エチレン(読み)えちれん(英語表記)ethylene

翻訳|ethylene

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

エチレン(脂肪族不飽和化合物)
えちれん
ethylene

もっとも簡単なアルケン。正式の命名法に従うとエテンetheneというが、慣用名のエチレンがよく用いられる。
 その分子構造は次の通りである。すなわち、炭素‐炭素二重結合の間隔は飽和炭化水素のエタンなどの154ピコメートルに比べて短いが、それに結合する水素との結合間隔はエタンと等しく110ピコメートルである。

 エチレンは石油化学工業のもっとも基本的な物質であり、したがって合成有機化学工業においてきわめて重要な物質であり、その生産量ないしは使用量は、その国の化学工業の規模を示す尺度になるともいわれる。[徳丸克己]

製造法

石油化学工業では、原油を蒸留後、エチレンよりも分子量の多い飽和炭化水素(アルカン)の留分をクラッキング(熱分解)して製造する。日本とヨーロッパでは主としてナフサを原料とし、天然ガスの豊富なアメリカではエタンやプロパンを原料として熱分解を行う。クラッキングでは、これらの原料の蒸気を水蒸気で希釈し、800℃程度に加熱した炉に1秒あるいはそれ以下の接触時間で通過させ、生成するエチレン、水素およびその他の炭化水素を分離精製する。一般に石油化学コンビナートはエチレンの製造プラントを中心として成り立っている。日本はアメリカに次いで世界第2位のエチレン生産能力をもち、年間約800万トン生産される。[徳丸克己]

性質

無色の芳香性をもつ可燃性の気体。空気との混合物は引火すると爆発をおこしやすく、また空気中では煤(すす)の多い赤い炎をあげて燃える。二重結合をもつので、反応性が高く、付加反応をおこしやすい。酸性で水を付加させてエタノール(エチルアルコール)とし、また銀触媒を用いて酸素によりアセトアルデヒドあるいは酸化エチレン(オキシラン)に酸化する。後者は重合させてカーボワックス(ポリエチレングリコール)とし、各種の基材に利用される。また塩化パラジウムを触媒として水中で酸素と反応させ、アセトアルデヒドとし、これから酢酸を製造する。さらにツィーグラーらが開発したトリエチルアルミニウムを用いる触媒により重合させてポリエチレンをつくる。[徳丸克己]

用途

エチレンには果実を成熟させるなど植物に対する生理作用があるので、青いバナナをエチレンで処理して黄色くするのに用いられる。しかし、エチレンのおもな用途は、エチレンを原料として多数の有用な物質、すなわち、合成繊維、合成樹脂、合成塗料などやそれらの製造のための中間体を製造することにあり、石油化学工業の基幹をなすものである。たとえば、エチレンの酸素酸化で生成する酸化エチレンを水と反応させて得られるエチレングリコールをテレフタル酸と重合させてポリエチレンテレフタラートを製造する。これはポリエステルの一種で繊維をはじめ各種の用途に用いられる。[徳丸克己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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