カラス(読み)からす(英語表記)crow

翻訳|crow

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

カラス(鳥)
からす / 烏・鴉
crow

広義には鳥綱スズメ目カラス科に属する鳥の総称で、狭義かつ一般的にはカラス属およびそれに近縁な属に含まれる鳥をさす。[浦本昌紀]

カラス属の特徴

カラス属Corvusの鳥は、南アメリカとニュージーランドを除いてほぼ世界中に分布しており、約35種がある。この属の鳥はどれも一目みればカラスであるとわかるが、かならずしも全身黒色であるとは限らない。スズメ目の鳥としては大形で、最大種は全長約70センチメートルにも達する。最小種でも全長約35センチメートル。嘴(くちばし)と足が長めで頑丈であり、大形種ほどその傾向が強い。羽色は、嘴と足まで含めて全身黒色のものが多いが、後頸(こうけい)部または後頸部から胸または腹にかけてが白色かねずみ色の種もかなりあり、ニューギニア島産の1種は著しく淡色である。黒色部が青、緑、紫、赤銅などの金属光沢を示すものが多いが、それ以外には鮮やかな色をいっさいもたない。この点はカラス科のそのほかの鳥と異なっている。翼はスズメ目の鳥としては長く、飛翔(ひしょう)は巧みで力強い。大形種は帆翔(翼を大きく広げたまま、ほとんど羽ばたかずに飛び続けること)もするが、これはスズメ目では唯一のものである。また、地上では左右の足を交互に出して歩くが、これもスズメ目のなかでは珍しい。[浦本昌紀]

カラス科の習性と繁殖

このようなカラス属の特徴は、カラス科Corvidaeのほかの種にはほとんどみられない。しかしカラス属も、それ以外の習性ではカラス科のほかの種と共通している点が多い。食性は雑食性であって、昆虫や果実が中心であるが、トカゲやカエルも食べるし、小鳥の卵や雛(ひな)も食べる。大形種は小獣も捕食する一方で腐肉食(死体食)の傾向が強く、海岸に打ち上げられたものをあさったりする。大きな食物を食べるときには、それを足で押さえて嘴で食いちぎるという猛禽(もうきん)のような動作を示す。また、余分な食物を隠しておいてあとで利用する習性もある。このことからもわかるように、カラス科の仲間は鳥としては学習能力が非常に高く、適応性が大きい。このことは、カラスが高等であるという考えのもとになっている。
 カラス科の繁殖は一夫一婦のつがいで縄張りをもって行うのが普通である。コクマルガラスとミヤマガラスは集団繁殖をする点で例外といえる。造巣は雌雄で行うが、抱卵抱雛(ほうすう)は雌のみが行う。雄は巣で抱卵中の雌に絶えず食物を運んでくる。雛への給餌(きゅうじ)は雌も雄も行い、雌雄の分担は大体同じであるが、雄がその大半を引き受けることもある。食物はのどに入れて持ってくる。巣は普通、粗大な枝からなる皿形か椀(わん)形で、産座は細く柔らかい材料でつくられる。1巣の卵数は通常4~5卵で、抱卵期間は20日前後であり、大形種では孵化(ふか)から巣立ちまでに5~6週を要する。巣立ち後の雛は数週間にわたって親鳥と生活をともにして養育される。繁殖期以外には小群で生活することが多く、夜には多数集合して集団ねぐらを形成する。[浦本昌紀]

カラス属のおもな種類

カラス属の鳥は同一地域で2、3種がみられるのが一般的であり、その際には体の大きさを異にしている。日本ではハシブトガラスC. macrorhynchosとハシボソガラスC. coroneの2種がみられることが多く、前者がやや大きい。ヨーロッパから東アジアにかけてはワタリガラスC. corax、ハシボソガラス、ミヤマガラスC. frugilegus、コクマルガラスC. monedulaの4種、中国南部から南アジアには、ハシブトガラスが広く分布するほかに、中国ではクビワガラスC. torquatus、フィリピンからインドネシアではスンダガラスC. enca、タイからインドではイエガラスC. splendensがそれぞれ分布し、北アメリカではワタリガラスとナミガラスC. brachyrhynchosの2種、オーストラリアではミナミワタリガラスC. coronoides、ミナミガラスC. orru、ミナミコガラスC. bennettiの3種、アフリカではムナジロガラスC. albusのほかに数種が局地的にみられる。[浦本昌紀]

