押える(読み)オサエル

デジタル大辞泉 「押える」の意味・読み・例文・類語

おさ・える〔おさへる〕【押(さ)える/抑える】

[動ア下一][文]おさ・ふ[ハ下二]

㋐物が動かないように、押しつけて力を加える。「手で着物の裾を―・える」「文鎮で紙を―・える」
出入り口に手などを押し当てておおう。「傷口を―・える」「耳を―・える」
対象の動きを封じる。
㋐動いたり逃げたりしないように、しっかりつかまえる。「犬を―・える」「賊を―・える」
勢いを増す傾向にあるものを防ぎ止める。おしとどめる。食い止める。「敵の侵略を―・える」
㋒自分の支配下に置いて、自由な動きがとれないようにする。抑圧する。「反対派を―・える」
(抑える)
㋐ある水準以上には高まらないようにする。「値段を手ごろなところで―・える」
㋑スポーツで、相手の勢いをとどめる。「8回までヒット3本に―・える」「強豪を相手に前半を0点に―・える」
㋒感情・欲望などが高ぶるのをとどめる。抑制する。「―・えた演技」「怒りを―・える」
自己に属するものとして確保する。また、差し押さえる。「制空権を―・える」「証拠を―・える」「財産を―・えられる」
大切なところをしっかり理解する。把握する。「要点を―・える」
相手から杯を差されたとき、それをとどめて相手に飲ませる。
「文六殿返盞へんさん申す、と言ひければ、こは母が―・へまし、あひをいたしてあげません」〈浄・堀川波鼓
[下接句]勘所かんどころを押さえる首根っ子を押さえる差しつ押さえつ瓢箪ひょうたんなまずを押さえる目頭めがしらを押さえる
[類語](1)(2押さえ込む押さえ付ける押し付けるねじ伏せる組み伏せる組み敷く妨げる遮る立ち塞がるせきとめる制止捕まえる握る挟む押しとどめるストップを掛ける掣肘せいちゅう封殺諫止阻む食い止める立ちはだかる遮断妨害阻止挫く弱める砕く邪魔妨害阻害そがい干渉横槍よこやり障害支障障壁さわ邪魔だて水を差す水をかける足を引っ張る削ぐ圧伏圧殺ブレーキが掛かる腰を折る/(3耐える耐え忍ぶ忍ぶこらえる辛抱する我慢する忍耐する隠忍する忍従する頑張る歯を食いしばる涙を呑む/(4制する掌握する確保する保持する独占する占有する支配する手中に収める・我が物にする・支配

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精選版 日本国語大辞典 「押える」の意味・読み・例文・類語

