(読み)ウタタ

デジタル大辞泉 「転」の意味・読み・例文・類語

うたた【転】

[副]
ある状態が、どんどん進行してはなはだしくなるさま。いよいよ。ますます。転じて、そうした状態の変化を前にして心が深く感じ入るさまにいう。「同情の念に堪えない」
(「うたたあり」の形で)不快な感じをもたらすさま。嫌な気を起こさせるように。ひどく。
「花と見て折らむとすれば女郎花をみなえし―あるさまの名にこそありけれ」〈古今・雑体〉
「いと―あるまで世を恨み給ふめれば」〈・手習〉
[類語](1ましてなおさらいわんやさらに余計一層もっとますますいよいよよりも少しもう少しずっとなお一段いやが上に数段段違い層一層しのぐもそっと今少しぐんとぐっとうんとだいぶ余程遥かひとしお尚尚なおなおなお以て更なるひときわいや増すなお且つかてて加えてそれどころそればかりかしかのみならずのみならず加うるにおまけにまた且つまた且つこの上その上しかもさてはさなきだに

てん【転〔轉〕】[漢字項目]

[音]テン(呉)(漢) [訓]ころがる ころげる ころがす ころぶ まろぶ うたた
学習漢字]3年
くるくる回る。ころがる。ころがす。「転転運転回転空転自転旋転輪転
ひっくり返る。ころぶ。「転倒転落横転
方向を変える。変わる。変化する。「転化転換転義転向転身暗転急転好転変転
場所を変える。移る。移す。「転移転記転居転校転写転出移転栄転
[名のり]ひろ
難読転寝うたたね

うたて【転】

[副]
自分の心情とは関係なく、事態がどんどん進んでいくさま。ますます。
「いつはなも恋ひずありとはあらねども―このころ恋し繁しも」〈・二八七七〉
事の成り行きが、心に適わないとして嘆くさま。つらく。情けなく。
「からくして思ひ忘るる恋しさを―なきつる鶯の声」〈大和・一〇五〉
事態が普通でないさま。いやに。異様に。
「散ると見てあるべきものを梅の花―にほひの袖にとまれる」〈古今・春上〉
[形動ナリ]はなはだよくない。情けない。
「―なりける、心なしの痴れ者かな」〈宇治拾遺・二〉

ころ【転】

重い物を動かすとき、下に敷いて移動しやすいようにする丸い棒。くれ。ごろた
短く切った薪材。割り木。
さいころ
ころぜに」の略。
尺八で、他の指孔を開き、1孔と2孔を交互に指で打つ奏法。
多く複合語の形で用い、丸いもの、小さいもの、の意を表す。「石ころ」「犬ころ

てん【転】

音韻または語の意味が変化すること。また、変化したもの。「『紺屋こうや』は『こんや』の
漢詩で、「転句」の略。「起承結」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「転」の意味・読み・例文・類語

ころび【転】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ころぶ(転)」の連用形名詞化 )
  2. ころぶこと。倒れること。転じて、失敗すること。
    1. [初出の実例]「お玉は衣(べべ)をお脱なら爰へおよこし。ソレ、お転(コロビ)でないよ」(出典滑稽本浮世風呂(1809‐13)二)
  3. 江戸時代、弾圧を受けたキリシタンが、改宗して仏教徒になること。また、その者。ころびの者。ころびキリシタン。
    1. [初出の実例]「いやなから・ころびの娘尼になる」(出典:雑俳・馬たらひ(1700))
  4. ころびげいしゃ(転芸者)」の略。
    1. [初出の実例]「げいしゃも男はかくべつ、女子はころびはをりと分るといへども」(出典:洒落本・契国策(1776)東方)
  5. ころびちゃや(転茶屋)」の略。
    1. [初出の実例]「十八町の内ころびでないのは、数ゆる程ほかござりませぬ」(出典:洒落本・婦美車紫(1774)高輪茶屋の段)
  6. 柱などの材を垂直線から傾けて造ること。

