日本銀行券(読み)ニッポンギンコウケン

デジタル大辞泉 「日本銀行券」の意味・読み・例文・類語

にっぽんぎんこう‐けん〔ニツポンギンカウ‐〕【日本銀行券】

日本銀行が発行する銀行券日銀券
[補説]現在発行されている一万円券五千円券二千円券千円券の4種のほか、五百円券・百円券・五十円券・十円券・五円券・一円券が流通している。

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精選版 日本国語大辞典 「日本銀行券」の意味・読み・例文・類語

にっぽんぎんこう‐けん ‥ギンカウ‥【日本銀行券】

〘名〙 日本銀行の発行する銀行券。紙幣。日銀券。

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改訂新版 世界大百科事典 「日本銀行券」の意味・わかりやすい解説

日本銀行券 (にほんぎんこうけん)

日本銀行が日本銀行法に基づいて発行する銀行券。日本の中央銀行である日本銀行は銀行券発行の独占的権限を与えられており(発券銀行),日本銀行券は公私いっさいの取引決済に無制限に通用する無制限法貨となっている(〈法貨〉の項参照)。現金には政府が発行する補助貨幣もあるが,流通している現金通貨の大部分は日本銀行券である。日本銀行券の種類,様式は大蔵大臣が定めることとなっており,現在,1000円,2000円,5000円,1万円の4種類が発行されている。

 日本銀行券の発行限度は大蔵大臣が閣議を経て定めるが,日本銀行は必要な場合にはこの限度を超えて銀行券を発行することもできる(限外発行)。ただし,15日を超えて限外発行を続ける場合は大蔵大臣の認可が必要であり,16日以後の限外発行高については限外発行税(税率年3%)を納めなければならない(〈発券制度〉の項参照)。日本銀行の勘定からみると,銀行券は日本銀行の債務であり,発行高は負債勘定に計理される。現在の銀行券は金本位制下におけるように金貨等と兌換(だかん)される兌換券ではないが,日本銀行は発行高と同額の発行保証物件を手形,貸付金,国債その他の債券外国為替,地金銀などの資産で保有することを義務づけられている。

 銀行券の発行は,具体的には日本銀行にある市中金融機関の当座預金,または政府当座預金の払出しの形で行われる。日々の銀行券需要は日本銀行にとって受身のものであり,これを直接左右することはできないが,金融政策により市中の現金需要の背景となる経済活動を調整する過程を通じ,長期的には銀行券の発行高をコントロールすることが可能である。

 銀行券の発行高は日々変動するが,そこには経済活動を反映したいくつかのパターンがみられる。一般的に,週間では週末にかけて増発,週初に還流月間では給料支払や取引決済が集中する月後半に増発,月初に還流する。年間を通しても次のようなパターンがみられる。すなわち,3月,4月は期末決済や新年度入り,行楽に伴う現金需要から発行超となるが,5月の連休明けからこれが戻り,6月,7月はボーナス資金等から増発,8月にこれが還流したあと,11月,12月には秋の行楽,年末ボーナス,年末決済から年中最大の増発期を迎え,その後,年末日から1月にかけて大幅還流となる。

 このような変動パターンを示しながら,銀行券発行高は経済規模の拡大による現金需要増を反映して着実に増加している。その増加テンポは時々の景気・物価動向に応じてかなりの開きがあり,好況期には取引増加,給与増,消費活発化などから高い伸びを示す反面,景気後退期には伸びが鈍化する傾向がある。最近ではキャッシュレス化の動きに伴い銀行券発行の趨勢(すうせい)に変化が生じつつあるが,今なおその発行額増加テンポ(月中平均残高の前年比など)は景気・消費動向の一端を示す指標として重視されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日本銀行券」の意味・わかりやすい解説

