〘形口〙 あま・し 〘形ク〙
① 砂糖や蜜など糖分の味がある。
※書紀(720)景行四〇年(北野本訓)「甘(アマク)味はひを食(みをしし)たまはじ」
② 塩気が薄い。辛くない。
※人麿集(11C前か)下「流れあふ湊の水のうまければかたへもしほはあまきなりけり」
[二] 心理的に砂糖や蜜の味のように感じられるさま。
① (ことばに関していう) 人が聞いて気持がよくて、ついうかうかと欺されそうである。
※将門記(940頃か)「貞盛、人口の甘(あまき)に依り、本意に非ずと雖も暗に同類と為って」
※土(1910)〈
長塚節〉二「
勧誘に来て大分甘い噺をされた」
②
愛情がこまやかである。男女の間の愛情についていうことが多い。
※どちりなきりしたん(一六〇〇年版)(1600)五「ふかき御あいれん、すぐれてあまくましますびるぜんまりやかな」
③ (音楽や香りやその他いろいろの物事に関していう) うっとりと
快い。
※涅槃経集解巻十一平安初期点(850頃)「無我は苦き味なり。楽をば恬(アマキ)味と為す」
※
邪宗門(1909)〈
北原白秋〉魔睡・室内庭園「甘く、またちらぼひぬ、ヘリオトロオブ」
[三] 心理的に、塩気のきいていないような感じというところから、きびしさ、鋭さ、強さなどに乏しいさま。
① なまぬるい。手ぬるい。また、愛情におぼれて厳格でない。
※土井本周易抄(1477)六「同宿にはちっと甘まう当るがよいぞ」
※他人の顔(1964)〈
安部公房〉灰色のノート「甘い期待をかけたりしているわけではない」
② しっかりしていない。きっちりしていない。しまりがない。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)二「筋と肉とは、筋はつよいぞ。肉はをとったぞ。あまい方ぞ。うすふくれたやうなことぞ」
※青い月曜日(1965‐67)〈
開高健〉二「この家は鍵が甘いぞ」
※落語・道具の
開業(1891)〈三代目三遊亭円遊〉「この鋸はよっぽどあまいナア」
あま‐が・る
〘自ラ五(四)〙
あま‐げ
〘形動〙
あま‐さ
〘名〙
あま‐み
〘名〙