一見(読み)イッケン

デジタル大辞泉 「一見」の意味・読み・例文・類語

いっ‐けん【一見】

[名](スル)
一度見ること。ひととおり目を通すこと。「一見に値する」「百聞一見かず」
ちらっと見ること。「一見して事の重大さを悟った」
(副詞的に用いて)ちょっと見たところ。「一見まじめそうな人」
一度会うこと。初対面。いちげん。
「―ながら武士の役、見殺しにはなりがたし」〈浄・天の網島
[類語]ちらりちらとちらっとちらちらちらりちらりちら見一瞥いちべつ一目ひとめ一目いちもく瞥見べっけん一顧ちょっと見

いち‐げん【一見】

初めて会うこと。特に、旅館料理屋などの客がなじみでなく、初めてであること。また、その人。「一見さんはお断りしています」
遊里で、遊女に初めて会うこと。初会
「―に馴れ馴れしきことながら」〈浄・万年草
[類語]顧客花客得意クライアント乗客旅客観客観衆聴衆お客様

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「一見」の意味・読み・例文・類語

いち‐げん【一見】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 「げん」は「げんざん(見参)」の略 ) 初めて対面すること。
    1. [初出の実例]「大かた人間の心は、一げんにて見ゆるなり」(出典:仮名草子・心友記(1643)下)
  3. なじみでなく、初めてであること。もと、上方の遊里で「初会」の意に用いたが、のち、一般町家でも用いた。一面識。
    1. [初出の実例]「今日の客は一げんの田舎の侍」(出典:浄瑠璃・心中刃は氷の朔日(1709)中)
  4. 婚礼諸式の一つ。婿が初めて嫁の親に対面すること。初婿入り。もともと婿入婚儀式であったが、嫁入婚になって意味内容が混乱し、親族の初対面や里帰りの挨拶の意にまで使われるようになった。
    1. [初出の実例]「婚礼の前に聟どのを、一現(ゲン)に連れて来て下すっては」(出典:人情本・萩の枝折(1818‐30)前)
  5. いちげんきゃく(一見客)」の略。
    1. [初出の実例]「痛はし共笑止(せうし)共一げんながら武士の役」(出典:浄瑠璃・心中天の網島(1720)上)

いっ‐けん【一見】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 一度見ること。一通り見ること。ちらっと見ること。一覧。
    1. [初出の実例]「微禽奇体、今遂一見之望」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
    2. 「黒塚(くろつか)岩屋一見し、福島に宿る」(出典:俳諧・奥の細道(1693‐94頃)あさか山)
    3. [その他の文献]〔漢書‐趙充国伝〕
  3. ( ━する ) 一度会うこと。初対面。いちげん。
  4. ( 副詞的に用いて ) ちょっと見ると。
    1. [初出の実例]「其一見人を射るの異彩なきにもせよ」(出典:思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉四)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

今日のキーワード

五節舞

日本の上代芸能の一つ。宮廷で舞われる女舞。大歌 (おおうた) の一つの五節歌曲を伴奏に舞われる。天武天皇が神女の歌舞をみて作ったと伝えられるが,元来は農耕に関係する田舞に発するといわれる。五節の意味は...

五節舞の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android