そのほかの重要種

カラス属に近縁なものとして考えられている鳥には、ユーラシアの高山のベニハシガラス属Pyrrhocoraxの2種と、北アメリカ西部とユーラシアの亜寒帯針葉樹林のホシガラス属Nucifragaの2種がある。また、イランからモンゴルとチベットにかけて中央アジア高地の半砂漠にすむ地上性のサバクガラス類のサバクガラス属Podocesおよびヒメサバクガラス属Pseudopodoces5種はホシガラスに近縁な可能性がある。
 カラス科にはこのほかカササギ、オナガ、カケス、サンジャクなど、カラス属の鳥よりも小さく(最小種は全長約17センチメートル)体が細めで尾が長く、嘴と翼の短いものが約60種あり、赤道以南のアフリカとオーストラリア周辺を除き、ほぼ世界中に分布している。彼らは大半が森林性で、中央・南アメリカと、南アジアから東南アジアにかけて多く、習性はカラス属に似ているが、羽色はそれよりはでで、しばしば青、緑、黄など鮮やかな色を有する。すべて雌雄同色で、季節的な羽色変化もない。[浦本昌紀]

民俗

カラスは山の神のお使いとされており、関東平野では正月11日に「烏勧請(からすかんじょう)」といって、カラスに餅(もち)を投げ付ける行事がある。また、カラスが畑の中に3か所に置いた米のいずれをついばむかによって、その年に播(ま)くべきイネの早、中、晩3種の豊凶を占う。岩手県遠野(とおの)地方では、「烏よばり」といって、正月15日の日没前に小さく切った餅を枡(ます)に入れ、これをカラスに投げ与えるが、新潟県北蒲原(きたかんばら)郡の海岸部では、正月16日に各戸の門口に藁火(わらび)を焚(た)いて「烏追い」の行事を行う。
 山形県東村山郡では、2月8日に「烏団子」をつくって木の枝に刺し、家の外に立てるが、これをカラスが食べると縁起がよいとしている。東京都府中市の大国魂神社(おおくにたまじんじゃ)では、7月20日のすもも祭に烏団扇(からすうちわ)を出しているが、これで田をあおぐと虫がつかないという。このような烏呼びの行事を神社などで行う例としては、広島県廿日市(はつかいち)市宮島町の厳島神社(いつくしまじんじゃ)で行われる「御鳥喰神事(おとぐいしんじ)」が名高く、飴餅(あめもち)を海上に浮かべて楽を奏するとかならず1羽の神鳥(かんどり)がやってきてこれをついばむといい、同様の神事は西日本で多くみられる。また「烏鳴き」といって、カラスが嫌な声で鳴くとかならず死人が出るという俗信は、全国的にみられる。[大藤時彦]

カラスと人間

カラスは利口な鳥といわれ、また人間の居住地域の近くに生息するため、鳥類のなかでもとくに人間とのかかわりが深い。古くから世界各地の俗信や神話などに頻繁に登場するほか、地域によっては信仰の対象ともなっている。たとえば、アメリカ北西海岸の先住民やシベリアの諸民族の神話では、大ガラスはさまざまな役割で登場し、太陽や月、星、湖や川、あるいは人間の創造者や人々の暮らしに欠かせない火やサケをもたらした文化英雄として活躍する。彼らの間でカラスは主神や祖先として崇拝されてきた。
 太陽とカラスを結び付ける観念は東アジアに分布しており、中国では、古来、太陽の中に三本足のカラスがいるといわれてきた。朝に活動を開始し、日没にねぐらに帰る習性が太陽の運行と対応しているからであるとか、太陽の黒点がカラスを連想させるからであるとか、あるいは火を運んできたカラスや黒焦げになったカラスの伝承があることから、火を媒介にした太陽との関係が説明されている。
 カラスはなぜ黒いかとか、昔はカラスもことばを話したなどという内容の民話が多いのは、黒色の羽毛や特徴的な鳴き声が人々の想像力を刺激するためであろう。カラスによって吉凶を占うことも世界的に広くみられるが、概して凶兆と結び付けられることが多い。[横山廣子]

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