翻訳|Polynesia
太平洋の島々のうち,北はハワイ,南はニュージーランド,東はイースター島を頂点とする一辺およそ8000kmの巨大な三角形に含まれる島々の総称。ポリネシアという言葉は,元来ギリシア語で〈多数の島々〉を意味する。地質学的には,オーストラリア大陸プレートの前縁にあたるニュージーランド,ケルマデク諸島,トンガ諸島と,太平洋プレート上のハワイ,マルキーズ諸島,ソシエテ諸島など数多くの諸島からなる。前者は水成岩と深成岩,変成岩,安山岩などの火山岩からなり,地殻活動が活発で地震も多い環太平洋造山帯上の陸島である。これに対して後者は玄武岩からなる洋島の火山島である。東太平洋海嶺から北西方向への太平洋プレートの移動に伴う海洋底の沈込みに応じ,太平洋プレート上の火山島は北西方向にゆくにしたがい沈降が大きく,水没した火山島の表面を覆うサンゴ層の厚さは,エリス諸島のフナフティ島で305m,ミクロネシアのマーシャル諸島のビキニ島で780mにもおよぶ。これら海洋底の移動に伴う火山島の沈降に対し,ニウエ島やタヒチ東方のマカテア島など,若干の島々では数十mの隆起がみられる。太平洋の洋島の多くはサンゴ礁からできているが,サンゴ虫は海水温度18℃以下か,水面下およそ40m以深のところでは生息できない。そのため冷水塊の上昇しているところではサンゴの発達が悪い。熱帯海域であるにもかかわらず寒流のペルー(フンボルト)海流が洗うマルキーズ諸島やこれより東方の島々にサンゴ礁がみられないのはこのためである。
地質学的な区別に対し,高島(火山島)と低平なサンゴ礁島および隆起サンゴ礁の区別は生態学的に重要な意味をもつ。低平なサンゴ礁島は高さが5mを越えることはまれであり,基盤が保水性の悪い石灰岩であることから,植物の成育には適さない。地下水は普通塩分を含むため,植生はココヤシやタコノキの仲間などの耐塩性の植物に限られる。同じく隆起サンゴ礁も浸透性の強いサンゴ岩を基盤とするため土壌の水分は乏しく,耐乾性の植物に限られる。これらのサンゴ礁島は飲料水を天水に頼っている。これに対し,高島は水が豊富であり,火山性母岩の風化が進んだ古い火山島は肥沃な土壌にも恵まれ,植物の繁茂も盛んである。
ポリネシアの島々はニュージーランドが温帯圏に属するほかは,すべて熱帯もしくは亜熱帯に位置し,気温は南北両端の島を除き均質であり,年較差は小さい。一般に雨は赤道の北側では6~10月に,南側では11~4月に多いが,季節的にも,地理的分布においても多様である。北半球ではハワイ諸島,南半球ではイースター島のある東太平洋上の亜熱帯高圧帯から赤道沿いの無風帯へ向けて吹き出す貿易風は,地球の自転により北半球では北東風,南半球では南東風となる。このため高い火山島の風上にあたる東斜面には雨が多く,風下は雨が少ない。しかし,低いサンゴ礁の島は貿易風による降雨は少なく,スコール性のにわか雨に頼るのみである。赤道無風帯は風向の一定しない微風を特徴とするが,二つの貿易風の衝突による熱帯前線のため,スコール以外の降雨量も多い。しかし,無風帯は赤道以南には現れず,低温のペルー海流,南赤道海流に面したマルキーズ諸島やクリスマス島,フェニックス諸島,モルデン島などでは雨量はきわめて少なく,植物は貧弱である。また熱帯低気圧の発達したハリケーンが,樹木作物や建物に被害を与えることもあり,その場合,とくに低いサンゴ礁島は致命的打撃を受ける。
ポリネシアの動植物は大洋での孤立によりそれほど豊富でなく,とくに脊椎動物は小さなトカゲ類と,人間の移動に伴ってもたらされたネズミやコウモリだけである。ヘビ類はサモア諸島にみられるが,それ以東には生息しない。また,マラリアを媒介するハマダラカもポリネシアにみられない。東ポリネシアの鳥類はグンカンドリ,アホウドリ,ウミツバメ,アジサシなどの海鳥であり,島に植物の種子を運んだり,排泄物の堆積したリン灰分の豊かなグアノをもたらした。鉱物資源はマカテア島のリン鉱石(1966年採掘中止)だけであったが,最近,海洋底のマンガン団塊や熱水鉱床が注目され始めている。
→ポリネシア人
執筆者:石川 栄吉+矢野 将
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太平洋の島々のうち,ハワイ,ニュージーランド,イースター島を頂点とする三角形に含まれる島々の総称。太平洋地域をミクロネシア,メラネシアとともに三つにわけた区分の一つ。ギリシア語で「多数の島々」を意味する。住民は,紀元前4千年紀後半にアジア大陸から移住してきたモンゴロイド集団であり,13世紀頃までに現在の地域にほぼ移住を終えたとされている。根栽農耕と漁撈が主たる生業である。移住の途中の経路であるメラネシア地域ではラピタと呼ばれる様式の土器をつくっていたが,その後は土器制作の習慣は失われた。首長制度が発達し,特にハワイ,タヒチ,トンガでは19世紀初頭にヨーロッパ人の助けもあって,それぞれ王朝にまで発達した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…残りの数千を数える島々の総面積はわずか18万km2にすぎない。 大陸を除いたオセアニアの島々の世界は,通常地理学的および人類学的観点からメラネシア,ポリネシア,ミクロネシアの3地域に区分される。メラネシア(ギリシア語で〈黒い島々〉の意。…
※「ポリネシア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
1936- 昭和後期-平成時代の女優,声優。昭和11年10月16日生まれ。昭和32年俳優座養成所をでて,テレビ界にはいる。NHKの「ブーフーウー」で声優としてみとめられ,54年テレビアニメ「ドラえもん...
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