見参(読み)ゲンザン

デジタル大辞泉 「見参」の意味・読み・例文・類語

げん‐ざん【見参】

[名](スル)《「けんざん」とも》
参上して目上の人に対面すること。げざん。げんぞう。
「婿が岳父しゅうとに―するという風に」〈鴎外
目上の人が目下の者に会ってやること。げざん。げんぞう。
我御前わごぜがあまりにいふことなれば、―して帰さん」〈平家・一〉
節会せちえ宴会などに出席すること。また、出席者が記名して、その主人の前に差し出すこと。げざん。げんぞう。
「陣に付きて宣命、―を見給ひける間」〈著聞集・三〉
[類語]謁見お目見え目通り拝謁内謁朝見会う対面する面会する会見する会する落ち合う引見する接見する面接する面談する会談する見合い顔合わせお目にかかるまみえる拝顔する拝眉する謦咳けいがいに接する

げん‐ぞう〔‐ザウ〕【参】

げんざん(見参)」に同じ。
「それもお目が参ったならば、御―であらうず」〈虎寛狂・今参

げ‐ざん【見参】

げんざん」の撥音の無表記。
「弁少将なども、―ばかりにてまかづるを」〈梅枝

けん‐ざん【見参】

[名](スル)げんざん(見参)

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精選版 日本国語大辞典 「見参」の意味・読み・例文・類語

げん‐ざん【見参】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 上代、節会(せちえ)、宴会などに出席すること。また、出席者の名を書き連ねて、御前に提出すること。またその名簿。
    1. [初出の実例]「見参五位已上賜祿有差」(出典類聚国史‐七五・曲宴・天長八年(831)八月丙寅)
  3. 目下の者が目上の人に対面すること。拝掲。また、その挨拶(あいさつ)のことば。
    1. [初出の実例]「朱云。〈略〉答。依文。更注見参不参之人名帳申送耳」(出典:令集解(868)選叙)
  4. 目上の者が目下の者に対面すること。謁見。引見。
    1. [初出の実例]「入道、いでいでわごぜがあまりにいふ事なれば、見参(ゲンザン)してかへさむとて」(出典:高野本平家(13C前)一)
  5. 法会・集会などへの衆僧出仕を確認すること。出欠をとること。
    1. [初出の実例]「現参被之。筆師訓芸〈願信房〉、鈍色・五帖けさ」(出典:大乗院寺社雑事記‐応仁元年(1467)五月二三日)
  6. 武士が新しく主従関係を結ぶにあたって、主人に直接対面すること。→見参に入る
    1. [初出の実例]「同き十八日に、明卿初て見参せしめられたり」(出典:随筆・折たく柴の記(1716頃)中)

見参の語誌

( 1 )の意では史書や記録類を中心に古くから例が見える。
( 2 )鎌倉期以降は身分差がさほどない相手を訪れて面会する場合にも「見参」が用いられるようになり、貴人に会う際には特に「見参に入る」(「入る」は四段活用)の形が取られることが多くなった。
( 3 )「見参」を「参会」や「対面」の意で用いるのは日本独自の用法で、中国の文献には見られない。
( 4 )中古、中世には撥音「ん」の無表記形「げざん」が多く見られるが、「見参」と漢字表記の例は便宜上「げんざん」の項目に収めた。


げ‐ざん【見参】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「げんざん」の撥音「ん」の無表記 )
  2. げんざん(見参)
    1. [初出の実例]「内の大殿の頭中将、弁少将なども、げざむばかりにてまかづるを、とどめさせ給ひて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)梅枝)
  3. げんざん(見参)
    1. [初出の実例]「かれ御らんぜよ。候ひし狐のげざんするを」(出典:宇治拾遺物語(1221頃)一)
  4. げんざん(見参)
    1. [初出の実例]「十一月ついたちより、いとはるかにて、げざんとてわたらせ給ふほども」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)

げん‐ぞう‥ザウ【見参】

  1. 〘 名詞 〙 「げんざん(見参)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「つゆにしょぼぬれてな、けさのけんそうげにうらやかなとのだ」(出典:歌謡・田植草紙(16C中‐後)朝哥二番)
    2. 「若尓鬼神共なり。ありにもならば、えけんさうも申まいぞ」(出典:古活字本毛詩抄(17C前)一二)

けん‐ざん【見参】

  1. 〘 名詞 〙げんざん(見参)

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改訂新版 世界大百科事典 「見参」の意味・わかりやすい解説

見参 (げんざん)

〈けざん〉〈げざん〉〈けんざん〉とも読む。平安時代より見られる用語で,目下の者が目上の者のもとへ参上して対面すること。また逆に目上の者が目下の者を出頭させ対面すること,すなわち引見,謁見。また官人が節会や宴会に出席することもいう。〈見参に入る〉とは,高貴の人に面会する,または高貴の人に見せる意となる。はじめ侍が主従関係を結ぶ場合,名簿(みようぶ)を捧呈する慣習であったが,武士の間にあってはその式は廃れ,源頼朝の場合も,戦陣の間のこととて,おおむね御家人として,単に初参(ういざん)の礼をとらせただけであった。もちろん御家人の見参は初度にとどまらず,適宜行われたものであろう。幕府の法令にも〈関東新制条々〉として〈御家人見参〉の事,〈評定の際を以て,其沙汰有るべし〉などの規定が見える。また〈鎌倉殿の見参に入る〉とは,主従関係を結んだ者が機会を得て正式に面謁する意であろう。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「見参」の解説

見参
けんざん

「けざん・げんざん」とも。(1)節会(せちえ)・大饗(だいきょう)などに参賀・伺候した官人の名簿(みょうぶ)を御前に提出すること。名簿を見参の文という。(2)本来は拝謁の意であったが,引見(いんけん)の場合にも使われた。(3)平安中期以降になると,主従関係を結ぶ際に名簿奉呈と対面(見参)が行われた。武家社会では平安末期には名簿奉呈はすたれ,見参が主従関係を結ぶ基本的儀式となった。「将門記」に平将門(まさかど)が藤原忠平に名簿を奉呈したことがみえる。

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世界大百科事典(旧版)内の見参の言及

【見参】より

…また官人が節会や宴会に出席することもいう。〈見参に入る〉とは,高貴の人に面会する,または高貴の人に見せる意となる。はじめ侍が主従関係を結ぶ場合,名簿(みようぶ)を捧呈する慣習であったが,武士の間にあってはその式は廃れ,源頼朝の場合も,戦陣の間のこととて,おおむね御家人として,単に初参(ういざん)の礼をとらせただけであった。…

【御目見】より

…主従関係を結ぶため,または儀礼上の挨拶のため,下位の者が上位の者に謁見すること。古くは,平安時代に地方の豪族が中央の権門勢家に名簿(みようぶ)を奉呈して主従関係を結ぶ慣習があり,武士の間にも行われたが,これに代わって平安末期より武家社会で見参(げんざん)すなわち主従関係を結ぶために従者になろうとする者が主君に謁見する儀式が行われた。江戸時代にはこれに代わって御目見の称呼が用いられた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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