天神(読み)テンジン

デジタル大辞泉 「天神」の意味・読み・例文・類語

てん‐じん【天神】

《「てんしん」とも》天の神。あまつかみ。⇔地祇ちぎ地神ちじん
菅原道真すがわらのみちざねを祭った天満宮てんまんぐうのこと。また、その祭神である道真のこと。今日では多く学問の神として信仰されている。天神様。
《揚げ代が25匁であったところから、北野天神北野天満宮)の縁日の25日に関係づけていう》江戸時代、上方遊女等級の一。大夫たゆうの次位。また、その遊女。天職
天神まげ」の略。
梅干し。また、その種の中にあるさねのこと。
能面の一。怒相の神霊用の面。菅原道真の霊を主人公とする「雷電」の前ジテのほか、「舎利」のツレなどに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「天神」の意味・読み・例文・類語

てん‐じん【天神】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 天の神。あまつかみ。
      1. [初出の実例]「天神者。伊勢。〈略〉出雲国造斎神等類是也」(出典:令義解(833)神祇)
      2. 「此天神・冥道などの守護の為に来給ふにかとぞ、人疑ける」(出典:今昔物語集(1120頃か)一三)
      3. [その他の文献]〔史記‐殷本紀〕
    2. 菅原道真を祭神とした天満宮。特に北野天満宮、太宰府天満宮湯島天神は有名。
      1. [初出の実例]「此天神に御ちかひたててざえおはする人にて」(出典:栄花物語(1028‐92頃)浦々の別)
    3. 能面の一つ。鬼神系の面で、菅原道真の怨霊を主人公とする「雷電(らいでん)」の前ジテや、「金札(きんさつ)」「藍染川(あいそめがわ)」などに用いる。
      1. 天神<b>[ 一 ]</b><b>③</b>
        天神[ 一 ]
      2. [初出の実例]「天神の面、天神の能に着しよりの名也」(出典:申楽談儀(1430)面の事)
    4. 袍・直衣(のうし)などを着た公卿風の人。
    5. 上方で、大夫の次位の遊女のこと。揚代がかつて二五匁であったので、北野天神の縁日の二五日にちなんだもの。文化(一八〇四‐一八)の頃、「天神」の文字ははばかりがあるとして「転進」と書くようにもなった。天神女郎。天職。
      1. 天神<b>[ 一 ]</b><b>⑤</b>〈人倫訓蒙図彙〉
        天神[ 一 ]人倫訓蒙図彙
      2. [初出の実例]「くれの月太夫天神位つめ 帯に白雲厂に玉章」(出典:俳諧・西鶴大句数(1677)九)
    6. 梅干し、およびその種の実(さね)のこと。
      1. [初出の実例]「おれは梅干をしゃぶったあと、〈略〉天神様まで頂かないと気がすまない」(出典:手鎖心中(1972)〈井上ひさし〉亀戸)
    7. てんじんまげ(天神髷)」の略。
      1. [初出の実例]「三線(みすじ)の師匠ならば〈略〉、いつも天神に結ひ」(出典:三人妻(1892)〈尾崎紅葉〉前)
  2. [ 2 ]
    1. 菅原道真の神号。
      1. [初出の実例]「此詩及後代、菅家人室家令北野詠之間、天神令教曰」(出典:江談抄(1111頃)四)
    2. 古代氏族の種別。神別(しんべつ)の一。天つ神の後裔とされる氏族の称。中臣・忌部・物部大伴・久米・弓削・曾禰・佐伯などの諸氏をさす。
    3. 神格の呼称。主として雷神や疫神、またはそれを祭る神社に対する。

てん‐しん【天神】

  1. 〘 名詞 〙てんじん(天神)

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百科事典マイペディア 「天神」の意味・わかりやすい解説

天神【てんじん】

天界にいる神として,地祇(ちぎ)と並び称される。雷・雨・水などと結びつけられ,荒ぶる神として恐れられる一方,農耕の神としても信仰された。また菅原道真の神号としても知られる。道真没後,京に雷雨などの災禍が続くと,御霊(ごりょう)信仰雷神信仰の流行でこれを道真の怨霊(おんりょう)のせいとして恐れ,道真の霊を北野にまつって天満大自在天神と称し,火雷天神とも呼んだ。天に住み,また天から降臨する神一般を意味する天神が道真の神号となり,邪悪をこらす神として,さらには文芸の神としてあがめられた。江戸時代には寺子屋の神とされ各地で天神祭が行われた。→天満宮
→関連項目北野北野天満宮

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天神」の意味・わかりやすい解説

天神
てんじん

宗教学上での天神(てんしん)sky godとは、在天の神というより天そのものを人格化した神をいい、未開社会には広くみられ、至高神の地位を占めることが多い。日本では天神(てんじん)・地祇(ちぎ)と並称され、地祇(くにつかみ)(国神)に対する天神(あまつかみ)をさす。神話では高天原(たかまがはら)に座(いま)す神々、また高天原から国土に降臨した神とその子孫の神々をいい、日本の神祇を区別づける重要な標準とされた。なお、後世はもっぱら菅原道真(すがわらのみちざね)を祭神とする天満天神(てんまんてんじん)をさす称号となった。

[牟禮 仁]

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普及版 字通 「天神」の読み・字形・画数・意味

【天神】てんじん

天の神。

字通「天」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の天神の言及

【菅原道真】より

… 死後,道真のたたりと称する異変が相次いで起こり,923年(延長1)罪を取り消して本官に復し,のち993年(正暦4)には正一位太政大臣を贈られた。その前から民間ではほこらを北野にたて,天満天神としてまつっており,以後,道真は文道の神として異例の尊崇を受けてきている。彼は勅命により892年《類聚国史》を撰し,また《三代実録》の編さんにもあずかった。…

【天神信仰】より

…天神は地祇(ちぎ)とならび称せられ,前者は天界にいる神と信じられた。養老神祇令では神祇官が天神地祇をまつると規定しており,令の注釈を集成した《令集解(りようのしゆうげ)》によれば,天神とは伊勢・山城鴨・住吉および出雲国造のまつる神であるという。…

【能面】より

…(2)は口を開いた阿(あ)形と,閉じた吽(うん)形に分けることができ,前者には飛出(とびで)の,後者には癋見(べしみ)の諸面があり,年たけて威力のある悪尉の諸種もここに入れてよいであろう。ほかに阿形では天神,黒髭(くろひげ),顰(しかみ),獅子口など,吽形では熊坂(くまさか)がある。能面の鬼類では女性に属する蛇や般若,橋姫,山姥(やまんば)などのあることが特筆される。…

【太夫】より

…太夫は,容色が美しいだけでなく,芸能,文学,遊戯,茶道などの広い範囲にわたる高い教養を備えることを要求された。このため,かむろ(禿)の時代から厳重に仕込まれ,新造(または引舟(ひきふね)),天神と順次に昇進するうちに選びぬかれる。かむろ1000人中で太夫に達するのは3~5人ともいわれ,元禄ごろで遊女100人に対し太夫は2~4人であった。…

【福岡[市]】より

…工業は食料品,印刷・出版,金属製品などが主で,博多織博多人形の伝統工業も特産品として全国的に販路をもっている。 市街地の中心に位置する天神地区は,西鉄のターミナルであり,市役所,デパート,銀行の高層ビル,地下街を含む商店街があって都心を形成し,博多駅周辺は合同庁舎,銀行,ホテルのビルが林立して副都心となっている。また,那珂川が二つの流れに分かれて取り囲む中洲(なかす)は,飲食店や料亭,クラブやバーが軒を接する九州随一の歓楽街である。…

※「天神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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