印章に代えて親指(拇指)の先端(第一関節から先の部分)の腹に朱肉,インキ等をつけて押す印,またはそのようにして押された指の跡(印顆)をいう。しかし実際には親指以外の指とくに人差指を用いることも多い。そのため指印といわれることもある。また古くは爪印ともいわれた。指紋によって本人が押したかどうかを識別することが可能であるので,押印する必要がある者が印章を持ち合わせていない場合に臨時のものとして用いられることがある。もっとも,取引に関しては,重要な文書(たとえば契約書)に関して用いられることはなく,せいぜい日常的な,あまり重要でない物の受領証等に使用されるにすぎない。法律上の規定としては,戸籍の届出にあたって届出人がみずから署名することができず,かつ印章を所持していない場合に例外的に他人に氏名を代署させたうえ拇印を押すことが認められているにすぎない(戸籍法施行規則62条1項)。刑事事件でとくに逮捕,拘留されている被疑者等の供述調書などについては,被疑者等は印章を持ち合わせていないのが通常であるから,指印(刑事訴訟規則61条1項)が多用されている。この場合には指紋をとくに明瞭にするために,利き手ではないほうの手の人差指を使用するのが通常である。なお,法律上は拇印も印章による押印も同一の効力が認められることに留意する必要がある。
執筆者:栗田 哲男
歴史的には指頭(主として人差指)に墨をぬり(朱肉の使用例はない)署名代用に文書に押した。女性拇印が大半を占めるので女性の花押代用といえる。日本の拇印の初見は1126年(大治1)であるが,以降継続して現代に至っている。指紋の考えが過去の時代にあったかどうか,その点は不明ながら,むしろ否定的である。変則的な拇印には,三指を同時に使ったものもあり,また手印(ていん)から一変して掌の部分を欠いて四指のみが拇印となって紙面に印された(臨終遺言の場合など)ものもある。
執筆者:荻野 三七彦
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指印(ゆびいん)、爪印(つめいん)、爪判(つめばん)ともいう。親指(通常は右)の裏に印肉をつけて印章のかわりに押すこと。平安末期には拇印を押した文書が現れており、これは手印(しゅいん)(手のひらに印肉をつけて押す)の簡略化と考えられる。法律上または取引上押印を要求される場合、印章のないときに拇印で代用することが一般に行われている。現行法上も戸籍上の届け出または申請には拇印で代用することが認められており(戸籍法施行規則62条)、自筆証書による遺言の署名押印の場合も拇印でよいと解される。また刑事訴訟規則によれば、公務員以外の者が署名押印すべき場合には、拇印(指印)で代用できることになっている(同規則61条)。
[高橋康之]
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出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…なお,花押と略押を区別する基準は必ずしも明確ではなく,漢字を極端に草体化したものや,その変形を略押に含める見方もある。 花押の代用には,略押のほかに画指(かくし),拇印(ぼいん),つめ印,筆軸印(筆印)がある。画指は令制(戸令七出条)に由来して歴史は古いが,その使用例は少なく,また13世紀中ごろ以後は使用例が見られず,拇印も古代・中世には使用例が少なく,つめ印が盛行するのは近世に入ってからで,中世を通じて広く用いられたのは,略押と筆軸印であった。…
※「拇印」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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