(読み)さぎ

精選版 日本国語大辞典 「鷺」の意味・読み・例文・類語

さぎ【鷺】

[1] 〘名〙
サギ科に属する鳥の総称。嘴(くちばし)、頸(くび)、脚(あし)が長くツルに似ているが、やや小さく、飛ぶときにはツルと違って頸を乙字形にまげる。目の周囲は裸出し、尾羽が短い。繁殖期には頭上の羽毛が後方に長くのびて羽冠を形成。ふつう樹上に巣を作り、水田、川沼などで魚、カエル、水生昆虫を食べる。アオサギゴイサギクロサギササゴイダイサギチュウサギコサギなど種類が多い。形態が似ているトキ科のヘラサギなどを含めていうこともある。雪客(せっかく)。《季・春》
※古事記(712)上「鷺(さき)を掃持(ははきもち)と為、翠鳥(そにどり)を御食人(みけびと)と為」
※枕(10C終)四一「さぎは、いとみめも見ぐるし」
② 「さぎりゅう(鷺流)」の略。
※わらんべ草(1660)一「入間川の狂言にふしん有、〈略〉此御ふしんは、さぎにも、御尋なされけれども、御へんたうなかりしよし被仰し也」
[2] 能楽曲名。五番目物。各流。作者未詳。帝の命で神泉苑に下り立つ鷺を捕えようとした蔵人が「勅諚(ちょくじょう)ぞ」と言うと、鷺は羽を垂れ地に伏した。帝は御感のあまり蔵人と鷺を五位に叙したというもので、「平家物語」を典拠とする。シテは元服前の少年か還暦を過ぎた老人が直面(ひためん)で演じる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「鷺」の意味・読み・例文・類語

さぎ【×鷺】

ペリカン目サギ科の鳥の総称。くちばし・くび・脚が長い。飛ぶときにくびを乙字形に曲げる。水辺にすみ魚を捕食するが、草原や森林にすむもの、昆虫などを常食とするものもある。62種が極地・砂漠を除く世界各地に分布。白いダイサギコサギアオサギゴイサギなど。
[補説]曲名別項。→
[類語]白鷺小鷺中鷺大鷺五位鷺青鷺

ろ【鷺】[漢字項目]

人名用漢字] [音]ロ(漢) [訓]さぎ
鳥の名。サギ。「烏鷺うろ朱鷺しゅろ白鷺
[難読]朱鷺とき

さぎ【鷺】[謡曲]

謡曲。四番目物。帝の命で鷺を捕らえようとした蔵人くろうどが「勅諚ちょくじょうぞ」と言うと、鷺は自ら地に伏したので、帝は蔵人と鷺とを五位に叙する。元服前の少年か還暦後の老人が直面ひためんで演じる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「鷺」の意味・わかりやすい解説

鷺 (さぎ)

能の曲名。四番目物。作者不明。シテは鷺。夏の夕方,帝(ツレまたは子方)が群臣ワキヅレ)を連れて神泉苑に赴き,池辺で涼をとっていると,白鷺が一羽下り立つ。蔵人(くらんど)(ワキ)に命じて捕らえさせると,一度は飛び立ったが,勅諚(ちよくじよう)であると言葉を掛けるとふたたび下りて来て,静かに抱き取られた。帝はそのようすに感じ入り,鷺にも蔵人にも五位の位を授ける。鷺は喜ばしげにあたりを舞い巡っていたが(〈鷺ノ乱レ〉),許されて空高く飛び去る。乱レの舞が中心。この乱レは《猩々(しようじよう)》の乱レとはまったく別曲。シテの動きには,抜き足などの特殊な所作によって鷺の姿態を模すところがあるが,それがねらいではなく,清純淡泊で超人間的な趣を出すことを主眼とする。そのために,原則として少年または還暦過ぎの老人だけが演じ,面も着けない。扮装は白ずくめの装束で,白髪の上に鷺の形を乗せた冠を頂く。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鷺」の意味・わかりやすい解説


さぎ

能の曲目。四番目物。五流現行曲。ただし金春(こんぱる)流は昭和の復曲。作者不明。生きた鳥そのものをシテとした特殊な曲。帝(みかど)(ツレあるいは子方)は、群臣を引き連れて神泉苑(しんせんえん)へ夕涼みの行幸の態。池のほとりに降り立った白鷺をとってまいれとの勅命が下りる。蔵人(くらんど)(ワキ)は飛び立つ鷺(シテ)に「勅諚(ちょくじょう)ぞ」と呼びかけ、鷺をとらえて帝の前に連れていく。帝は蔵人と鷺に、ともに五位の位を授け、放たれた鷺は喜びの舞を舞う。「鷺乱(さぎみだれ)」という、この能独自の軽やかな舞である。元服前の少年か、還暦あるいは古稀(こき)を過ぎた老人に限って演ずるしきたりが古来から守られている。白一色の清浄さを尊ぶがゆえである。中年の演者が例外的に勤める場合は、素顔でなく延命冠者(かじゃ)の面をかける。海外能でもよく上演される、バレエ風の楽しい能。

[増田正造]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「鷺」の解説

鷺 (サギ)

動物。サギ科に属する鳥の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android