宜しい(読み)ヨロシイ

デジタル大辞泉 「宜しい」の意味・読み・例文・類語

よろし・い【宜しい】

[形][文]よろ・し[シク]《動詞「寄る」の形容詞化、または「よらし」の音変化》
《「よい」の丁寧な言い方》
能力や質がすぐれているさま。程度が高い。「仕上がりはこちらが―・い」「御子息は頭が―・い」
㋑健全だ。健康だ。「気分はあまり―・くない」
㋒地位や身分が高い。また、裕福だ。「育ちが―・くていらっしゃる」
㋓有利だ。価値が高い。「この方式のほうが利率が―・い」
㋔向いている。ふさわしい。効き目がある。「客商売に―・い立地
㋕好ましい。望ましい。「看板は目立つほうが―・い」「おとなしいお子さんで―・いですね」
㋖正しい。正当だ。善だ。「心掛けが―・い」
㋗人にやさしい。人との仲が円満だ。「お二人は本当に仲が―・いのね」
㋘吉にかなって、めでたい。「本日はお日柄も―・いようで」
《「よい」の丁寧な、また尊大ぶった言い方》許容範囲内であるさま。
㋐許可できる。「お引き取りいただいても―・いですよ」「―・い。引き受けましょう」
㋑さしつかえない。支障ない。「いつでも―・いから、一度相談に来なさい」
㋒どうでもよい。不要だ。無用だ。「私のことは―・いから、どうぞそのまま続けてください」「建て前などは―・い。本音を言いたまえ」
一応の基準に達していて、とりあえず満足しておくべき意を表す。
㋐悪くはない。まずまずだ。まあまあだ。
「京に上りて宮仕へをせよ。―・しきやうにもならば、我をも訪へ」〈大和・一四八〉
㋑ひとまず安心できる状態である。ましだ。
「病にしづみて久しく籠もりゐて侍りけるが、たまたま―・しくなりて」〈新古今哀傷詞書
㋒どうというほどでもない。普通だ。通常だ。平凡だ。→良いよろしく
「春ごとに咲くとて、桜を―・しう思ふ人やはある」〈・三九〉
[類語]結構良い好ましい素晴らしい申し分ない立派見事みごと上乗何より素敵すてき最高絶妙卓抜秀逸目覚ましい輝かしいたえなるえも言われぬ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「宜しい」の意味・読み・例文・類語

よろし・い【宜】

  1. 〘 形容詞口語形活用 〙
    [ 文語形 ]よろ〘 形容詞シク活用 〙 古代では「よし」が積極的な判定を下すのに対して、「よろし」は消極的で、「よし」よりも低い評価を表わす。
  2. 好ましい。心にかなう。満足できる。
    1. [初出の実例]「沖つ鳥 胸(むな)見る時 羽叩ぎも 此し与呂志(ヨロシ)」(出典古事記(712)上・歌謡)
  3. 適当である。ふさわしい。正しい。→よろしく
    1. [初出の実例]「此が中に応(ヨロシキ)が如く、其の義を顕示すべし」(出典:弁中辺論延長八年点(930)中)
  4. 凶に対して、吉である。
    1. [初出の実例]「この十九日、よろしき日なるをとさだめてしかば」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  5. まずまずの程度である。十分ではないが、まあよい。悪くない。
    1. [初出の実例]「この歌どもを、すこしよろしと聞きて」(出典:土左日記(935頃)承平五年一月一八日)
    2. 「相応の所へよろしく仕付事のならぬ者」(出典:浮世草子・西鶴織留(1694)六)
  6. 特に、身分・家柄・経済状態・教養などがまずまずの程度である。
    1. [初出の実例]「若くよろしき男の、下衆女の名よび馴れていひたるこそにくけれ」(出典:枕草子(10C終)五七)
  7. 特に、健康の状態がまずまずの程度である。病気が小康状態である。
    1. [初出の実例]「かの山寺の人はよろしくなりて、いで給ひにけり」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
  8. 平凡である。なみ一通りである。
    1. [初出の実例]「妻は三人なむありけるを、よろしくおもひけるには、なほ世に経じとなむ思ふと、二人にはいひけり」(出典:大和物語(947‐957頃)一六八)
  9. 静まるようである。おさまりそうである。
    1. [初出の実例]「法花経講ぜさせなど為る程、地獄の熖宜く見ゆ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一四)
  10. 是認できる。許可できる。さしつかえない。
    1. [初出の実例]「よろしいよって よひから也」(出典:浪花聞書(1819頃))
  11. 相手の言ったことを了解、了承した時、また、満足ではないが、それで仕方がないと容認、また、放任していう語。わかった。
    1. [初出の実例]「よろしい分りました」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)

宜しいの補助注記

( 1 )連用形「よろしく」に見られる、いくつかの特殊な意味、用法は副詞として別項で扱った。
( 2 )動詞「よる(寄)」からヨラシという形容詞が派生し、それがヨロシに変化したもので、その方へ近寄りたいというのが原義だという説が有力である。

宜しいの派生語

よろし‐げ
  1. 〘 形容動詞ナリ活用 〙

宜しいの派生語

よろし‐さ
  1. 〘 名詞 〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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