流離う(読み)サスラウ

デジタル大辞泉 「流離う」の意味・読み・例文・類語

さすら・う〔さすらふ〕【流離う】

[動ワ五(ハ四)]どこというあてもなく、また、定まった目的もなく歩きまわる。漂泊する。流浪るろうする。「雪の広野を―・う」
[動ハ下二]に同じ。
「我身かくてはかなき世を別れなば、いかなるさまに―・へ給はむ」〈須磨
[類語]さまよううろつく出歩くほっつくぶらつく徘徊彷徨ほっつき歩くほっつき回るぶらぶらうろちょろうろうろちゃかちゃか低回流浪放浪漂泊流離漂流浮浪右往左往

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「流離う」の意味・読み・例文・類語

さすら・うさすらふ【流離】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( 中世には「さずらふ」とも )
    1. 身を寄せる所も定まった目的もなく、あちこちさまよい歩く。漂泊する。放浪する。さまよう。さそらう。
      1. [初出の実例]「根の国、底の国に坐す速さすらひめといふ神、持佐須良比(サスラヒ)失ひてむ」(出典:延喜式(927)祝詞)
      2. 「足なへの御病にて、天の岩舟にて、漂泊(サスラ)ひ給へど」(出典:歌舞伎・傾城飛馬始(1789)三段)
    2. 流罪左遷などにあって、遠く離れた土地に行く。島流しになる。
      1. [初出の実例]「謫 サズラフ 謫居(タクキョ)也」(出典:いろは字(1559))
      2. 「われ過(あやまち)なくて左遷(サスラフ)こと、彼(かの)妬婦奸計によれりとしりながら」(出典:読本・新累解脱物語(1807)四)
    3. 気持などが離れる。また、気持などが定まらない。
      1. [初出の実例]「上下の心を離(サスラフ)賤妾愚忠なりとも能く強敵を敗(やぶ)らむ」(出典:大唐西域記長寛元年点(1163)七)
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙 ( 室町時代頃からヤ行にも活用した )
    1. [ 一 ]に同じ。
      1. [初出の実例]「百姓、流離(サスラヘ)ぬ」(出典:日本書紀(720)崇神六年(寛文版訓))
      2. 「頼み来(こ)し我が心にも捨てられて世にさすらふる身を厭ふかな〈藤原家隆〉」(出典:玉葉和歌集(1312)雑五・二五一九)
    2. [ 一 ]に同じ。

流離うの語誌

( 1 )[ 一 ]の挙例の「いろは字」のほか、「日葡辞書」に「サスラエ、ユル、エタ、または、sazuraye(サズラエ)」とあるように、中世には第二音節が濁音の語形も見られた。
( 2 )活用に関しては、古くから四段と下二段が拮抗していたが、中世以降は四段が日常口頭語的、下二段が雅語的といった位相の違いも見られる。近代以降は四段活用が優勢となった。
( 3 )「和英語林集成(初版)」には「Saszraye, ru, ta サスラヘル」と下一段活用があげてあり、文書語または廃れた語を表わす記号が付されている。


さそら・うさそらふ【流離】

  1. ( 「さすらう(流離)」の変化した語 )
  2. [ 1 ] 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙 あちこちさまよい歩く。漂泊する。さすらう。
    1. [初出の実例]「一の書先有り。俳佪(サソラフ)こと帳望す」(出典:石山寺本大唐西域記院政期点(1164‐90頃)八)
  3. [ 2 ] 〘 自動詞 ハ行下二段活用 〙 [ 一 ]に同じ。
    1. [初出の実例]「よにいふ甲斐なくなり、さそらへん時にを」(出典:宇津保物語(970‐999頃)楼上下)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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