零す(読み)コボス

デジタル大辞泉 「零す」の意味・読み・例文・類語

こぼ・す【零す/翻す/×溢す】

[動サ五(四)]
容器を、うっかりひっくり返したり傾けたりして、中に入っている物を外に出してしまう。また、液体粉末粒状のものを容器などからあふれさせたり、物の間から漏らしたりして外へとり落とす。「水を―・す」「御飯を―・す」「あせって返球を―・してしまう」
涙などを不覚にも落とす。「思わず涙を―・す」「よだれを―・す」
うれしさなどの感情を表に出す。「笑みを―・す」
不満や泣き言などを胸に収めておけないでつい人に言ってしまう。ぶつぶつ言って訴える。「愚痴を―・す」「仕事がつまらないと―・す」
すきまから外へはみ出るようにする。見えるようにする。
「色々のきぬども―・し出でたる人の」〈・七六〉
[可能]こぼせる
[類語](4ぶうぶうなんのかのとやかくなんだかんだどうのこうの減らず口ごねるごてるくねるああ言えばこう言う言葉を返す異を唱えるけちを付けるぼやく愚痴る愚痴っぽいかこつ愚痴をこぼす不平を鳴らす不平を並べる御託を並べる

あや・す【零す】

[動サ四]血・汗などを滴らせる。流す。こぼす。
「血を―・して婆羅門に飲ましめ」〈今昔・四・一七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「零す」の意味・読み・例文・類語

こぼ・す【零・翻】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙
  2. ある物の上に液体や粒状のものを流し落とす。また、ひっくり返したりあふれさせたりして容器の中の液体や粒状のものを流れ出させたり落としたりする。
    1. [初出の実例]「庭に顛仆(たふ)れて、擎げる所の饌(みけつもの)を覆(コボ)しつ」(出典:日本書紀(720)雄略一二年一〇月(前田本訓))
    2. 「雪こぼすがごと降りて、ひねもすにやまず」(出典:伊勢物語(10C前)八五)
  3. 表情や態度にあふれさせ表わす。思わず笑顔などをみせる。
    1. [初出の実例]「そのなわてにわ愛敬こほすな」(出典:歌謡・田植草紙(16C中‐後)晩哥二番)
  4. 愚痴を言う。苦情を言う。ぼやく。
    1. [初出の実例]「愚痴の一百(いっそく)五十ばかりもこぼしぬいて」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一)
  5. 連歌俳諧で、定座(じょうざ)(=よむように定められた位置)よりもあとに月の句をよむ。月、花の句は定座によむことを原則としているが、月の句については定座より後に出すことも認められる。
    1. [初出の実例]「月の定座をこぼす事」(出典:俳諧・三冊子(1702)白双紙)

あや・す【零】

  1. 〘 他動詞 サ行四段活用 〙 ( 「あゆ(零)」の他動詞形 )
  2. 血や汗などをしたたらす。ぽたぽたとたらす。
    1. [初出の実例]「爪もとより血をさしあやして」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)
    2. 「父のかばねに血をあやさん事も心うし」(出典:平家物語(13C前)一〇)
  3. 果実などを落とす。〔日葡辞書(1603‐04)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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