(読み)コウ

デジタル大辞泉 「更」の意味・読み・例文・類語

こう【更】[漢字項目]

常用漢字] [音]コウ(カウ)(漢) [訓]さら ふける ふかす かえる かわる
〈コウ〉
新しいものと入れかわる。入れかえる。「更改更新更迭変更
夜を五つに分けた時刻。「三更初更
ふける。「深更
(「」の代用字)よみがえる。「更生
〈さら〉「更地今更
[名のり]とお・とく・のぶ
[難読]更衣ころもがえ更紗サラサ

ふけ【更/深】

深くなること。夜・季節・年月などがふけること。「夜―」
「はかなくもわが世の―を知らずしていざよふ月を待ちわたるかな」〈千載・雑上〉
(深)「深田ふけた」の略。〈和英語林集成〉→ふかだ(深田)

さら【更】

[形動ナリ]
(多く「言へばさらなり」「言ふもさらなり」の形で用いて)いまさらめいているさま。わざとらしいさま。
「内の心は言へば―なり」〈かげろふ・上〉
《「言へばさら」「言ふもさら」の略》いうまでもないさま。もちろんだ。
「夏は夜、月の頃は―なり」〈・一〉

こう〔カウ〕【更】

夜警の者が更代こうたいする意から》一夜を五等分した時間の単位。初更から五更まである。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「更」の意味・読み・例文・類語

さら【更】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用 〙
    1. ( 多く「言えば」「言うも」に付けて用いる ) いまさらめいたさま。わざとらしいさま。
      1. [初出の実例]「身の秋をおもひみだるる花の上に内のこころはいへばさらなり」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
      2. 「殿・上思し惑ふさま、悲しともいへばさらなり」(出典:増鏡(1368‐76頃)三)
    2. ( 「言えばさら」「言うもさら」の略 ) いうまでもないさま。当然であるさま。
      1. [初出の実例]「風ふきて、ひさしううつりゆくほどに、とりすぎぬ。『さらなれば』とてかへる」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
      2. 「姫君の御有様さらなる事なれど」(出典:栄花物語(1028‐92頃)かがやく藤壺)
  2. [ 2 ] 〘 副詞 〙 全く。まるで。いっこう。
    1. [初出の実例]「このかき物さらたにんのみるべきものにあらず」(出典:虎明本狂言・脇狂言之類序(室町末‐近世初))

更の補助注記

( 1 )平安時代においては、類似の「いふもおろかなり」が「いふも」「いへば」を伴うのが普通であるのに対し、「さらなり」ではこれを脱落させた用法の方が圧倒的に多い。
( 2 )[ 二 ]の用法は近世頃から生じたものであるが、陳述副詞化した「さらに」の「に」が落ちたものである。


こうカウ【更】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 夜警の者が更代(こうたい)する意から ) 日暮れから夜明けまでを五等分したもので、順に初更・二更・三更・四更・五更とする。季節によって、日暮、夜明けの時刻は異なるので、更の長さも異なる。五更。
    1. [初出の実例]「更は時刻を云たぞ。初夜を一更にして、よあくる時分は第五番の更ぞ」(出典:玉塵抄(1563)一〇)
    2. 「火を警め更を報ずる柝木榾々更を打す」(出典:東京新繁昌記(1874‐76)〈服部誠一〉初)
    3. [その他の文献]〔杜荀鶴‐宿欒城駅却寄常山張書記詩〕
  3. あらためること。また、入れかえること。
    1. [初出の実例]「代は更の義也」(出典:神皇正統記(1339‐43)上)
    2. [その他の文献]〔礼記‐儒行〕

更の補助注記

( について ) 春分・夏至・秋分・冬至における初更・二更・三更・四更・五更の時刻については、各々の項目を参照のこと。


さら‐なる【更】

  1. 〘 連体詞 〙 重ねての。ますますの。「更なる発展を祈る」→さら(更)さらに(更━)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「更」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 7画

(旧字)
7画

(異体字)
9画

[字音] コウ(カウ)
[字訓] かえる・あらためる・さらに・ふける

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
もとに作り、(丙)(へい)+攴(ぼく)。は武器などの台座の形で、(商)・などはその形に従う。攴は打つこと。金文を重ね、その下から攴を加える形があり、更改・変更のための呪的な方法と思われる。〔説文〕三下に「改なり」とあり、改はもとに作り、巳(蛇)を殴(う)つ呪詛の行為。これによって事態の変改を求める。變(変)は神に祝する意の言の両旁に呪飾を加え、これを殴って事態の変更を求める意。・改・變はみな相似た方法で事態の変改を求める呪的方法を示す字である。みな禍殃を祓うことをいう。国語で「さらに」は、「あらためて」「あたらしく」の意がある。

[訓義]
1. かえる、あらためる。
2. かわる、あらたまる。
3. さらに、つぐ、あいつぐ、ふたたび。
4. こもごも、いれかわる。
5. へる、ときをへる、ふける。

[古辞書の訓]
名義抄〕更 タガヒニ・サラニ・カサヌ・カサナル・ニハカナリ・カタヘ・アヤマル・カヘル・マタ・アラタム・アタラシ・カフ・カハル・カハルカハル・チナミ・フル・タガヒ・アカツキ・フ・ツグノフ

[声系]
〔説文〕に声として哽・・梗・など七字を収める。哽咽・骨梗塞の義の字が多く、おそらくの声義を承けるところがあろう。それならばは、その呪的方法によって梗塞し、事態を変更する意をもつものと思われる。

[語系]
・梗・keangは同声。また抗khang、衡heang、強giang、剛kang、勁kiengも声義に通ずるところがある。

[熟語]
更衣・更易・更嫁・更改・更革更換・更議・更休・更居・更元・更鼓更互・更行更索・更始・更次・更事更酌更嘗・更鐘・更深・更新・更人・更生更正・更制更践・更・更選更籤・更爽・更続・更代・更替・更端・更遅更籌・更張・更直・更定更訂更逓・更迭・更犯・更番・更服更覆・更変・更名・更夜・更闌・更履・更歴・更老・更漏
[下接語]
改更・革更・寒更・厳更・五更・歳更・三更・初更・曙更・深更・践更・半更・変更・夜更

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【時刻】より

… また民間では不定時法が使用され,夜明けの明,日暮れの昏の2刻半を除いて昼は朝,禺,中,晡,夕に分け,夜は甲,乙,丙,丁,戊に分けて使用していた。夜のこの時法は〈更〉という表現が用いられ,それぞれ初更,2更,3更,4更,5更ともいわれた。 インドの時法で仏典に見えるものは,最短時間を刹那,120刹那を呾刹那,60呾刹那を1臘縛,30臘縛を1牟呼栗多,5牟呼栗多を1時,6時を1日としているが,どこまで実用されたものかわからない。…

※「更」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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