煽る(読み)アオル

デジタル大辞泉 「煽る」の意味・読み・例文・類語

あお・る〔あふる〕【×煽る】

[動ラ五(四)]
うちわなどで風を起こす。また、風が火の勢いを強める。「うちわで―・って火をおこす」
風が物を揺り動かす。また、風を受けて物が動く。「強風テントが―・られる」
通路ひらきが―・っているので」〈紅葉多情多恨
おだてたりして、相手がある行動をするように仕向ける。たきつける。扇動する。「競争心を―・る」
物事に勢いをつける。「人気を―・る」
(「呷る」と書く)酒などをひと息に飲む。「毒を―・る」
写真で、煽り4を上向きにして写す。また、低い位置から上向きに写す。
相場高騰をねらって、意図的に大量に買う。
自動車運転で、前を走る車の後ろにぴったり付いて走行する。→煽り運転
あぶみ障泥あおりをけって馬を急がせる。
「馬をいたく―・りければ、馬くるひて落ちぬ」〈宇治拾遺・一三〉
[類語](1あおぐ/(3けしかけるたきつける煽り立てるアジる吹っかける挑発する扇動する火を付ける火に油を注ぐ知恵を付ける入れ知恵差し金/(5飲み干す

あふ・る【×煽る】

[動ラ五(四)]あおる」の俗な言い方。「人気を―・る」
[補説]「あおる」の歴史的仮名遣い「あふる」を、そのまま読んだもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「煽る」の意味・読み・例文・類語

あお・るあふる【煽・呷】

  1. [ 1 ] 〘 他動詞 ラ行五(四) 〙
    1. 風などが吹いたり、風を起こしたりして物を動かす。翻す。吹き動かす。
      1. [初出の実例]「皷翅して翬々然たりとは、はをあをって飛たことぞ」(出典:玉塵抄(1563)一二)
    2. 火気を盛んにするため、うちわなどを動かして風を起こす。また、そのような動作で板などを動かす。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    3. ものごとを激しい勢いで動かす。ものごとに勢いをつける。
      1. [初出の実例]「おさよはぢっとして居られないやうに、心が煽(アフ)られた」(出典:微温(1909)〈水野葉舟〉五)
    4. 自分の思うようにさせるためにおだてそそのかす。扇動する。また、相手を圧倒して自分の思いどおりにさせる。
      1. [初出の実例]「船公、其様(そんな)に煽(アフ)ってくれめえよ」(出典:人情本・花の志満台(1836‐38)二)
      2. 「手綱を持って扇動(アヲ)ると馬がひょこひょこ歩行(あるく)から」(出典:落語・玉の輿(1894)〈禽語楼小さん〉)
    5. ( 呷 ) 酒などを一気に飲む。仰向いてぐっと飲む。
      1. [初出の実例]「夫だからおらアぐい呑はしねへ。てめへこそ時々疳積(かんしゃく)で青(アヲ)るじゃアねか」(出典:洒落本辰巳婦言(1798)宵立の部)
    6. 取引相場で、相場を思惑通りに変動させるため、大量に売り、または買いを行なう。〔取引所用語字彙(1917)〕
    7. カメラに「あおり(煽)」をつける。また、低い位置から上向きにして写す。
  2. [ 2 ] 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙 風などのために物が動く。
    1. [初出の実例]「階子口(はしごぐち)への通路の扉(ひらき)が翻(アフ)ってゐるので」(出典:多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉後)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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