(読み)サギ

デジタル大辞泉 「鷺」の意味・読み・例文・類語

さぎ【×鷺】

ペリカン目サギ科の鳥の総称。くちばし・くび・脚が長い。飛ぶときにくびを乙字形に曲げる。水辺にすみ魚を捕食するが、草原や森林にすむもの、昆虫などを常食とするものもある。62種が極地・砂漠を除く世界各地に分布。白いダイサギコサギアオサギゴイサギなど。
[補説]曲名別項。→
[類語]白鷺小鷺中鷺大鷺五位鷺青鷺

ろ【鷺】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ロ(漢) [訓]さぎ
鳥の名。サギ。「烏鷺うろ朱鷺しゅろ白鷺
[難読]朱鷺とき

さぎ【鷺】[謡曲]

謡曲。四番目物。帝の命で鷺を捕らえようとした蔵人くろうどが「勅諚ちょくじょうぞ」と言うと、鷺は自ら地に伏したので、帝は蔵人と鷺とを五位に叙する。元服前の少年か還暦後の老人が直面ひためんで演じる。

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精選版 日本国語大辞典 「鷺」の意味・読み・例文・類語

さぎ【鷺】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. サギ科に属する鳥の総称。嘴(くちばし)、頸(くび)、脚(あし)が長くツルに似ているが、やや小さく、飛ぶときにはツルと違って頸を乙字形にまげる。目の周囲は裸出し、尾羽が短い。繁殖期には頭上の羽毛が後方に長くのびて羽冠を形成。ふつう樹上に巣を作り、水田、川沼などで魚、カエル、水生昆虫を食べる。アオサギ、ゴイサギ、クロサギササゴイ、ダイサギ、チュウサギ、コサギなど種類が多い。形態が似ているトキ科のヘラサギなどを含めていうこともある。雪客(せっかく)。《 季語・春 》
      1. [初出の実例]「鷺(さき)を掃持(ははきもち)と為、翠鳥(そにどり)を御食人(みけびと)と為」(出典:古事記(712)上)
      2. 「さぎは、いとみめも見ぐるし」(出典:枕草子(10C終)四一)
    2. さぎりゅう(鷺流)」の略。
      1. [初出の実例]「入間川の狂言にふしん有、〈略〉此御ふしんは、さぎにも、御尋なされけれども、御へんたうなかりしよし被仰し也」(出典:わらんべ草(1660)一)
  2. [ 2 ] 能楽の曲名。五番目物。各流。作者未詳。帝の命で神泉苑に下り立つ鷺を捕えようとした蔵人が「勅諚(ちょくじょう)ぞ」と言うと、鷺は羽を垂れ地に伏した。帝は御感のあまり蔵人と鷺を五位に叙したというもので、「平家物語」を典拠とする。シテは元服前の少年か還暦を過ぎた老人が直面(ひためん)で演じる。

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普及版 字通 「鷺」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 24画

[字音]
[字訓] さぎ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は路(ろ)。〔説文〕四上に「白鷺なり」とあり、〔韓詩章句〕に「白の鳥なり」とする。〔詩、周頌、振鷺〕は、殷の余裔が周に白鷺の舞を献ずることを歌い、〔詩、陳風、宛丘〕に「其の鷺を値(た)つ」とあって、祭のほか、(かがい)などのときにも鷺羽をもって舞うことがあったようである。漢の旧鼓吹曲にも、朱鷺曲というものがあった。

[訓義]
1. さぎ、しろさぎ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕鷁~鷺 十字、皆、佐(さぎ) 〔和名抄〕鷺 佐岐(さぎ)〔名義抄〕鷺 サギ・シラサギ・ミトサギ/蒼鷺 ミトサギ 〔字鏡〕鷺 シロキミヅドリ・ミトサギ・サギ

[熟語]
鷺羽・鷺影・鷺沙鷺序鷺汀鷺濤・鷺・鷺約
[下接語]
鷺・烏鷺・鷺・鷺・江鷺・沙鷺・朱鷺・渚鷺・翔鷺・振鷺・睡鷺・雪鷺・汀鷺・田鷺・白鷺・飛鷺・眠鷺・幽鷺・鸞鷺・立鷺

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改訂新版 世界大百科事典 「鷺」の意味・わかりやすい解説

鷺 (さぎ)

能の曲名。四番目物。作者不明。シテは鷺。夏の夕方,帝(ツレまたは子方)が群臣(ワキヅレ)を連れて神泉苑に赴き,池辺で涼をとっていると,白鷺が一羽下り立つ。蔵人(くらんど)(ワキ)に命じて捕らえさせると,一度は飛び立ったが,勅諚(ちよくじよう)であると言葉を掛けるとふたたび下りて来て,静かに抱き取られた。帝はそのようすに感じ入り,鷺にも蔵人にも五位の位を授ける。鷺は喜ばしげにあたりを舞い巡っていたが(〈鷺ノ乱レ〉),許されて空高く飛び去る。乱レの舞が中心。この乱レは《猩々(しようじよう)》の乱レとはまったく別曲。シテの動きには,抜き足などの特殊な所作によって鷺の姿態を模すところがあるが,それがねらいではなく,清純淡泊で超人間的な趣を出すことを主眼とする。そのために,原則として少年または還暦過ぎの老人だけが演じ,面も着けない。扮装は白ずくめの装束で,白髪の上に鷺の形を乗せた冠を頂く。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鷺」の意味・わかりやすい解説


さぎ

能の曲目。四番目物。五流現行曲。ただし金春(こんぱる)流は昭和の復曲。作者不明。生きた鳥そのものをシテとした特殊な曲。帝(みかど)(ツレあるいは子方)は、群臣を引き連れて神泉苑(しんせんえん)へ夕涼みの行幸の態。池のほとりに降り立った白鷺をとってまいれとの勅命が下りる。蔵人(くらんど)(ワキ)は飛び立つ鷺(シテ)に「勅諚(ちょくじょう)ぞ」と呼びかけ、鷺をとらえて帝の前に連れていく。帝は蔵人と鷺に、ともに五位の位を授け、放たれた鷺は喜びの舞を舞う。「鷺乱(さぎみだれ)」という、この能独自の軽やかな舞である。元服前の少年か、還暦あるいは古稀(こき)を過ぎた老人に限って演ずるしきたりが古来から守られている。白一色の清浄さを尊ぶがゆえである。中年の演者が例外的に勤める場合は、素顔でなく延命冠者(かじゃ)の面をかける。海外能でもよく上演される、バレエ風の楽しい能。

[増田正造]

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鷺」の解説

鷺 (サギ)

動物。サギ科に属する鳥の総称

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【延喜聖代】より

…位クドキは秘曲にしかない曲節。この段は普通の《平家物語》にないが,鷺の件は《朝敵揃》の末部に含まれていて,詞章も節付けもほとんど同じである。能《》の原拠。…

※「鷺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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