあるが,多くは除外して補償と呼ぶ。その場合にもいろいろの用法がある。まず,天災その他の偶発事故によって財産上の損害をこうむるとき,国などから支払われる災害補償がある。さらにそのなかには,タバコ栽培などで損害を受けた者に支払われることになっていた,旧〈たばこ専売法〉24条に基づく農業災害補償(なお,現行のたばこ事業法(1984)6条,および附則5条参照)もあれば,労働者や公務員が業務上の原因で傷害,疾病,死亡といった事態におちいった場合に支払われる療養のための費用や遺族に対する扶助料も含まれる。さらに,災害救助のために支出した費用をあとで償う場合にも補償という言葉を用いることもあるが,これは,職務上浪費させた費用を償う〈弁償〉とも類似しているので,これを広く弁償という概念に入れる人もいる。しかし,補償をもっとも一般的に用いるのは,財産権を公共のために用いる(公用負担)とき支払われる損失補償をさす場合である。かかる場合には,憲法29条3項に基づいて正当な補償が支払われなければならぬ。さらに抑留または拘禁をうけたものが無罪になったとき支払われる刑事補償も補償のなかに含められる。
このようにいろいろの種類の補償があるが,その根拠は,ある特定の人だけが,自分の責任ではないのに損害を受け,それを自分の負担で埋め合わせることになると,私有財産制を敷いている社会では人々の生存が危うくなる場合も生じうるので,その負担を社会に分散させようとするところに由来するといわれている。しかし,補償金を支える基金にも限度があるので,個々の法令でその補償の支給条件を規定しているのが通例である。
執筆者:下山 瑛二
人間の適応のための心的機制の一つ。もともとA.アードラーによって特に重視された概念である。アードラーは人間がすべて劣等感コンプレクスをもっていると考えるが,それを克服する上で,補償の心理機制が働くと主張した。その際,劣等な部分そのものを克服する型と,劣等な部分をそれと対照的な価値を実現することによって克服する型とがある。たとえば,病弱を克服してスポーツマンとなるのが前者であり,病弱を学問に専念することによって補償するのは後者の型である。いずれも,過補償という危険が存在している。一方ユングは,人間の無意識が意識の一面性をつねに補償する傾向をもつことに注目した。たとえば,意識の態度が外(内)向的な人は,無意識的には内(外)向的であるという。このような意識と無意識の補償作用によって,人間の心は全体的な調和と均衡を保っていると,ユングは考えている。
執筆者:河合 隼雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… またセンサーの特性が測定量以外の,例えば周囲温度の影響を受けるとき,その影響を打ち消した測定値を得るのにも何回かの,あるいは何種類かの測定を行う必要がある。この周囲温度のように測定量以外の,影響を受けたくない物理量の影響を消すことを補償compensationという。周囲温度の影響を打ち消すときは温度補償という。…
※「補償」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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