(読み)キツネ

デジタル大辞泉 「狐」の意味・読み・例文・類語

きつね【×狐】

イヌ科の哺乳類。体長45~90センチ、尾長30~55センチ。毛色は主に橙褐色。口先が細くとがり、耳が三角で大きく、尾は太い。雑食性で、ノネズミを狩るときには高く跳躍して前足で押さえる。日本にはキタキツネ・ホンドギツネの2亜種がすむ。森林や草原のほか人家周辺にも現れ、民話に多く登場。人を化かすといわれ、また稲荷神の使者ともされる。 冬》公達きんだちに―化けたり宵の春/蕪村
人をだます、ずるがしこい人。
キツネ油揚げが好物といわれるところから》
稲荷鮨いなりずし
㋑「狐饂飩きつねうどん」「狐蕎麦きつねそば」の略。
《化粧をして男を迷わすところから》遊女
歌妓ねこ箱持はこや案内しるべき、―は引手の家婢じょちゅうにひかれ」〈魯文安愚楽鍋
狐拳きつねけん」の略。
[類語]白狐北極狐北狐銀狐

こ【狐】[漢字項目]

[音]コ(漢) [訓]きつ
キツネ。「狐疑狐狸こり白狐びゃっこ
難読狐狗狸こっくり狐臭わきが

きつ【×狐】

キツネ古名
「行方のしれぬは、どうでお―の業かしれぬ」〈伎・韓人漢文〉

けつね【×狐】

(主に関西で)きつね。「うどん」

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精選版 日本国語大辞典 「狐」の意味・読み・例文・類語

きつね【狐】

  1. 〘 名詞 〙
  2. イヌ科の哺乳類。体長七〇センチメートルくらい。体は細く、尾は太くて長く房状。口が突き出て、耳は三角形で大きく先がとがる。毛色はふつう橙褐色だが、赤、黒、銀、十字の四色相がある。夜行性で、ネズミやウサギなどの小動物を捕食し、巣穴は自分でも掘るがアナグマの巣などを利用することもある。古くから狐火や狐つきなど説話や迷信が多く、稲荷神の使いなど霊獣ともされ、また、ずる賢い性質で、人をだますなどともいわれる。皮は毛が厚く美しいので、えり巻きや敷物などにする。ヨーロッパ、アジア、北アメリカに分布し、日本では各地の低山や草原に単独または一対ですむ。あかぎつね。きつ。とうめ。きつに。おこんさん。《 季語・冬 》
    1. [初出の実例]「上扈反、倭言岐都禰(キツネ)」(出典:新訳華厳経音義私記(794))
    2. 「もとより荒れたりし宮のうち、いとどきつねのすみかになりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)蓬生)
  3. 狐が悪賢く、人をだましたり、人にとりついてまどわすといわれるところから、それにたとえていう。
    1. (イ) うそつき。また、悪賢い人。ずるい人。
      1. [初出の実例]「げにいづれかきつねなるらんな、ただはかられ給へかし」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
    2. (ロ) 口先上手に人にとりいる者。こびへつらう人。〔俚言集覧(1797頃)〕
    3. (ハ) ( 化粧をして男をたぶらかすというところから ) 芸妓、娼妓、遊女、女郎をののしっていう。
      1. [初出の実例]「江戸よし原のわか狐に、まよはぬ人あるへからず」(出典:評判記・そぞろ物語(1641))
    4. (ニ) ( したたかでずるく、遊客にこびへつらうというところから ) 「たいこもち(太鼓持)」の異称。
      1. [初出の実例]「狐(キツネ)の甚六が夜道をつれまして」(出典:浮世草子・嵐無常物語(1688)上)
  4. 狐に似た顔つき。また、その人。目がつりあがり、口のとがった顔をいう。
  5. きつねつき(狐憑)」の略。
    1. [初出の実例]「麦秋や狐ののかぬ小百姓〈蕪村〉」(出典:俳諧・新花摘(1784))
  6. 狂言に用いる面の一つ。狐の顔にこしらえたもので、「釣狐」に使用し、その面の下に白蔵主(はくぞうす)の面をつけられるようにしてある。〔わらんべ草(1660)〕
    1. 狐<b>⑤</b>〈奈良県奈良豆比古神社〉
      〈奈良県奈良豆比古神社〉
  7. きつねいろ(狐色)」の略。
  8. きつねまい(狐舞)」の略。〔洒落本・青楼松之裡(1802)〕
  9. きつねけん(狐拳)」の略。
    1. [初出の実例]「『サア一つけんいこう』〈略〉『きつねでいこう』」(出典:洒落本・青楼五雁金(1788)一)
  10. ( 油揚げは狐の好物といわれるところから ) 「あぶらあげ(油揚)」の異称。
  11. きつねうどん(狐饂飩)」「きつねそば(狐蕎麦)」の略。〔商業符牒袖宝(1884)〕
  12. チガヤの穂が伸びて絮(わた)となったもの。つばな。
    1. [初出の実例]「狐の多き芝原の中〈松安〉 たくる迄ぬかぬつばなのほいなしや〈春可〉」(出典:俳諧・懐子(1660)一〇)
  13. ( 狐を神使とするところから ) 稲荷明神の戯称。
    1. [初出の実例]「狐から上り天狗で日をくらし」(出典:雑俳・柳多留拾遺(1801)巻一一)

きつ【狐】

  1. 〘 名詞 〙
  2. きつね(狐)」の異名
    1. [初出の実例]「神垣にともす火みえていなり山きつなく杉の陰ぞ暮行く〈藤原実隆〉」(出典:水無瀬法楽百首(1495))
  3. 狐つき。
    1. [初出の実例]「どふでもきつにきはまった。あらだててばかされな」(出典:浄瑠璃・大内裏大友真鳥(1725)四)

狐の補助注記

万葉‐三八二四」の「鐺子(さしなべ)に湯沸かせ子ども櫟津(いちひつ)檜橋より来む狐(きつね)に浴むさむ」の「狐」を「きつ」と訓(よ)む説もあるが、疑わしい。


きつに【狐】

  1. 〘 名詞 〙 「きつね(狐)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「猿(まし)と兎(をさぎ)と きつにとが 友を結びて」(出典:良寛歌(1835頃))

くつね【狐】

  1. 〘 名詞 〙 「きつね(狐)」の変化した語。〔観智院本名義抄(1241)〕
    1. [初出の実例]「くつねの皮の、ちぢの黄金にあたらざらめや」(出典:俳諧・鶉衣(1727‐79)前)

けつね【狐】

  1. 〘 名詞 〙(きつね)を上方でいう語。〔かた言(1650)〕

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デジタル大辞泉プラス 「狐」の解説

1939年公開の日本映画。監督:渋谷実脚本池田忠雄、撮影:生方敏夫。出演:水戸光子、日守新一、斎藤達雄、岡村文子ほか。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「狐」の解説

狐 (キツネ)

学名:Vulpes vulpes
動物。イヌ科の哺乳動物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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