(読み)モ

デジタル大辞泉 「藻」の意味・読み・例文・類語

も【藻】

海水・淡水中で生育する植物。藻類そうるい。また、海草や水草をさす。 花=夏》「―の花の重なりあうて咲きにけり/子規
[類語]緑藻緑藻植物紅藻紅藻植物褐藻青味泥あおみどろ青海苔海苔布海苔馬尾藻ほんだわら鹿尾菜ひじき水雲もずく若布昆布荒布毬藻

そう【藻】[漢字項目]

常用漢字] [音]ソウ(サウ)(呉)(漢) [訓]
ソウ
水中に生える草の総称。も。「藻類海藻珪藻けいそう
言葉あや。あやのある文章。「才藻詞藻文藻
〈も〉「藻屑もくず藻塩金魚藻
[難読]毬藻まりも

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精選版 日本国語大辞典 「藻」の意味・読み・例文・類語

そうサウ【藻】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 水中にはえる草。みずくさ。もぐさ。も。〔詩経‐召南〕
  3. 美しい模様。あやもよう。いろどり。〔曹植‐七啓〕
  4. あやのある文章。美辞。
    1. [初出の実例]「梅苑芳席、群英摛藻、松浦玉潭、仙媛贈答」(出典:万葉集(8C後)五・八六四右詞文)
    2. [その他の文献]〔漢書‐叙伝上〕

も【藻】

  1. 〘 名詞 〙(そう)類のこと。また、水中に生じる植物の総称。
    1. [初出の実例]「沖つ茂(モ)は 辺には寄れども さ寝床も 与はぬかもよ 浜つ千鳥よ」(出典:日本書紀(720)神代下・歌謡)

藻の語誌

和歌では、「も」単独で詠まれることは少なく、「玉藻」「藻塩」などの複合語で多く見られる。

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普及版 字通 「藻」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 19画

(旧字)
20画

(異体字)
18画

[字音] ソウ(サウ)
[字訓] も・あや

[説文解字]

[字形] 形声
正字はに作り、(巣)(そう)声。は細い木の枝を組み、あやなす意。〔説文〕一下に「水艸なり」とし、重文としてを録する。が通行の字である。水藻の文様のような美しさから、藻麗の意となり、文彩・文章に関して、文藻・才藻という。

[訓義]
1. も、水藻。
2. あや、かざる、えがく。
3. 美しい詩文。
4. 五色の糸、五色の玉。
5. 美しさを定める、品藻。

[古辞書の訓]
和名抄 毛(も)、一に云ふ、毛波(もは) 〔名義抄 モ・モハ・ウルハシ・マダラカニ/ ニギメ/滑 アラメ/凝 コルモハ・ココロフド/ ナノリソ 〔字鏡集〕 モ・ハモ・ウルハシ・マダラカニ

[熟語]
・藻詠・藻火・藻雅・藻絵・藻・藻・藻鑑・藻鏡・藻玉・藻絢・藻采・藻思・藻質・藻・藻舟・藻・藻仗・藻飾・藻縟・藻井・藻・藻文・藻抃・藻密・藻麗・藻・藻練・藻朗
[下接語]
藻・詠藻・睿藻・華藻・海藻・藻・綺藻・魚藻・玉藻・芹藻・珪藻・才藻・采藻・詞藻・辞藻・縟藻・水藻・井藻・盛藻・藻・天藻・徳藻・品藻・藻・浮藻・風藻・文藻・黼藻・鳳藻・緑藻・麗藻

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「藻」の意味・わかりやすい解説


植物学上では藻類に属する植物群をさすが、一般には水生の顕花植物などに対しても用いられる。語源的には、水の流れに身を任せて柔らかに動く、陸上植物に似た水生植物を中心として使われたものと思われる。顕花植物のアマモスガモなどがその例である。これに対して、陸上植物とは形態の異なる海藻には、ワカメ、アラメ、ヒロメコンブの古名)などのように「め」(布)の語が用いられてきた。

[新崎盛敏]

文学

水草類の総称。藻葉(もは)、藻草(もぐさ)ともいう。上代文学の用例をみると、「川藻」など淡水のものもあるが、海藻類が圧倒的に多く、「め」は海藻の意であり、「浜菜」「磯(いそ)の草」なども海浜に関連する。「玉藻」「斎(い)つ藻」は美称であり、「沖つ藻」「辺(へ)つ藻」は藻のある場所からの呼称である。「め」の類には、「わかめ」「あらめ」「ひろめ」「にきめ」などがある。「あしつき」「なのりそ(ホンダワラ)」「なはのり」「みる(海松)」なども藻類である。『万葉集』巻二の「つのさはふ 石見(いはみ)の海の 言(こと)さへく 辛(から)の崎なる 海石(いくり)にそ 深海松生(ふかみるお)ふる 荒磯(ありそ)にそ 玉藻は生ふる 玉藻なす なびき寝し児(こ)を 深海松の 深めて思へど……」(柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ))、などにその用法がうかがわれる。『古今集』には、「藻」「玉藻」「藻屑(もくず)」「浮きめ」「海松め」「磯菜」「ねぬなは(ジュンサイ)」などの用例があり、恋一「沖辺(おきへ)にも寄らぬ玉藻の波の上に乱れてのみや恋ひわたりなむ」、恋三「みるめなき我が身をうらと知らねばや離(か)れなで海人(あま)の足たゆく来る」(小野小町(おののこまち))など、「玉藻」や「海松め」(「見る目」と懸けることが多い)などは歌語として頻用されるようになった。また、恋五「海人の刈る藻に住む虫のわれからと音をこそ泣かめ世をば恨みじ」(藤原直子)により、「海人の刈る藻に住む虫」は、自分から招いた不運という意に用いられるようになった。「藻塩(もしほ)」は『万葉集』以来の歌語であるが、『源氏物語』には「海人の焚(た)く藻」「藻塩」「藻塩草」「藻屑」などがみえ、「裳(も)」に「藻」を懸ける修辞もあり、また、「浮きめ」「長め」「海松め」なども懸詞(かけことば)を伴って用いられている。季題は、「わかめ」「ひじき」「もづく」「みる」「のり」などいずれも春。「なのりそ」「こんぶ」など夏。季節のまたがるものもある。

[小町谷照彦]

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改訂新版 世界大百科事典 「藻」の意味・わかりやすい解説

藻 (も)

水中に生えている植物。もともと水生生活をする藻類だけでなく,陸上植物から水生に変わったアマモやキンギョモなどの顕花植物,サンショウモやミズニラなどのシダ植物,マリゴケなどのコケ植物も漠然とまとめて呼ぶ。
執筆者:

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動植物名よみかた辞典 普及版 「藻」の解説

藻 (モ)

植物。沈水植物の総称

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【海藻】より

…海産植物のうちプランクトン以外の定着性のもので,日本では古くから食用にされ,親しまれてきた種類も少なくない。海藻はseaweedまたはmarine algaに当たり,海に生育する葉・茎・根の区別が明りょうでない隠花植物の総称である。分類上は緑藻,褐藻および紅藻が主体である。…

※「藻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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