写す(読み)ウツス

デジタル大辞泉 「写す」の意味・読み・例文・類語

うつ・す【写す】

[動サ五(四)]《「移す」と同語源》
文書・絵などを元のとおりに書き取る。まねてそのとおりに書く。転写する。模写する。「手本を―・す」「友達レポートを―・す」
ある物をまねてそのとおりの形につくる。模造する。「竜安寺りょうあんじ石庭を―・した庭」
見聞したことを文章や絵で表現する。描写する。「情景を―・す」
写真映画に撮る。撮影する。「花を―・す」
[可能]うつせる
[類語](1書き写す書き取る転記する謄写する筆写する手写する書写する臨写する透写するなぞるトレースする転写する・拓本/(3描き出す描出する活写する直写する写生するスケッチする/(4撮影撮る写る

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「写す」の意味・読み・例文・類語

うつ・す【写・映】

  1. 〘 他動詞 サ行五(四) 〙 ( 「移す」の意から転じたもの )
  2. 元の物に似せて別の物をつくる。
    1. (イ) 文字、絵、図などを見て、それに似せ、またはそのとおりに別に書きとる。模写する。書き写す。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
      1. [初出の実例]「ヒトノ カタチヲ vtçusu(ウツス)〈訳〉人をありのままにえがく」(出典日葡辞書(1603‐04))
    2. (ロ) 実物の形にまねて作る。模造する。
      1. [初出の実例]「釈迦(さか)の御足跡(みあと)(いは)に宇都志(ウツシ)置き敬ひて後の仏に譲りまつらむ捧げまうさむ」(出典:仏足石歌(753頃))
      2. 「我は此、地蔵菩薩也。汝京城(みやこ)に有りし時、我が形像(ぎゃうざう)一躯を摸(うつ)したりき」(出典:今昔物語集(1120頃か)六)
    3. (ハ) 音、ことば、人の性格、物事の状態ややり方などをもとのものとそっくりにあらわす。模倣する。まなぶ。
      1. [初出の実例]「節会の日、内の儀式をうつして、昔のためしよりも事そへて、いつかしき御有様なり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)乙女)
      2. 「水の底に琴をひく音あり。師涓と云ふ人を召して、此声を琴の音にうつし給ふ」(出典:十訓抄(1252)一〇)
  3. 見聞したり考えたりした物事を、絵や文章にかく。描写する。
    1. [初出の実例]「高名の絵師有り、物の形を写す、少も違(たが)ふ事无(な)かりけり」(出典:今昔物語集(1120頃か)二五)
    2. 「世の人情と風俗をば写(ウツ)すを以て主脳となし」(出典:小説神髄(1885‐86)〈坪内逍遙〉上)
  4. 写真や映画にとる。撮影する。
    1. [初出の実例]「むかふの写真屋〈略〉げいしゃとも七人いちどにガラス一枚へうつさして」(出典:安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉二)
    2. 「活動をうつしに来たんだ、活動を」(出典:春泥(1928)〈久保田万太郎〉夕焼雲)
  5. ( 映 ) 物の影や光などが他の物の上に現われるようにする。
    1. (イ) 鏡、水、障子などに姿や影が現われるようにする。
      1. [初出の実例]「とほき山は、雪のみねをうつす」(出典:宇津保物語(970‐999頃)春日詣)
      2. 「水うみに秋の山べをうつしてははたはり広き錦とぞみる〈観教〉」(出典:拾遺和歌集(1005‐07頃か)秋・二〇三)
    2. (ロ) 映画、スライドなどで、映像スクリーンに現われるようにする。映写する。
      1. [初出の実例]「かの美(は)しき越歴機(えれき)の夢は天鵞絨(びろうど)の薫(くゆり)にまじり、珍らなる月の世界の鳥獣映像(ウツ)すと聞けり」(出典:邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・邪宗門秘曲)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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