許す(読み)ユルス

デジタル大辞泉 「許す」の意味・読み・例文・類語

ゆる・す【許す】

[動サ五(四)]《「ゆる」「ゆる」と同語源》
(「聴す」とも書く)不都合なことがないとして、そうすることを認める。希望や要求などを聞き入れる。「外出が―・される」「営業を―・す」
(「赦す」とも書く)過失や失敗などを責めないでおく。とがめないことにする。「あやまちを―・す」
(「赦す」とも書く)義務や負担などを引き受けなくて済むようにする。免除する。「税を―・す」「兵役を―・す」
相手がしたいようにさせる。まかせる。「追加点を―・す」「わがままを―・す」「肌を―・す」
そうするだけの自由を認める。ある物事を可能にする。「楽観は―・されない」「時間が―・せば」「事情の―・すかぎり」
警戒や緊張状態などをゆるめる。うちとける。「気を―・す」「心を―・した友」
高い評価を与える。世間が認める。「自他ともに―・すその道の大家
引き張ったものをゆるめる。
「猫の綱―・しつれば」〈・若菜上〉
捕らえたものを逃がす。
「つととらへて、さらに―・し聞こえず」〈紅葉賀
[可能]ゆるせる
[下接句]気を許す葷酒くんしゅ山門に入るを許さず心を許す自他共に許す仙籍を許す肌を許す
[類語]許可認可勘弁容赦裁可特許宥恕聴許黙許批准免許許諾承認認許允許いんきょ允可いんか容認許容裁許公許官許許しオーケーライセンス認める堪忍寛恕海容目こぼし見て見ぬふり見逃す見過ごす大目に見る目をつぶる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「許す」の意味・読み・例文・類語

ゆる・す【許・赦・聴・緩】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙 ( 「ゆる(緩)」「ゆるい(緩)」と同語源 )
  2. 引き張ったものをゆるめる。
    1. [初出の実例]「梓弓引きて許(ゆるさ)ずあらませばかかる恋には逢はざらましを」(出典万葉集(8C後)一一・二五〇五)
    2. 「猫の綱ゆるしつれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜上)
  3. 捕えたものを逃がす。解放する。また、身からはなす。
    1. [初出の実例]「夕猟(ゆふかり)に 千鳥踏み立て 追ふごとに 由流須(ユルス)ことなく」(出典:万葉集(8C後)一七・四〇一一)
    2. 「かの脇指を、肌身をゆるさずさしもって」(出典:御伽草子・唐糸草子(室町末))
  4. 罪、とが、あやまち、欠点などをとがめないですませる。また、罰したものを赦免する。釈放する。
    1. [初出の実例]「其の過失造るを縦(ユルセ)らむときには」(出典:西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八)
    2. 「かしこまりゆるされて、もとのやうになりにき」(出典:枕草子(10C終)九)
  5. ある行為をさしつかえないとして許可する。禁を解く。
    1. [初出の実例]「官(つかさ)にも縦(ゆるし)たまへり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ」(出典:万葉集(8C後)八・一六五七)
    2. 「往来の回廊には商賈を縦(ユル)し、果物器翫彩影新聞紙等を肆ねて店をはる」(出典:米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一)
  6. 気持をゆるめる。また、相手を信頼し、うちとける。→心(こころ)を許す
    1. [初出の実例]「臣(おみ)の子の 八重の唐垣 瑜屡世(ユルセ)とや御子(みこ)」(出典:日本書紀(720)武烈即位前・歌謡)
    2. 「なさけは交しながら、心をばゆるさず」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)三)
  7. 願いを聞き入れる。聞き届ける。
    1. [初出の実例]「将軍等、共に議りて表を上る。天皇聴(ユルシ)たまふ」(出典:日本書紀(720)推古三一年七月(岩崎本訓))
    2. 「ことしばかりのいとまを申つれど、さらにゆるされぬによりてなむ、かく嘆き侍る」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
  8. 女が男に身をまかせる。→肌(はだ)を許す
    1. [初出の実例]「現在の良人と結婚する一月前に恩師にただ一度許したところが、妊娠した」(出典:話の屑籠〈菊池寛〉昭和六年(1931)九月)
  9. 義務や負担を免ずる。
    1. [初出の実例]「みつぎ物ゆるされて、くに富めるを御覧じて」(出典:新古今和歌集(1205)賀・七〇七・詞書)
  10. すぐれていると認める。
    1. [初出の実例]「固に天に縦(ユルサ)れたり」(出典:日本書紀(720)推古二九年二月(岩崎本訓))
    2. 「女生一般の目から、一人才色双美を以て、成女大学の花と許されて居るくらゐであるが」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春)
  11. 自分やまわりの状態などが、ある物事を行なうことを可能にする。
    1. [初出の実例]「出来ることなら外の処も写したいと云たが時日が許(ユル)さない」(出典:福翁自伝(1899)〈福沢諭吉緒方塾風)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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