日本銀行券
にほんぎんこうけん

中央銀行としての日本銀行が法律に基づいて発行する銀行券。日銀券と略称される。兌換銀行券条例が存続していた 1884~1942年の間は兌換銀行券(→兌換券)と呼ばれ,1897年貨幣法が制定されるまでは銀貨,同法制定により金本位制度に移行してからは金貨との交換が原則として保証されていた。1932年に金本位制度が停止され,管理通貨制度に移行して不換銀行券になり,1942年日本銀行法の制定によって,名称が日本銀行券となった。当初,発行に際しては,発行高と同額の商業手形,貸付金,国債(→公債),外国為替手形,金銀地金などの見返り資産の保有を必要とする発行保証制度と,発行額の限度を政府が定める最高発行額制限制度がとられていたが,1998年両制度は廃止され,日本銀行の自由裁量で発行されることとなった。日本銀行券は法貨として強制通用力が与えられ,今日,家計などの経済活動に主として用いられており,企業間の決済は通常預金通貨によって行なわれる。(→紙幣日本の貨幣制度

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百科事典マイペディア 「日本銀行券」の意味・わかりやすい解説

日本銀行券【にほんぎんこうけん】

日本銀行が発行する紙幣。日本の通貨のうち最大の流通量を占める。1885年から発行。最初は兌換(だかん)券で,銀兌換,1897年からは金兌換をたてまえとしたが,1931年から金兌換を停止。1942年兌換銀行券の名称を日本銀行券に改め,正貨との兌換義務を負わない銀行券とされた。最高発行限度は大蔵大臣により閣議を経て決定,一定条件の下に限外発行も認められる。日銀は発行高と同額の保証物件(手形,地金銀,国債,外国為替等)をもつ必要がある。現在発行されているものは1000円,2000円,5000円,1万円の4種。このうち2000円札は,1958年の1万円札以来の新券種として2000年7月に発行された。
→関連項目紙幣

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「日本銀行券」の解説

日本銀行券
にほんぎんこうけん

中央銀行である日本銀行が発行する銀行券。兌換銀行券条例にもとづき1885年(明治18)5月からまず銀兌換準備で発行され,97年10月の貨幣法施行により金兌換に移行したが,1931年(昭和6)12月の金本位制離脱により兌換停止となった。その後,戦費調達のため発行額が増大すると,41年4月に正貨準備発行と保証発行の区別が廃され,最高発行額制限制度が採用された。翌年3月には日本銀行法の施行と兌換銀行券条例廃止により,金兌換義務から完全に解かれた。以来不換銀行券として,最高発行額制限制度にもとづいて発行されている。

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世界大百科事典(旧版)内の日本銀行券の言及

【銀行券】より

…41年銀行券の正貨準備発行と保証発行の区分が廃止され,最高発行額屈伸制限制度が採用された。さらに42年の改正日本銀行法によって銀行券の名称は日本銀行券(日銀券)に改められ,また最高発行額屈伸制限制度が恒久的制度と定められた。 1932年以降,赤字国債が毎年発行され,日本銀行がこれを直接引き受けたため,戦時中は日本銀行券は実質的には不換紙幣となったともいえる。…

【紙幣】より

…しかも政府の紙幣発行は政府にとって安易な財源調達法であり,事実,歴史的にみてもその発行は過剰になり,その結果,金貨との間に紙幣の減価が生じ,インフレーションの発生を招くことになった。 現在日本で現金通貨として流通しているのは日本銀行券補助貨幣だけであって,政府紙幣は発行されていない。ただ,補助貨幣は政府が発行する鋳貨であるが,素材価値は低く小口の支払手段として用いられ,実質的には政府紙幣である。…

【兌換券】より

…金本位制度は第1次大戦中の1917年に停止され,30年1月の金輸出解禁によって再開,銀行券の金貨兌換も始まったが,翌31年12月再禁止された。42年の日本銀行法の改正とともに兌換銀行券条例は廃止され,銀行券の名称も日本銀行券と改められた。【石田 定夫】。…

【不換紙幣】より

本位貨幣(または正貨)との兌換(だかん)が保証されていない紙幣(正確には政府紙幣)のことである。しかし現在政府紙幣は発行されておらず,いわゆる紙幣はすべてが日本銀行券である。1931年12月金輸出再禁止と同時に銀行券の金貨兌換が停止され,日本銀行券は兌換銀行券から不換銀行券となり,現在に至っている。…

※「日本銀行券」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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