(読み)セツ

デジタル大辞泉 「拙」の意味・読み・例文・類語

せつ【拙】[漢字項目]

常用漢字] [音]セツ(漢) [訓]つたない まずい
つたない。まずいこと。「拙攻拙守拙速拙劣古拙巧拙稚拙
自分や自分に関することを謙遜していう語。「拙稿拙者拙宅

せつ【拙】

[名・形動]じょうずでないこと。つたないこと。また、そのさま。⇔
主人は寧ろ―な部類に属すると云ってよろしい」〈漱石吾輩は猫である
[代]一人称人代名詞男性自分自身をへりくだっていう語。遊里などで用いられた。
「―も今日たまげて仕舞いやしたのサ」〈木下尚江良人の自白

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精選版 日本国語大辞典 「拙」の意味・読み・例文・類語

せつ【拙】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙 ( 形動 ) つたないこと。へたなこと。巧者でないこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「卒援毫不拙」(出典:俳諧・猿蓑(1691)跋)
    2. 「ヱヱよく他(ひと)のことは難非をいふがおめへの駄じゃれは拙(セツ)だ拙だ」(出典:西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉七)
  2. [ 2 ] 〘 代名詞詞 〙 自称。男性が自分をへりくだっていう語。近世の遊里などで、きどった表現として用いられた。
    1. [初出の実例]「入夜九条殿へ参。拙也、口中腫痛之間、頓退出」(出典:慶長日件録‐慶長九年(1604)一二月二〇日)
    2. 「拙(セツ)も遅参に及んではそ(其)の罪また軽からず」(出典:滑稽本・七偏人(1857‐63)二)

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普及版 字通 「拙」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] セツ
[字訓] つたない

[説文解字]

[字形] 形声
声符は出(しゆつ)。〔説文〕十二上に「巧ならざるなり」とあり、不器用の意。〔老子、四十五〕に「大巧は拙なるが(ごと)し」の語がある。守拙・養拙は高尚な生活態度とされ、芸術の分野においても重要な理念の一つとされた。

[訓義]
1. つたない、たくみでない、へた。
2. まずい、にぶい、おとる、役立たぬ、おろか。

[古辞書の訓]
名義抄〕拙 ツタナシ・カタクナシ・ニブシ・コロス 〔字鏡集〕拙 ツタナシ・ニブシ・カタクナシ・イツハルココロ・ヨ(コ)ロス

[語系]
拙tjiuat、黜thiutは声義近く、円滑に対して詰(きつくつ)なさまのものをいう。

[熟語]
拙悪・拙医・拙易・拙拙艱拙宦・拙眼・拙計・拙・拙見・拙工拙巧・拙妻・拙射・拙手・拙守・拙匠拙掌・拙誠・拙説拙僧・拙速・拙直拙惷・拙訥・拙筆・拙夫・拙婦拙謀拙朴拙樸拙昧・拙劣拙陋・拙惑
[下接語]
拙・下拙・拙・宦拙・頑拙・鳩拙・計拙・蹇拙・言拙・古拙・語拙・工拙・巧拙・才拙・策拙・蚩拙・事拙・持拙・手拙・守拙・醜拙・笑拙・性拙・浅拙・粗拙・蔵拙・智拙・稚拙・駑拙・鄙拙・方拙・樸拙・笨拙・野拙・用拙・慵拙・養拙

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

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