御倉半島の先端部にある御倉山(六八九・九メートル)は第二次中央火口丘である。湖の周囲には
十和田湖は人里から遠く離れ、藍色の湖水は見る人に神秘性と清浄さを感じさせずにはいないが、また数々の伝説に彩られている。なかでも八郎太郎(八郎・八之太郎)と南祖坊(南蔵坊)が湖の主争いをしたという話は広く知られている。南部
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
青森、秋田の県境にある二重式カルデラ湖。面積59.8平方キロメートル、周囲44キロメートル、湖面標高400メートル、最大深度326.8メートル。成層火山の噴火により陥没がおこり、現在の十和田湖の輪郭ができ、次の活動期に中央火口丘の中心が陥没して中湖が形成された。湖の南東部に御倉(おくら)山(690メートル)、南西部に中山(なかやま)(534メートル)の両半島が突出しているが、これらはカルデラ内に噴出した中央火口丘である。御倉山半島東側の湖面を東湖(外湖)、中山半島西側の湖面を西湖(内湖)とよび、両半島に挟まれた中湖の南寄りに十和田湖の最深部がある。田沢湖、支笏(しこつ)湖に次ぐわが国で3番目に深い湖である。東岸の子ノ口(ねのくち)から発する奥入瀬川(おいらせがわ)が唯一の排水河川である。
湖を取り巻く山々はカルデラの外輪山で、御鼻部(おはなべ)山(1011メートル)、白地山(1034メートル)などが連なり、元山(もとやま)峠、鉛山(なまりやま)峠、発荷(はっか)峠などを越える観光道路が通じている。山地を覆う針葉樹やブナ、カエデ、トチ、ナラなどが湖水に四季折々の影を映し、とくに紅葉時の錦(にしき)を織り成す景観は、多くの観光客を集める。南岸の休屋(やすみや)が観光基地で、バスや観光船が発着し、宿泊施設なども多い。
魚類は生息しなかったが、1903年(明治36)に和井内貞行(わいないさだゆき)(1858―1922)によって、支笏湖のヒメマス(カバチェッポ)を放流し養殖に成功した。十和田八幡平(はちまんたい)国立公園の中心で、奥入瀬渓流とともに特別名勝・天然記念物に指定されている。
[横山 弘]
青森県南東部、上北郡(かみきたぐん)にあった旧町名(十和田湖町(まち))。現在は十和田市の南西部にあたる地域。1955年(昭和30)に町制施行した十和田町が1975年に十和田湖町と改称。2005年(平成17)十和田市に合併。旧町域は、八甲田(はっこうだ)山南斜面から十和田湖畔に至る地域を占める。中央を北東流する奥入瀬(おいらせ)川に沿って国道102号が走り、ほかに103号、394号、454号が通じる。西部は十和田八幡平(はちまんたい)国立公園域で、湖畔の子ノ口(ねのくち)から焼山(やけやま)までの約14キロメートルは奥入瀬渓流として知られ、十和田湖とともに特別名勝・天然記念物に指定されている。焼山にある東北電力の水力発電所は町財政を潤してきた。農業が基幹産業であり、米作と和牛等の畜産が中心。十和田湖、奥入瀬渓流などの自然に恵まれ、観光も盛ん。猿倉(さるくら)、蔦(つた)、谷地(やち)の各温泉があるほか、焼山にも猿倉から引き湯して温泉郷を建設し、スキー場を開設している。「法量のイチョウ(ほうりょうのいちょう)」は国指定天然記念物、旧笠石家住宅(きゅうかさいしけじゅうたく)は国指定重要文化財。
[横山 弘]
青森・秋田県境にある二重式カルデラ湖。面積59.8km2,湖面標高400m,湖周約44km,最大深度327m。湖の形成過程はまず現在の湖に中心をもつ成層火山の噴火による陥没で,現在のような輪郭がつくられ,次の活動期に中央火口丘の中心が陥没して中湖(なかのうみ)が生じた。湖の南岸から牛の角のように突出する二つの半島が中央火口丘にあたり,西が中山,東が円頂丘の御倉山(690m)である。湖の南半は両半島によって分けられ,東から東湖(外湖),中湖,西湖(内湖)とよばれ,北半は北湖とよばれる。湖をとりまく外輪山には御鼻部(おはなべ)山(1011m),白地山(1034m),十和田山(1054m)などがあり,観光道路は西側の滝ノ沢峠,南側の発荷(はつか)峠と東側の湖の排水口にあたる奥入瀬(おいらせ)川渓谷沿いに通じている。
湖には魚類は生息していなかったが,1903年に十和田銀山の技師和井内(わいない)貞行が北海道の支笏(しこつ)湖原産のヒメマスの稚魚5万尾を放流し,養殖に成功してから魚がすむようになった。〈和井内マス〉として知られ,西岸の生出(おいで)に和井内養魚場がある(現在は廃止)。十和田八幡平国立公園に属し,周囲の山地はブナ,カエデ,ナラなどにおおわれ,紅葉の季節にはとくに観光客が多い。観光の中心は南岸にある休屋(やすみや)で,バスターミナルの広場を中心に旅館,食堂,みやげ品店が集まり,科学博物館や淡水魚水族館(現在は閉鎖)もある。休屋の北,御前ヶ浜には高村光太郎作の〈乙女の像〉があり,十和田湖のシンボルになっている。
十和田湖の東口,子(ね)ノ口から焼山にいたる約14kmの奥入瀬渓流は,沿岸の樹林をうつして変化の多い景観を示し,幅13m,比高8mの銚子大滝をはじめ多くの滝がかかっている。十和田湖への入口は青森口,三沢口,弘前口,十和田南口の四つがあり,いずれもバスの便がある(弘前口のバスの便は廃止)。子ノ口~休屋間は遊覧船が運航している。
執筆者:横山 弘
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