うたた【転】

  1. 〘 副詞 〙
  2. 状態がどんどん進行していっそうはなはだしくなる意を表わす。いよいよ。ますます。なおいっそう。うたうた。
    1. [初出の実例]「転々(ウタタ)軽微なり」(出典:大智度論平安初期点(850頃か)二六)
    2. 「其の後は徒衆転(ウタタ)多ければ得法転少きと言へり」(出典:雑談集(1305)九)
  3. ( 「うたてあり」の転か。多く、「うたたある」の形で ) 状態の異常さに心を動かす意を表わす。いやな気を起こさせるように。意外にも。ひどく。変に。
    1. [初出の実例]「花と見て折らんとすれば女郎花うたたあるさまの名にこそありけれ〈よみ人しらず〉」(出典:古今和歌集(905‐914)雑体・一〇一九)
    2. 「例の人にてはあらじと、いとうたたあるまで世を恨み給ふめれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)手習)

転の語誌

平安初期、「転」「転々」をウタタ・ウタウタと訓じるが、「観智院本名義抄」などは「転」をイヨイヨとも訓んでいる。事態がどんどん進むさまを表わすが、多くは、そのことに否定的、批判的な気持を伴う。


ころ【転】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 重い物を動かすとき下に敷く、堅く丸い棒。回転させて物の移動を容易にする。ごろた。機械の軸受け、コンベヤなどの転動体をもいう。
      1. [初出の実例]「前後に真棒を貫(さし)て其れに松の木を輪截(わぎり)にしたる歯を穿ちて輾(コロ)となし」(出典:最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉四)
    2. 細くて短い薪材。割木や材木屑などをもいう。
    3. 骰子(さいころ)
    4. 芸妓
    5. いとくりぐるま(糸繰車)」の俗称。
    6. 尺八の奏法の一種。他の穴を開き、一穴と二穴を交互に指で打ちながら奏すること。
  2. [ 2 ] 〘 造語要素 〙 ( ころころしたものをいうところから ) 丸いもの、小さいものを形容していう。「いぬころ」「ちんころ」「あんころ」など。

ころばし【転】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「ころばす(転)」の連用形の名詞化 )
  2. ころばすこと。ころばかし。
  3. 重量があるものを他所へ動かす時に、下部に敷いて動かしやすくするための丸い棒または鉄製の管など。ころ。〔書言字考節用集(1717)〕
  4. 芋の子などを焦げないように煮ること。また、そのもの。ころ煮。煮ころばし。
    1. [初出の実例]「ころばしは息をする間もなかりけり」(出典:雑俳・口よせ草(1736))
  5. 和船の車立(しゃたつ)や指天(さしあま)の頂部にある「ころ」のこと。胴。車。巻胴。〔和漢船用集(1766)〕
  6. 小豆(あずき)の餡(あん)の中にころがして外側に餡をつけた餠。あんころもち。
    1. [初出の実例]「あの境内の水茶屋で、大ころばしを喰はせう程に、早うおぢゃおぢゃ」(出典:歌舞伎・御摂勧進帳(1773)四立)

ころがし【転】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 動詞「ころがす(転)」の連用形の名詞化 ) ころがすこと。ころばし。
  3. ころがしづり(転釣)」の略。
    1. [初出の実例]「厳重に禁じられている『ころがし』も見張らなければならない」(出典:青べか物語(1960)〈山本周五郎〉貝盗人)
  4. トンネルなどで、落盤を防ぐために天井に架け渡す丸太材。押木(おさえぎ)
  5. 値段をつり上げるために何度も転売をすること。「土地ころがし」

てん【転】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 音韻が変化すること。また、語の意味が変わること。
    1. [初出の実例]「南州をば贍(せん)部と云〈又閻浮提云、同ことばの転也〉」(出典:神皇正統記(1339‐43)上)
  3. てんく(転句)
    1. [初出の実例]「第三句を転(テン)と云」(出典:授業編(1783)七)

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