黒木(読み)クロキ

デジタル大辞泉 「黒木」の意味・読み・例文・類語

くろ‐き【黒木】

《「くろぎ」とも》
(古くは「赤木」に対して、のちには「白木」に対して)皮のついたままの丸太。
約30センチの長さに切った生木を、かまどで黒く蒸し焼きにして薪としたもの。京都の八瀬大原でつくられ市中を売り歩いた。
黒檀こくたんの別名。
「―の数珠ずずの小さう美しいをとりいだして」〈平家・一二〉

くろき【黒木】[姓氏]

姓氏の一。
[補説]「黒木」姓の人物
黒木和雄くろきかずお
黒木勘蔵くろきかんぞう

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精選版 日本国語大辞典 「黒木」の意味・読み・例文・類語

くろ‐き【黒木】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「くろぎ」とも )
  2. 皮のついたままの丸太。製材してない皮付きの材木。くれ。くろぼく。⇔赤木
    1. [初出の実例]「採黒木百八十物〈柱桁間度之類〉」(出典:正倉院文書‐天平宝字六年(762)三月九日・造石山寺所告朔)
  3. 三〇センチメートルぐらいに切った生木をかまどで蒸し焼きにして黒くしたもの。たきぎとして用いる。京都の八瀬、大原あたりでつくられ、大原女(おはらめ)が頭にのせて京都市中を売り歩いた。江戸中期(天明ごろ)にはすでに名ばかりで、普通の粗朶(そだ)であったらしい。大原木(おはらぎ)
    1. [初出の実例]「柴と黒木ぞもてはこびぬる 野の宮の鳥井いがきを改て」(出典:俳諧・犬子集(1633)一二)
  4. ハイノキ科の常緑高木。高さ六~一〇メートル。本州南部、四国、九州、沖縄、台湾に生える。樹皮は帯黒色で平滑、二年枝は紫褐色、一年枝は黄緑色で稜がある。葉は長さ三~八センチメートル、幅一~四センチメートルの倒卵状楕円形で厚い革質、短い柄がある。葉腋(ようえき)に長さ一センチメートルほどの集散花序をつけ、淡黄白色の花を密生する。果実は長さ六~一〇ミリメートルの長楕円形で黒熟する。やまき。くろまき。〔日本植物名彙(1884)〕
  5. 植物「こくたん(黒檀)」の異名。
    1. [初出の実例]「うちながめ給ひて、涙こぼるるをかきはらひ給へる御手つき、くろ木の御すすにはえ給へる」(出典:河内本源氏(1001‐14頃)須磨)
  6. シラビソ、モミ、ツガ、トウヒクロベなどの針葉樹を総称していう。一般に葉は深緑色で遠望すると黒味を帯びてみえる。
    1. [初出の実例]「常磐木では松、杉、檜は、無論の事、俗に黒木と言って、樅(もみ)や栂(つが)や椹(さはら)が多い」(出典:少年行(1907)〈中村星湖〉一)
  7. 植物「まさき(柾)」の異名。〔物類称呼(1775)〕

くろ‐ぼく【黒木】

  1. 〘 名詞 〙くろき(黒木)

くろき【黒木】

  1. 姓氏の一つ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒木」の意味・わかりやすい解説

黒木
くろぎ

福岡県南部、八女郡(やめぐん)にあった旧町名(黒木町(まち))。現在は八女市の中央南部を占める地域。旧黒木町は、1889年(明治22)町制施行。1954年(昭和29)豊岡(とよおか)、串毛(くしげ)、木屋(こや)、笠原(かさはら)の4村と合併。1957年大淵(おおぶち)村を編入。2010年(平成22)、立花(たちばな)町、矢部(やべ)村、星野(ほしの)村とともに八女市へ編入。南は熊本県と接する。石割(平野)岳(942メートル)、姫御前(ひめごぜん)岳(514メートル)などの筑肥山地(ちくひさんち)が広がり、古生層とそれを覆う溶岩台地よりなる。中央部を西流する矢部川と支流の笠原川が北西部に沖積地を形成。国道442号が通じる。中世は黒木氏の城下町として発達したが天正(てんしょう)年間(1573~1592)廃城。近世は谷口集落の商業地として栄えた。主産業は農業で、稲作のほか、茶、ミカンブドウ、カキ、タケノコ、ナスなどの生産が盛んで、とくにミカン栽培の発展が著しい。また杉材生産も盛んである。国指定天然記念物である黒木のフジ、八女茶発祥地といわれる霊巌寺(れいがんじ)と境内の奇岩、日向神(ひゅうがみ)ダム、黒木城跡などがあり、矢部川県立自然公園に属する。

