宜(漢字)

普及版 字通 「宜(漢字)」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音]
[字訓] まつる・よろし

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
宀(べん)+且(そ)。卜文・金文字形は、且(俎)の上に多(多肉)をおく形で象形。のち屋の形である宀に従う。その形は会意。〔説文〕七下に「安んずるなり。宀の下、一の上に從ふ。多の省聲なり」とするのは、後の字形によって説くもので、もとは俎肉をいう。肉を以て祀ることをいい、卜辞に「己未、義京(軍門の名)に羌三人を宜(ころ)し、十牛を卯(さ)かんか」とあって、宜とは肉を殺(そ)いで俎上に載せ、これを以て祀ることで、その祭儀をいう。のち祖霊にし、人をする意に用い、金文に「宜(そんぎ)」という。〔詩、大雅、鳧〕「尸(こうし)來(ここ)に燕し來(ここ)に宜す」とあるのも同じ。〔詩、風、女曰鳴〕「子と之れを宜(さかな)とせん」は燕食の意。神が供薦を受けることを「宜し」といい、適可の意となる。

[訓義]
1. まつる、まつり。
2. さかな。
3. よろし、ただしい、やすんずる。
4. 本来あるべき状態、よろしく~すべし、ほとんど。

[古辞書の訓]
名義抄〕宜 サカナ・ヨロシ・ヨシ・ヨロシク・マサニ・オク・ムベナフ・ムベナフ・カナヘリ・ノスベシ 〔字鏡集〕宜 サカナ・ムベナフ・ヨロシク・カナヘリ・ベシ・ヤスシ・アタル・ヨロシ・カナフ・スベシ・マサニ・ヨシ・ヲク

[声系]
〔説文〕三上に宜声として誼を収め、「人の宜しとするなり」という。神に供えることは宜、人の関係には誼という。

[語系]
宜・義ngiaiは同声。宜は俎肉を供え、義は羊を我(鋸(のこぎり))で截って供える意。その供薦が神意に適うことから、宜は適宜、義には義正の意がある。神意の「よろし」とするところは、また「ただし」とされるところである。

[熟語]
宜可・宜家・宜穀宜社・宜春・宜称・宜男・宜弟・宜適・宜当宜年・宜便・宜禄
[下接語]
違宜・乖宜・機宜・権宜・事宜・時宜辞宜・処宜・地宜・適宜・土宜・物宜・便宜

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報