デジタル大辞泉 「宜」の意味・読み・例文・類語 ぎ【宜】[漢字項目] [常用漢字] [音]ギ(呉)(漢) [訓]むべ うべ よろしい程よくかなっている。「機宜・時宜・辞宜・適宜・便宜」[名のり]すみ・たか・なり・のぶ・のり・のる・まさ・やす・よし[難読]宜乎うべなるかな・禰宜ねぎ むべ【▽宜/▽諾】 [副]「うべ」に同じ。「吹くからに秋の草木のしをるれば―山風をあらしといふらむ」〈古今・秋下〉 うべ【▽宜/▽諾】 [副]《平安時代以降は「むべ」と表記されることが多い》肯定する気持ちを表す。なるほど。いかにも。むべ。「山河のさやけき見れば―知らすらし」〈万・一〇三七〉 出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例 Sponserd by
精選版 日本国語大辞典 「宜」の意味・読み・例文・類語 よろしく【宜】 〘 副詞 〙 ( 形容詞「よろしい」の連用形から。「宜敷」はあて字 )① ( 漢文訓読で「宜」の字を「よろしく…べし」と読むところから ) そうすることが当然であったり、必要であったりするさまを表わす語。すべからく。まさに。ぜひとも。必ず。[初出の実例]「宜しく、之に順同すべしといふぞ」(出典:法華義疏長保四年点(1002)四)② その場の成り行きや雰囲気に適合するようにするさまを表わす語。よいほどに。ほどよく。適当に。[初出の実例]「絵具の方ですっかり合点してよろしくやってくれるのを」(出典:自画像(1920)〈寺田寅彦〉)③ 特に、歌舞伎脚本のト書に用いて、その場にふさわしい適当な演技での意にいう。[初出の実例]「二重舞台千嶋正が後ろに、伴蔵、丈助始近習の侍大勢並び、いづれも宜敷」(出典:歌舞伎・韓人漢文手管始(唐人殺し)(1789)二)④ 好意や案ずる心を他に伝言してもらう時にいう挨拶の語。また、人に何かを頼んだりする時に添える語。[初出の実例]「乍恐縮かの猫へも宜しく御伝声奉願上候」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二)⑤ 上に記述された内容を受け、いかにもそれに似て、いかにもそれらしくの意を表わす語。[初出の実例]「高麗人(こまびと)よろしくてふ麦藁帽子で、ジット頭を制へつけて」(出典:当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉九)「どうした、土左的宜敷(ヨロシク)といふ顔色だぜ」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉二) うべ【宜・諾】 〘 副詞 〙 ( 平安以降には普通「むべ」とも表記される ) あとに述べる事柄を当然だと肯定したり、満足して得心したりする意を表わす。なるほど。まことに。もっともなことに。本当に。[初出の実例]「今つくる久邇の都は山河のさやけき見れば宇倍(ウベ)知らすらし」(出典:万葉集(8C後)六・一〇三七)「吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ〈文屋康秀〉」(出典:古今和歌集(905‐914)秋下・二四九)宜の語誌( 1 )「うべ」「むべ(んべ)」両形が現われるのは「うめ」「むめ」などと同じく、mb音の前での両唇鼻音の、仮名文字への定着のさせ方の差異である。( 2 )本来は副詞だが、「うべなり」(形容動詞)など多くの語を派生した。 ぎ【宜】 〘 名詞 〙 その場にあてはまって都合がよいこと。[初出の実例]「よろしく万事の成敗宜(ギ)に中(あたり)ければ」(出典:地蔵菩薩霊験記(16C後)一二) よろしき【宜】 〘 名詞 〙 ( 形容詞「よろし」の連体形から ) ちょうどよい程度、状態。[初出の実例]「よろしきをだに、人の親はいかがは見なす」(出典:増鏡(1368‐76頃)七) よろし【宜】 〘 形容詞シク活用 〙 ⇒よろしい(宜) むべ【宜・諾】 〘 副詞 〙 ⇒うべ(宜) 出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例 Sponserd by
普及版 字通 「宜」の読み・字形・画数・意味 宜常用漢字 8画 [字音] ギ[字訓] まつる・よろし[説文解字] [甲骨文] [金文] [字形] 会意宀(べん)+且(そ)。卜文・金文の字形は、且(俎)の上に多(多肉)をおく形で象形。のち屋の形である宀に従う。その形は会意。〔説文〕七下に「安んずるなり。宀の下、一の上に從ふ。多の省聲なり」とするのは、後の字形によって説くもので、もとは俎肉をいう。肉を以て祀ることをいい、卜辞に「己未、義京(軍門の名)に羌三人を宜(ころ)し、十牛を卯(さ)かんか」とあって、宜とは肉を殺(そ)いで俎上に載せ、これを以て祀ることで、その祭儀をいう。のち祖霊にし、人をする意に用い、金文に「宜(そんぎ)」という。〔詩、大雅、鳧〕「尸(こうし)來(ここ)に燕し來(ここ)に宜す」とあるのも同じ。〔詩、風、女曰鳴〕「子と之れを宜(さかな)とせん」は燕食の意。神が供薦を受けることを「宜し」といい、適可の意となる。[訓義]1. まつる、まつり。2. さかな。3. よろし、ただしい、やすんずる。4. 本来あるべき状態、よろしく~すべし、ほとんど。[古辞書の訓]〔名義抄〕宜 サカナ・ヨロシ・ヨシ・ヨロシク・マサニ・オク・ムベナフ・ムベナフ・カナヘリ・ノスベシ 〔字鏡集〕宜 サカナ・ムベナフ・ヨロシク・カナヘリ・ベシ・ヤスシ・アタル・ヨロシ・カナフ・スベシ・マサニ・ヨシ・ヲク[声系]〔説文〕三上に宜声として誼を収め、「人の宜しとするなり」という。神に供えることは宜、人の関係には誼という。[語系]宜・義ngiaiは同声。宜は俎肉を供え、義は羊を我(鋸(のこぎり))で截って供える意。その供薦が神意に適うことから、宜は適宜、義には義正の意がある。神意の「よろし」とするところは、また「ただし」とされるところである。[熟語]宜可▶・宜家▶・宜穀▶・宜社▶・宜春▶・宜称▶・宜男▶・宜弟▶・宜適▶・宜当▶・宜年▶・宜便▶・宜禄▶[下接語]違宜・乖宜・機宜・権宜・事宜・時宜・辞宜・処宜・地宜・適宜・土宜・物宜・便宜 出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報 Sponserd by