[石黒正紀]

『『黒木町史』(1993・黒木町)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒木」の意味・わかりやすい解説

黒木
くろぎ

福岡県南部,八女市中南部の旧町域。矢部川の上流域,筑肥山地の北斜面に位置する。1889年町制。1954年豊岡村,串毛村,木屋村笠原村の 4村と合体。1957年大淵村を編入。2010年八女市に編入。中心地区の黒木は 12世紀から黒木氏の城下町。江戸時代は柳川藩領となり,城も廃されたが,その後も矢部川の谷口集落として,また大分の鯛生鉱山に通じる街道沿いの市場町として発展。東部は山岳地帯で林業,製材,チャ(茶),たけのこ栽培,西部は平地で米作のほかカキ,ブドウ,クリ,ミカンなどの栽培が盛ん。猫尾城(黒木城)跡,樹齢 700年といわれる素盞鳴神社(すさのおじんじゃ)のフジ(国指定天然記念物),八女茶の発祥地といわれ奇岩で有名な霊巌寺,日向神峡(ひゅうがみきょう)と日向神ダムなどの観光地がある。一部は矢部川県立自然公園に属する。

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百科事典マイペディア 「黒木」の意味・わかりやすい解説

黒木[町]【くろぎ】

福岡県南部,八女(やめ)郡の旧町。大半は溶岩台地で,矢部川上流に小盆地がある。中心集落は中世城下町,近世市場町として発達。米,茶,ミカンの生産,製材業が営まれる。黒木のフジ(天然記念物),八女茶の発祥地と伝えられる霊巌寺がある。2010年2月八女郡立花町,矢部村,星野村と八女市へ編入。135.49km2。1万3615人(2005)。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「黒木」の解説

くろぎ【黒木】

福岡の米焼酎。矢部川源流の伏流水を用いて仕込む。原料は米、米麹。アルコール度数25%。麦焼酎、芋焼酎もある。蔵元の「旭松酒造」は大正5年(1916)創業。清酒「旭松」の醸造元。所在地は八女市黒木町黒木。

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改訂新版 世界大百科事典 「黒木」の意味・わかりやすい解説

黒木(旧町) (くろぎ)

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動植物名よみかた辞典 普及版 「黒木」の解説

黒木 (クロキ)

学名:Symplocos lucida
植物。ハイノキ科の常緑小高木

黒木 (クロキ)

植物。ニシキギ科の常緑小高木,園芸植物,薬用植物。マサキの別称

黒木 (クロギ)

植物。マツ科の常緑針葉高木,高山植物。シラビソの別称

黒木 (クロキ)

植物。カキノキ科の常緑高木。コクタンの別称

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デジタル大辞泉プラス 「黒木」の解説

黒木(くろぎ)

福岡県、旭松酒造株式会社が製造する米、麦、芋焼酎の銘柄。

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世界大百科事典(旧版)内の黒木の言及

【白木・黒木】より

…白木は現代では〈しらき〉と読んで,塗装されていない木材を指すが,古くは樹皮がついたままの木材を指す黒木に対比して,樹皮を取り去った木材を白木と呼んだ。日本の古代建築では,神社や宮殿に白木のヒノキ材が用いられ,その美しい木肌が尊重されたが,一方では樹皮のついたままの木材が選ばれる場合があった。…

※「黒木」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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