〘副〙 (形容詞「よろしい」の連用形から。「宜敷」は
あて字)
① (
漢文訓読で「宜」の字を「よろしく…べし」と読むところから) そうすることが当然であったり、必要であったりするさまを表わす語。すべからく。まさに。ぜひとも。必ず。
※法華義疏長保四年点(1002)四「宜しく、之に順同すべしといふぞ」
② その場の成り行きや雰囲気に適合するようにするさまを表わす語。よいほどに。ほどよく。適当に。
※自画像(1920)〈寺田寅彦〉「絵具の方ですっかり合点してよろしくやってくれるのを」
③ 特に、歌舞伎脚本のト書に用いて、その場にふさわしい適当な演技での意にいう。
※歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)二「二重舞台千嶋正が後ろに、伴蔵、丈助始近習の侍大勢並び、いづれも宜敷」
④ 好意や案ずる心を他に伝言してもらう時にいう挨拶の語。また、人に何かを頼んだりする時に添える語。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「乍恐縮かの猫へも宜しく御伝声奉願上候」
⑤ 上に記述された内容を受け、いかにもそれに似て、いかにもそれらしくの意を表わす語。
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九「高麗人(こまびと)よろしくてふ麦藁帽子で、ジット頭を制へつけて」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二「どうした、土左的宜敷(ヨロシク)といふ顔色だぜ」