(読み)カン

デジタル大辞泉 「甘」の意味・読み・例文・類語

かん【甘】[漢字項目]

常用漢字] [音]カン(呉)(漢) [訓]あまい あまえる あまやかす うまい あまんずる
カン
味があまい。「甘味
おいしい。うまい。「甘美甘露
満足する。気に入る。「甘言甘受甘心
〈あま〉「甘辛甘酒甘茶大甘
[名のり]かい・よし
[難読]甘藷さつまいも

うま【甘/味】

形容詞「うまし」の語幹名詞に付いて複合語を作る。
味がよい、うまい意を表す。「―酒」「―いい
貴い意を表す。「―人」
眠りの度合いの深い意を表す。「―

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「甘」の意味・読み・例文・類語

あま・い【甘】

〘形口〙 あま・し 〘形ク〙
[一] 味覚に関していう。⇔辛(から)い
① 砂糖や蜜など糖分の味がある。
※書紀(720)景行四〇年(北野本訓)「甘(アマク)味はひを食(みをしし)たまはじ」
② 塩気が薄い。辛くない。
※人麿集(11C前か)下「流れあふ湊の水のうまければかたへもしほはあまきなりけり」
[二] 心理的に砂糖や蜜の味のように感じられるさま。
① (ことばに関していう) 人が聞いて気持がよくて、ついうかうかと欺されそうである。
※将門記(940頃か)「貞盛、人口の甘(あまき)に依り、本意に非ずと雖も暗に同類と為って」
※土(1910)〈長塚節〉二「勧誘に来て大分甘い噺をされた」
愛情がこまやかである。男女の間の愛情についていうことが多い。
※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)五「ふかき御あいれん、すぐれてあまくましますびるぜんまりやかな」
③ (音楽や香りやその他いろいろの物事に関していう) うっとりと快い
※涅槃経集解巻十一平安初期点(850頃)「無我は苦き味なり。楽をば恬(アマキ)味と為す」
邪宗門(1909)〈北原白秋〉魔睡・室内庭園「甘く、またちらぼひぬ、ヘリオトロオブ」
[三] 心理的に、塩気のきいていないような感じというところから、きびしさ、鋭さ、強さなどに乏しいさま。
① なまぬるい。手ぬるい。また、愛情におぼれて厳格でない。
※土井本周易抄(1477)六「同宿にはちっと甘まう当るがよいぞ」
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「あまいははおやのしをくり」
※他人の顔(1964)〈安部公房〉灰色のノート「甘い期待をかけたりしているわけではない」
② しっかりしていない。きっちりしていない。しまりがない。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)二「筋と肉とは、筋はつよいぞ。肉はをとったぞ。あまい方ぞ。うすふくれたやうなことぞ」
※青い月曜日(1965‐67)〈開高健〉二「この家は鍵が甘いぞ」
切れ味が悪い。
※落語・道具の開業(1891)〈三代目三遊亭円遊〉「この鋸はよっぽどあまいナア」
あま‐が・る
〘自ラ五(四)〙
あま‐げ
〘形動〙
あま‐さ
〘名〙
あま‐み
〘名〙

あま・える【甘】

〘自ア下一(ヤ下一)〙 あま・ゆ 〘自ヤ下二〙 (「甘(あま)」を活用させたもので、「甘い」状態である、また、そのような状態になるのをいう)
① 甘味がある。甘いかおりがする。
源氏(1001‐14頃)常夏「いとあまえたるたきものの香を、かへすがへすたきしめ居給へり」
② 相手の理解ないし好意を予想したうえで、なれ親しんだ行為をする。
(イ) 親しんで、なれなれしくふるまう。なれ親しんで甘ったれる。現代では多く、下の者が上の者に対してふるまう場合にいう。
※源氏(1001‐14頃)末摘花「各契れる方にもあまえて、えゆきわかれ給はず」
草枕(1906)〈夏目漱石〉九「『何か御褒美を頂戴』と女は急に甘へる様に言った」
(ロ) 遠慮しないで、相手の理解や好意によりかかる。
※重刊改修捷解新語(1781)一「御こんいにあまゑまして」
(ハ) 親しんで得意になる。いい気になる。
※源氏(1001‐14頃)賢木「かくのごと罪侍りとも、おぼし捨つまじきを頼みにて、あまえて侍るなるべし」
③ 恥ずかしく思う。きまり悪く思う。はにかむ。てれる。
※源氏(1001‐14頃)竹河「『今宵は、なほ、うぐひすにも誘はれ給へ』とのたまひ出だしたれば、あまへて爪くふべき事にもあらぬをと思ひて」

あまん‐・ずる【甘】

[1] 〘他サ変〙 あまん・ず 〘他サ変〙 (「あまみする」の変化した語)
① 与えられたものを、満足して、また、しかたがないものとして受ける。
※守護国界主陀羅尼経平安中期点(1000頃)「我れ此の苦を甘(アマムシ)て、終に菩提の心を捨てじ」
※俳諧・奥の細道(1693‐94頃)跋「一たびは坐して、まのあたり奇景をあまんず」
② (「味わいを甘んずる」の形で) 食物をよく味わい、おいしく思う。
※文明本節用集(室町中)「食スルトキハ不(アジワイヲアマンゼズ)〔漢書〕」
[2] 〘自サ変〙 あまん・ず 〘自サ変〙 与えられた状態に満足する。また、しかたがないものとして我慢する。安んずる。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一〇「甘じて下流の人となる」
※露団々(1889)〈幸田露伴〉一〇「白湯(さゆ)に甘(アマ)んじ」

あまえ【甘】

〘名〙 (動詞「あまえる(甘)」の連用形の名詞化) 甘えること。気ままなこと。現代では、多く、下の者が上の者になれ親しんでよりかかることをいう。
※光と風と夢(1942)〈中島敦〉七「父に対する甘えが」

あまん・じる【甘】

〘自ザ上一〙 (サ変動詞「あまんずる(甘)」の上一段化した語) =あまんずる(甘)
※日本文化私観(1942)〈坂口安吾〉二「貧困に甘んじる」

あま【甘】

〘語素〙 名詞や形容詞の上に付けて「甘い」の意を表わす。「あまかす」「あまざけ」「あまぐり」「あまずっぱい」など。

あま・ゆ【甘】

〘自ヤ下二〙 ⇒あまえる(甘)

あま・し【甘】

〘形ク〙 ⇒あまい(甘)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【甘粛[省]】より

…中国西北部の省。略称は〈甘〉または〈隴(ろう)〉。西は新疆ウイグル自治区,南西から南は青海,四川,東は陝西の諸省,北は内モンゴル自治区と寧夏回族自治区に隣接し,面積約45万4000km2。…

※「甘」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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