おさ・えるおさへる【押・抑】

  1. 〘 他動詞 ア行下一(ハ下一) 〙
    [ 文語形 ]おさ・ふ 〘 他動詞 ハ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] 上から下へ向けて力を加えつづける。
    1. 物が動かないように、手などで力を加える。押しつける。
      1. [初出の実例]「やまとの 黄楊(つげ)小櫛を 抑(おさへ)刺す うらぐはし子 それそわが妻」(出典:万葉集(8C後)一三・三二九五)
    2. 物を支えたり、注意をひいたりするために、手を押し当てる。手をかける。
      1. [初出の実例]「御丁のはしらををさへて立ち給つるを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開上)
    3. 気絶した者、病人などを介抱するために、手を押しあてる。
      1. [初出の実例]「死入(しにいり)て不動(はたらかざり)けるを、和(やは)ら取り下して抑へたりければ、一時許(ばかり)有てぞ生たりける」(出典:今昔物語集(1120頃か)二六)
    4. 出入りの口などに手を押しあてる。ふさがるようにおおいかぶせる。
      1. [初出の実例]「知らせじとおさふる袖のひまよりも、あまりて涙ぞこぼれける」(出典:高野本平家(13C前)一)
    5. 和歌、特に連歌で、ある語に特定の助詞を添えてその語が下の述語にかかる力を加える。
      1. [初出の実例]「ぞとおさへては、ると留る也、桜の花ぞさかりなりける」(出典:連歌教訓(1582))
  3. [ 二 ] 物事の活動をとどめる。
    1. 自由に動くことをおしとめる。また、むりにこちらの思うままにする。
      1. (イ) 進み動いたり、ふえたりするのをくいとめる。
        1. [初出の実例]「院も御車をさへさせ給ひて、『なにしにここにはあるぞ』と問はせ給ひければ」(出典:大和物語(947‐957頃)一七二)
      2. (ロ) 自分の思い通りに支配する。他の意見、主張などをはじめから、また、途中でさえぎりとめたり、制限したりする。抑圧する。
        1. [初出の実例]「人の心未だ定まらず在りしかば、〈略〉諸(もろもろ)の意(こころ)静まり了(は)てなむ後に、傍(かたへ)の上をば宣(のたま)はむと為てなも、抑閇氐(おさヘテ)在りつる」(出典:続日本紀‐天平宝字三年(759)六月一六日・宣命)
      3. (ハ) 動き回らないように、しっかりつかまえる。とりおさえる。
        1. [初出の実例]「水の底で倉光(くらみつ)をとってをさへ」(出典:平家物語(13C前)八)
    2. 涙や気持などが表に現われようとするのをとめる。感情を抑制する。こらえる。
      1. [初出の実例]「遂に億計王と、相抱(たづさ)へて涕泣(な)く。自ら禁(オサフル)こと能はず」(出典:日本書紀(720)顕宗即位前(図書寮本訓))
      2. 「堪へがたきをおさへて明かし給ふつ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    3. 相手のさそうとする杯をおし返してもう一度飲ませる。
      1. [初出の実例]「いまだ古風やめず、一度一度におさえて酒ぶりかたし」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)三)
    4. 囲碁で、相手の石に接して、その進もうとする地点を占める。
      1. [初出の実例]「約 ヲサフル 碁」(出典:温故知新書(1484))
      2. 「切ておさへてはねかけて、軍(いくさ)は花の乱れ碁や」(出典:浄瑠璃・国性爺合戦(1715)九仙山)
    5. 小舟で、舟を右に向かせるように櫓(ろ)を使う。
  4. [ 三 ] 自分の支配下にとりこんで、手ばなさないようにする。
    1. 品物などについて、他人の自由にならないような処置をとる。さしおさえる。また、自分の手に入るように、前もって約束する。
      1. [初出の実例]「此の若殿の世になれば、十人扶持は押(オサ)へたもの、何とうまい口ではないか」(出典:歌舞伎・恋慕相撲春顔触(1872)序幕)
    2. 物事の大切な点を捜し出してしっかりつかむ。把握する。
      1. [初出の実例]「婦人に好れる成駒屋と男子を迷はす成田屋と成(なり)の字二つを以て押(オサ)へた今度の狂言なれば悪からう筈は無し」(出典:団団珍聞‐六九三号(1889))

押えるの語誌

( 1 )「おす(押)」に継続を表わす接尾語「ふ」の付いた形。これと語源を同じくする「おそう(おそふ)」は、語義の上では異なる変遷をたどっているが、古くは「圧」字を訓じて類似の意味に用いられることもあった。
( 2 )室町ごろから「おさゆ(る)」が使われ、「日葡辞書」にも「オサエ、ユル、エタ」とあるが、未然形・連用形は「おさふ」「おさへる」のそれと区別しにくいので、便宜上この項に入れ、「おさゆ」の項には、はっきり区別できる例のみあげた。→おさゆ
( 3 )「日葡辞書」の増補には、「おさゆる」の意味に「しいる、しいてさせる」があるが、これは[ 二 ](ロ) に当たり、「おさえて」の形で多く使われたものと思われる。→おさえて

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