長野県長野市南部の地区名。埴科(はにしな)郡の旧町を,1966年長野市に編入。近世は松代藩の城下町。1560年(永禄3)ころ武田信玄が海津(かいづ)城を築き,後年松代城と改称した。1598-1616年(慶長3-元和2)の城主田丸直昌,森忠政,松平忠輝のもとで,城の拡張と城下町の形成が進んだ。城下町が完成したのは,松平忠昌,酒井忠勝を経て,1622年に上田から移封した真田信之のときで,信之は家臣団の屋敷割りを行い,町人町を整えた。以後真田氏10万石の城下町として廃藩置県に至る。城の南,大手前の殿町,清須町に重臣・上士の屋敷を配し,その南方を西から東へ通り,かぎの手に折れて北上する北国脇往還沿いに,馬喰町,紙屋町,紺屋町,伊勢町,中町,荒神町,肴町,鍛冶町の町人町(松代八町)が置かれた。さらにその外周部に,竹山町,代官町,馬場町,柴町,田町,十人町,松山町など中・下級武家屋敷を配置した。戸口をみると,徒士以上の家臣数は終始800~900人程度で,家族,奉公人を合わせて推定4000~5000人。松代八町は1671年(寛文11)406軒,1767年(明和4)2319人,1869年(明治2)685軒,2800人と漸増した。しかし,町人町にはほかに町外町と称する寺・武家屋敷の長屋などに住む職人・雑業層があり,1864年(文久4)32組,710軒,2710人を数える。八町・町外町の町人全戸口は1869年1376軒,5314人。武家人口を合わせて1万人内外というのが維新期の町人口であった。
城下町は町奉行が管轄し,町年寄,検断と各町の名主・長町人が町政にあたった。町年寄は御用達大商人の八田(はつた)家など4家で町政全般を統轄し,検断は公用荷物や旅人の監査が主務で,町名主は長町人の助力を得て宗門改め,祇園祭執行,町役割当て等々に従事した。町人身分階層にはほかに大屋,借屋,役代,加来,下人などがある。六斎市が伊勢町,中町,荒神町に立ち,藩の国産専売政策から1826年(文政9)糸会所,33年(天保4)産物会所,66年(慶応2)商法社が置かれた。数度の大火と,1847年(弘化4)の善光寺地震,70年の午札(うまさつ)(松代)騒動で大きな被害を受けた。
執筆者:古川 貞雄 明治以降,製糸業がおこり,六工(ろつく)社など近代的工場が開設され,1907年ころには女工数3000以上に達した。しかし,交通の幹線からはずれたこと,製糸業が隣接の須坂市に移行したことなどで大きく発展することはなかった。かつての町並みがよく保存され,藩主が居住した真田邸跡,佐久間象山がつくった電信塔,藩校の文武学校など史跡や文化財も多い。市街地南方の皆神山付近には,第2次大戦末期に建設された大本営の地下壕があり,一部は気象庁の地震観測所(現,精密地震観測室)として利用されている。1965年以降数年にわたり,松代群発地震が起きた。
執筆者:市川 健夫
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長野市南東部の一地区。旧松代町。戦国末、甲斐(かい)(山梨県)の武田氏が信濃(しなの)北部攻略の際の根拠地とした海津城(かいづじょう)が置かれた。近世は真田氏(さなだうじ)10万石の城下町として発展し長野盆地の中心となった。明治以降、信越線の敷設が松代を外れ、長野が県都になったため町勢は衰退した。国の史跡に松代城(海津城)跡、松代藩の旧文武(ぶんぶ)学校、菩提寺(ぼだいじ)(長国寺(ちょうこくじ)にある真田家墓所)があり、このほか真田邸跡、佐久間象山(しょうざん)邸跡などが残り、城下町の景観が各所にみられる。
[小林寛義]
『『松代町史』上下(1929・松代町)』
新潟県南部、東頸城郡(ひがしくびきぐん)にあった旧町名(松代町(まち))。現在は十日町(とおかまち)市の西部を構成する。旧松代町は1954年(昭和29)町制施行。1959年奴奈川(ぬなかわ)村を編入。2005年(平成17)十日町市に合併。犬伏(いぬぶせ)は西頸(せいけい)の奴奈川姫伝説に対する東の奴奈川族発祥伝説をもち、松苧神社(まつおじんじゃ)は松之山郷66か村の総鎮守であった。本殿は国の重要文化財に指定されている。松代地区は、渋海川(しぶみがわ)渓谷に沿う買い物町で、国道253号、353号、403号の便を得て県立松代高校もここにある。例年3~4メートルの豪雪に悩まされ、季節労働と棚田(たなだ)に依存して生計をたてている。
[山崎久雄]
『『松代町郷土誌』3冊(1964~1971・松代町)』
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