堪える(読み)コラエル

デジタル大辞泉 「堪える」の意味・読み・例文・類語

こら・える〔こらへる〕【堪える/×怺える】

[動ア下一][文]こら・ふ[ハ下二]
苦しみなどに、耐えてがまんする。しんぼうする。「痛みを―・える」「飢えや寒さを―・える」
感情などを、抑えて外にあらわさない。「怒りを―・える」「笑いを―・える」
外から加えられた力にたえる。もちこたえる。「強烈な寄りを―・える」
堪忍する。許す。「今度だけは―・えてやろう」
[補説]「怺」は国字
[用法]こらえる・たえる――「空腹をこらえる(にたえる)」「痛みにたえる(をこらえる)」など、上接する助詞に違いがあるが、相通じて用いる。◇「こらえる」は自己の感情の発現を押さえることに中心がある。「涙をこらえる」「怒りをこらえる」に「(に)たえる」は用いない。◇「たえる」は外部からの圧力に抵抗する点に意味の中心がある。「三〇〇〇度の高温にたえる」に「(を)こらえる」は用いない。◇「たえる」は人以外の物にも使うが、「こらえる」は人についてしか使わない。
[類語]耐える忍ぶしのぐ堪え忍ぶ踏みこたえるたまり兼ねる辛抱する我慢する忍耐する隠忍する忍従する頑張る歯を食いしばる涙を呑む抑える

こた・える〔こたへる〕【堪える】

[動ア下一][文]こた・ふ[ハ下二]
耐える。こらえる。がまんする。「―・えられない暑さが続く」→こたえられない
「一呼吸いきでも―・えられるかうだか」〈鏡花歌行灯
多く動詞連用形に付いて複合語をつくる)耐えつづける。保つ。「これだけあれば一年くらいは―・える」「最後まで踏み―・える」「もち―・える」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「堪える」の意味・読み・例文・類語

た・えるたへる【堪・耐・勝】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]た・ふ 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙
    1. 喜怒哀楽などの感情を抑えて表面に出さないようにする。苦しみや圧迫などをこらえてじっと我慢する。こらえる。しのぶ。古くは、多く下に打消の語を伴って、それができない意で用いた。
      1. [初出の実例]「泣(いさ)ち哭(な)き憤惋(いた)むて、自ら勝(タフル)こと能はず」(出典日本書紀(720)顕宗元年二月(図書寮本訓))
      2. 「能く辛苦にたへて」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉七)
    2. 負担することができる。その任にあたり得る。応じ得る。それをすることができる。
      1. [初出の実例]「良福田とするに堪(タヘ)たり」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)四)
      2. 「人の後見と頼み聞えんにたへ給へる御覚えをえらび申て」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
    3. その状態が変わらないで、持続する。もちこたえる。
      1. [初出の実例]「命さへたへ給はずなりにしのち」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    4. ( 多く「勝」の字をあてる ) すぐれる。堪能である。
      1. [初出の実例]「たへたることなき人だに身の沈むをば憂へとする」(出典:宇津保物語(970‐999頃)祭の使)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ハ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]た・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙 支え止める。さえぎる。防ぎとめる。
    1. [初出の実例]「毛野の臣の軍を防遏(タヘヨ)とすすむ」(出典:日本書紀(720)継体二一年六月(前田本訓))

堪えるの補助注記

中世からヤ行にも活用した。→たゆ(堪)


こら・えるこらへる【堪・怺】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]こら・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. 苦しみなどに耐えて、がまんする。感情などをおさえて表面に出さないようにする。辛抱する。耐え忍ぶ。
    1. [初出の実例]「此有様をみたてまつるに、こらへつべしとも覚ねば」(出典:金刀比羅本保元(1220頃か)下)
  3. 保つ。もちこたえる。
    1. [初出の実例]「おめいてかくれば、なぎさに百騎ばかりありける物ども、しばしもこらへず」(出典:平家物語(13C前)一一)
  4. 怒りを抑えて人を許す。
    1. [初出の実例]「ナンヂヲ ヒトヨリ corayeyocaxito(コラエヨカシト) ヲモウニ ヲイテワ、ナンヂモ マタ ヒトヲ corayeyo(コラエヨ)」(出典:コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)二)

堪えるの補助注記

室町時代頃からヤ行にも活用した。→こらゆ(堪)


こた・えるこたへる【堪】

  1. 〘 自動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]こた・ふ 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. 耐える。こらえる。耐えしのぶ。我慢する。もちこたえる。こたゆ。
    1. [初出の実例]「城寄出て禦(ふせぎたたかう)と云供、何かは以、こたゑべき」(出典:三河物語(1626頃)二)
  3. 耐え続ける。保つ。持続する。
    1. [初出の実例]「大像之仏をば木像にし、漆膠にてぬり立候へば、百年はこたへ侍由なりければ」(出典:太閤記(1625)七)

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