デジタル大辞泉
「黒髪」の意味・読み・例文・類語
こく‐はつ【黒髪】
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くろ‐かみ【黒髪】
[1] 〘名〙
① 色黒くつやのある髪。また、髪の美称。
※
万葉(8C後)二〇・四三三一「ぬばたまの 久路加美
(クロカミ)敷きて 長き日
(け)を 待ちかも恋ひむ 愛
(はし)き妻らは」
※申楽談儀(1430)序「大男にていられしが〈略〉自然
居士などに、くろかみ着、
高座に直られし、十二三斗に見ゆ」
[2]
[一] 長唄・地唄。
歌舞伎「大商蛭小島
(おおあきないひるがこじま)」(天明四年一一月江戸中村座初演)で、伊東祐親
(すけちか)の娘辰姫が、頼朝への恋を
北条の娘政子へ譲って、二人を二階へ上げたあと、自分の髪をすきながら、
嫉妬に胸をこがすという場面のめりやすに使われた。歌詞は、独り寝の女の、やるせない心をうったえたもの。初演は長唄で
杵屋佐吉の作曲。地唄にも取り入れられた。
[二] 小説。近松秋江作。大正一三年(一九二四)刊。苦しい生活の中から遊女に仕送りする男の愛執の情を描いた代表的情話文学。
[語誌](1)「
万葉集」では「黒髪に
白髪交り」(五六三)「黒髪の白くなるまで」(一四一一)など、黒髪に白髪を配して年老いたという、時の経過を表わす表現と、①の
挙例の歌のように髪を梳き下げ男を待って横たわる女の姿を官能的に表出する表現の型がある。
(2)平安和歌では黒髪の若さと美しさとを潜在させながら、時の経過を歌う型は、「むばたまの我がくろかみや変るらむ鏡の影に降れる
白雪〈
紀貫之〉」〔
古今‐物名〕のように白髪を雪や滝に見立てて
老年の現在を歌う
漢詩の影響の色濃い表現に変化し、男が女の髪を
幻視して恋う型は、「黒髪の乱れて知らずうちふせばまづ掻きやりし人ぞ恋しき〈
和泉式部〉」〔後拾遺‐恋三〕のように、女が自分の髪に残る恋人の
感触に恋情をほとばしらせる型に変容し、定型化する。
こく‐はつ【黒髪】
〘名〙 黒くつやのある髪の毛。くろかみ。
※
花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉二二「黒髪長く垂れて
双肩に及び」 〔
神仙伝‐五・泰山老父〕
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普及版 字通
「黒髪」の読み・字形・画数・意味
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黒髪 (くろかみ)
邦楽曲の曲名。(1)地歌 (a)繁太夫物《髪梳き》の別称。(b)湖出(こいで)市十郎作曲と伝えられる三下り端歌。鈴木万里が流行させ,また,津山検校が得意として,その歌い方を〈津山ぶし〉といった。(2)長唄 めりやす物。上記の市十郎が江戸に戻ったあとで,1784年(天明4)所演の《大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)》二番目〈髪梳きの場〉の辰姫の所作の下座唄として,杵屋佐吉・新太郎の三味線で歌ったものが伝わる。地歌の間奏部を変える。
→髪梳き
執筆者:平野 健次
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黒髪
くろかみ
三味線音楽の楽曲名。 (1) 地歌 1世湖出市十郎 (?~1800) 作曲。1世鈴木万里 (?~16) が大坂で弾きはやらせた。三下り。箏を合せるときは,平調子または半雲井調子。大坂の1世津山検校が得意として,その歌い方を津山節ともいった。舞では詞章が語る女の恨みを離れて,座敷舞としての幽艶な姿態が重視される。各流派でさまざまな解釈がなされる。 (2) 長唄 天明4 (84) 年 11月江戸中村座所演の『大商蛭小島 (おおあきないひるがこじま) 』の髪すきの場に用いられた下座のメリヤス曲。湖出市十郎および1世杵屋佐吉が演奏,間奏部を省略したり補作したりした。 (1) との先行関係は明らかになっていない。 (3) 一中節 『小春髪結之段』の通称。
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黒髪【くろかみ】
長唄および地歌の曲名。長唄は,1784年江戸中村座で初演された《大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)》に用いられた〈めりやす〉で,初世杵屋佐吉作曲(一説に初世湖出市十郎との合作とも)。地歌は初世湖出市十郎作曲。市十郎の上方在住中の芝居歌が遺存したと伝えられる。両者の先後関係は不明。ほかに一中節の《小春髪結之段》の通称にも。
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黒髪
メリヤス
くろかみ
歌舞伎・浄瑠璃の外題。- 演者
- 湖出市十郎 ほか
- 初演
- 天明4.11(江戸・中村座)
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
黒髪
日本のポピュラー音楽。歌は女性演歌歌手、神野美伽。2012年発売。作詞:荒木とよひさ、作曲:弦哲也。
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世界大百科事典(旧版)内の黒髪の言及
【髪梳き】より
…これは,嫉妬に狂う女の髪はおのずと逆立つという中世以来の心意伝承を踏まえ,髪を梳くことによって嫉妬の激しい怒りを表現する技巧。《大商蛭子島(おおあきないひるがこじま)》の辰姫の髪梳きは,[めりやす]《[黒髪]》を伴奏とすることで有名。《東海道四谷怪談》のお岩の髪梳きは,めりやす《瑠璃(るり)の艶(つや)》を伴奏に,これが一場の通称になるほど重要な演技局面である。…
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